ドライブマイカー
舞台役者でプロデューサーの家福悠介は妻の家福音と仲睦まじく暮らしていた、音の制作するテレビドラマの脚本をベットの中や移動中の車の中で2人で考えていたが、その内容は女子高生が思いを寄せる男子の部屋に何度も忍び込むと言う物だった。
愛車の古びたサーブ900ターボでの移動中、妻がカセットテープ吹きこんだ台本に合わせ、セリフを言うのが悠介の役作り方法で、悠介の舞台は多言語が入り混じる独特なものだった。
ある舞台の後、音から若いテレビの俳優の高槻を紹介される。
海外の演劇祭に出席する為成田空港に向うが、悪天候でフライトが翌日になってしまい家に帰る、そこで音が高槻と浮気している現場を目撃してしまう。
その夜成田空港のホテル泊まった悠介と笑顔でビデオ通話する音。
交通事故に合い、精密検査を受ける事になった悠介、怪我はほぼ無かったが緑内障の初期症状が有る事が発覚し、症状が進めば運転が出来無くなると言われる。
幼くして亡くしてしまった娘の法事の後、本当はもう一人子供が欲しかった?と聞く音。
ある日帰宅すると、音が倒れていてくも膜下出血で他界してしまう。
音の葬式には浮気相手の若い俳優も出席していた。
妻の死後も舞台つづける悠介は、海外団体主催の演劇祭の舞台をプロデュースする為広島に訪れる。
毎日宿から自分の車を自分で1時間ほど運転し、舞台の監修を行うつもりだったが、主催者より過去に事故が有った為プロデューサーが自ら運転するのは禁止であると言われ、ドライバーを用意されてしまう。
仕方無くその若い女性ドライバーみさきに運転を委ねる悠介。水商売の母を送り迎えする為、北海道の田舎を中学生の時から運転していたと言うみさきの運転はかなり上手く、加減速を感じさせない程だった。
舞台の役者オーディションに高槻が参加していて、悠介は高槻を主人公に抜擢する。キャストが決まり台本の読み合わせが進む中、悠介は高槻に飲みに誘われる。舞台の話しから音に憧れていた事を認める高槻。舞台の準備が進み、再度高槻と飲みに行った後の移動中の車の中で、悠介は高槻に音が毎回仕事関係の役者と関係を持っていた事を話す。
そして高槻は、悠介も知らなかった女子高生が男子の部屋に何度も忍び込む台本の結末を語る。
舞台もついに劇場での演技練習に入った時、警察が現れ高槻が暴行した男が病院で死んだと言い、高槻を逮捕してしまう。
演劇の主催者からは、選択肢は2つ中止するか悠介が主人公を演じるかと迫られる、同じ舞台をそれまでは自身で演じていた悠介だったが、今では役に自分を差し出す事が出来ないと考えていた。
結論を出すまでの時間は2日間、悠介はみさきのふるさとへ連れて行ってくれと頼む。
急遽広島から北海道まで旅をする事にした悠介とみさき、土砂崩れで家が倒壊し母親が死んだとき、自分は母親を助けなかった事を告白する。
悠介も音が死んだ日、出がけに話が有ると言われた事が気になり、あえて家に帰る時間を遅らせた性で音の発見が遅れた事を言う。
倒壊したみさきの家に着いた2人、花を手向けながら母は2重人格でもう一人の人格とは仲が良かった事を話すみさき、倒壊した家の中の母親を助けない事は、好きな人格も殺す事だと分かっていたと言う。
そして、音さんの事はありのままを受け入れるべきだと言うみさき。
その言葉に悠介は、自分でもも気が付いて無かった自分の音への想いを話し始める。
抱擁し合う2人、悠介は自分達のした事を抱えながら生きるしかないと言う。
ワーニャ叔父さんの舞台に立つ悠介、客席にはみさきの姿も、舞台の最後のセリフは
「仕方ないの、生きていくほかないの、長い長い日々と、長い夜を生き抜きましょう、そして最後の時が来たら死に、あの世で神様に辛かったと言おう、そしたら神様は慰めてくれるでしょう」
韓国の地に居るみさき、スーパーで買い物したのち、韓国のナンバープレートを付けたサーブ900ターボに乗り、車を発進させる。
タイトルからロードムービーを想像しますが、旅するシーンは有るものの、ロードムービーとは少し違うと思います。
理想的な夫婦に見える2人だが音は浮気をしていて、それが発覚した後も2人は非常にに仲が良く毎度イチャイチしている。そこで異様に気持ち悪くなって一回再生を止めてしまいました。
結婚したのが本当に貴方で良かったと言う音、もしかしたら本当に悠介を愛していて、浮気を見られた事も分かっていて、それも音には必要な事だったのかも知れないと思う位だが、本当の音の気持ちがどうなのかわからないまま突然死してしまう。
そして浮気現場を見た後、煙草を吸うシーンが有るだけで悠介の内心も語られない。本編が始まるのはその後からで、そこまでで40分かかります。
後半に入ってから、悠介の口から音は日常的に浮気をしていた事や、それでも疑いようが無いほど2人は愛し合っていたと語られるまで、悠介の想いは表面に出ません。
村上春樹の小説が原作なのですが、女性の書かれ方が思いっきり春樹流です。
舞台の脚本や、音のドラマ脚本が、ストーリーにも微妙にリンクをしていて、トータルでは良く出来た映画だと思います。
凄く面白かったですが、好きな映画とは一寸違うと言う感想です、カンヌで賞を取ったのがうなずける、芸術的な作品だと思います。