東独時代のマイセンには、5人の優れたマイスター(人間国宝的地位の作家)が居ました。
何時も時代を先取りする器形を編み出す成形家のフェブナーさんを筆頭に、人間や鳥獣の像その他の飾り物に堪能な彫刻家のシュトラングさん、それに溢れるような柔らかく豊かな絵付けをするヴェルナーさん、近代絵付けに巧みなシュトッレさん、伝統的な絵付けを現代に生かすブレットシュナイダーさんの3人の画家たちでした。
このマイスター達は、国費によって新しい芸術創造の為に一緒に旅をしたり、自由な雰囲気の中でお互いに話し合って最高の芸術を編み出して行ったようです。
およそ、社会主義国家から受ける例えば「表現の自由を求めての亡命」などのようなイメージとは程遠く、国家は、このマイスター達の思考や作品に対して制約をすること無く、自由に放任(ある程度の大まかな制約・例えば反体制的な作品は禁止など有ったとは思われるが、そうで無い限り)し、尊重していた様子が、三上次男先生の記事から読み取れます。
いくつかの作品を見てみましょう。
(1973年 モーリッツブルクと狩猟図のある燭台)
成型:ペーター・シュトラング 装飾:ハインツ・ヴェルナー、ルディ・シュトッレ
下2つの作品の「狩猟図」の全体像を表現した大きな燭台と思います。
実際の狩の様子が如実に表現されています。
造型も絵付けも、アンティークの作品とはまた味の違った躍動感がみなぎっています。
アンティーク・アーカイヴさんの解説によると、この緑色は非常に手間のかかる発色だそうで、現在では採用されていないようです。
したがって、「狩猟図シリーズ」は現在のマイセンでは作成されていないのです。
それ故、この東独時代の「狩猟もの」は、マイセン愛好家にとっては「幻の」陶磁器となっているようです。
(1973年 狩猟文コーヒー・セット)
成型:ルードヴィッヒ・ツェブナー 装飾:ハインツ・ヴェルナー
山の中の狩猟の様子のようですね。
(東独時代 水鳥の狩猟)
手持ちの作品です。装飾はハインツ・ヴェルナーさんですね。
これはアンティーク・アーカイヴさんから譲っていただきました。
水鳥が飛んでいるものも勧められましたが、さすがに図々しいと思いましたので(所詮、私は素人です。)ご辞退して、この文様のものを購入させていただいました。
2個上の燭台の方の鴨は飛んでいますが、これは水草に留まっている図ですね。
やはりモーリッツブルクの池の狩猟をイメージしたものでしょうか。。
(1973ー77年 蘭花文コーヒーセット)
成型:ルードヴィッヒ・ツェブナー 装飾:ハインツ・ヴェルナー
ヴェルナーさんは、蘭のお花がお好きだったようです。
染付けの作品ですが、ブルーの顔料の濃淡だけで、伸びやかに蘭の鼻緒表情が描かれています。
成型も、とてもユニークで可愛らしく、「飾る食器」としても「使う食器」としても効果的なマイセンだと思います。
お料理のプロの方がおっしゃっておられましたが、マイセンのコーヒーカップはとても飲み易いそうです。
(1973−75年 空飛ぶ絨毯)
成型:ペーター・シュトラング 装飾:ヴィルリ・ゴーダ、ヨハネス・フォーレルト
スピード感を感じますね。この形は。
陶磁器と言う名の彫刻のようです。
まさにアウグスト大王が望んでいた「磁器の動物園」と同じ発想だと思います。
陶磁器に「動き」を与えたのはそもそも18世紀のマイセンの造形師・ケンドラーですね。
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今日はここまでです。
いつも読んで頂きまして誠に有難うございます💞