戦争と平和 第3巻・第2部(32)ピエール、戦争の悲惨さを目のあたりにする。 | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

ピエールは、恐ろしさの余り夢中で跳ね起き、周囲の全ての恐怖からの避難所がそこしか無いように砲兵陣地へ駆け戻って行きました。

壕円に入った時、ピエールは陣地に砲声が聞こえないで、数人の人々がそこで何かしているのを見ました、ピエールは、その人々が何者かを見分ける事が出来ませんでした。

彼は、こちらに背を向けて土塁に腹ばいになり、下の方を偵察する様な格好をしている古参士官をみました、そしてその時見覚えのある1人の兵士が、抑えている人の手を振り切ってこちらへ来ようと暴れながら「戦友❗️」と叫んでいるのと、さらに何か奇妙な光景を彼は見ました。

 

しかし彼はまだ、大佐が戦死した事と、「戦友」と叫んだのが捕虜である事と、目の前のもう1人の兵士が銃剣で背を突き刺された事を判ずる事が出来ませんでした。

彼が壕内に駆け込んだ途端に、青い軍服の痩せた汗まみれの黄色い顔をした男が、軍刀を振り上げて、何やらわめきながら彼に躍りかかって来ました。

ピエールは本能的に衝突をかわすと、両手を突き出して、その男の肩と喉元を掴みました(それはフランスの士官でした)。

士官も、軍刀を離して、ピエールの襟首を掴みました。

 

数秒の間、2人は互いに相手の見知らぬ顔に怯えた目を見張っていました、そして2人共、自分達が何をしでかしたのか、これからどうしたら良いのかわかりませんでした。

『俺が相手を捕らえたのか、相手が俺を捕らえたのか❓』と、どちらもこう思いました。

しかし、どうやらフランスの士官の方が捕らえられたと言う考えに傾いた様でした、本能的な恐怖に動かされたピエールの強い手がますます固く相手の喉を締め付けたからでした。

フランスの士官が何か言おうとした途端に、彼らのすぐ頭の上を恐ろしい唸りを立てて砲弾がかすめました。

ピエールは咄嗟に、フランス士官の頭が吹っ飛んだと思いました、それほど素早く士官は頭を伏せたのでした。

ピエールも首をすくめて、両手を離しました。

 

それ切りどちらがどちらを捕らえたなどと言う考えは消し飛んでしまって、フランス士官は砲台へすっ飛んで行き、ピエールは丘を駆け下りて行きました。

ピエールは絶えず戦死者や負傷兵につまずき、その度に足を掴まれそうな気がしました。

しかし、彼がまだ丘を降り切らぬうちに、前方からロシアの兵士達の一群が駆け上って来ました。

彼らはびっしり固まり合って、つまずいて転んだり、喚声を上げながら、元気に、暴風の様に砲台へ突進して行きました(これがエルモーロフが自分の功にしたあの有名な突撃でした)。

砲台を占領したフランス軍は、ひとたまりも無く敗走しました。

我が部隊は「ウラー」を絶叫しながら砲台を越えてどこまでもフランス軍を追走し、停止させるのが困難なほどでした。

 

砲台から捕虜が引き立てられて来ました。

その中には負傷したフランスぼ将軍がおり、士官達がその周りを取り巻きました。

ピエールの知った顔や知らない顔、ロシア兵やフランス兵の負傷兵達の群れが、苦痛に顔を歪めて、砲台から歩いたり、這ったり、担架で運ばれたりして降りて来ました。

ピエールはさっきまで1時間以上も居た陣地内へ入ってみました。

彼を仲間として受け入れてくれた、あの家族的な部隊の人達を、彼は1人も見出す事が出来ませんでした。

そこには、彼が見知らぬ戦死者達が大勢転がっていました。

しかし、その何人かに、彼は見覚えのある顔を見ました、若い子供染みた士官は、やはり身体を丸めて、土塁の端の血だまりの中に突っ伏していました。

赤鼻の兵士はまだヒクヒクしていましたが、そのまま放置されました。

ピエールは丘を駆け下りて行きました。

『いや、これでもう彼らはこんな事はやめるだろう。。今こそ、自分らがしでかした事が、恐ろしくなるだろう❗️』戦場を離れていく担架の群れを当てもなく追いながら、ピエールは思うのでした。

しかし、硝煙に影らされた太陽は、ますます高く昇り、前方に、特にセミョーノフスコエ村の辺りで、硝煙の中で何かが煮えたぎり、銃声や、一斉射撃や砲撃の轟が、弱まるどころか、死に瀕した人間の断末魔の叫びの様に、狂的なまでに強まるでした。

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(解説)

目の前に砲弾が落ちて、九死に一生を得たピエールは、恐ろしくなり、とにかく砲兵陣地へ駆け戻って行きました。

壕円に入った時、ピエールは真っ暗で何も見分けがつきませんでした、しかし、そこは異様な空気に包まれていました。

おそらく、この文章から察するに、この砲兵陣地はフランス軍に占領されたのだと思います。

で、古参士官も、顔見知りで「戦友❗️」とピエールに叫びかけた兵士も、おそらくフランス軍によって捕虜にされたロシア人ですね。。

ピエールは、事態をよく呑み込めていません。。

そこへ、急にフランスの青い軍服を着た士官がピエールに向かって軍刀を振り上げて来たのですね。

ピエールは本能的にその攻撃をかわし、逆に男の肩と喉元を掴みました(それはフランスの士官でした)。

 

フランス士官は、急に飛び込んで来た燕尾服にシルクハットの奇妙は男にちょっと驚いたのですね(笑)。

まー、この男はロシア人だろうけれど、『なんで❓❓こんな格好の男が❓』と、フランス士官は不安感すら漂わせています。

しかし、鈍重と思われていたピエールは凄いんですね〜(笑)。

反射神経抜群ですし、力もあります、おまけに度胸が座ってて半端ないんですよねー。

ちょっと笑えるシーンだと思います。

結果は。。『ピエールの勝ち』ですねー♪

この人、軍人に向いているんだ❗️と、読者に意外なピエールの一面を見せている場面ですね。(ピエールは自分が軍人になる事はあり得んと思っていますけれど)

 

で、ピエールはさらに丘を駆け下りて行きます、たくさんの戦死者や負傷者につまずきそうになりながら。。

ピエールは、前方から駆け上がって来た元気なロシアの兵士達の一群に遭遇します。

この一群は、砲台を占領したフランス軍をひとたまりもなく撃退します。(これは歴史的に有名な一群らしい。。)

 

ピエールはさっきまで1時間以上も居た陣地内へ入ってみました。

そこには、彼が見知らぬ戦死者・負傷者達が大勢転がっていました。

その中には、あの若い子供染みた士官も居たし、自分を家族の様に慕ってくれた赤鼻の兵士も居ました。

彼らは、もうどうしようもなく野ざらしにされていたのでした。。

『いや、これでもう彼らはこんな事はやめるだろう。。今こそ、自分らがしでかした事が、恐ろしくなるだろう❗️』戦場を離れていく担架の群れを当てもなく追いながら、ピエールは思うのでした。

 

はい。トルストイ先生のピエールの目を通した『戦争の理不尽さ』を描いた場所ですね。

ピエールは、最初、兵士達の中にあった『愛国心の情熱』に感動しますが、戦争の破壊行為、人間をまるでボロ切れの様に破壊してその辺に放置してしまう、そうせざるを得なくしてしまう。。その矛盾に疑問を呈しています。

この疑問は、あのモスクワの広場で恐らくフランス人というだけの理由で捉えられ、公衆の面前で裸にされ鞭打ちの刑を執行されているのを見物しているロシア人達の『愛国心』への疑問に繋がると思います。