マイセン(23) (ちょっと休憩)マイセン:ティーボール&ソーサー「旅路風景図」1735年頃。 | 気ままな日常を綴っています。

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我が家に在る一番古いマイセンの作品です。

ヘロルト時代の作品ですね。

まだ、「絵付け」がマイセンの芸術性を牽引していた時代の作品です。

今日は、この作品について少し考察したいと思います。

 

 

 

(人物の衣類の表情までもが読み取れますね。かなり小さな絵付けです。薔薇の花の渦巻きもきちんと描かれています。ただ、窓枠の金彩の荒さも目立ちます。)

 

(後ろから見た朝顔の表情でしょうかね。。。❓)

 

(スズラン系のお花。)

 

(昆虫も「動き」が感じられますね。)

 

 

(大きめの蛾のような昆虫の下に小さな羽のある昆虫は、今初めて気づきました。)

 

 

(窓枠の金彩は「黒」入れない方が良かったんじゃ無いかな。。)

 

(ティーボールの中にこの絵付けは、かなり難しいでしょうね。)

 

 

初期マイセン、特にヘロルト時代のハンドルの付いていないティーボール&ソーサーは、ハンドルの付いたカップ&ソーサーよりも価値が高いとされている様です。

ハンドルの付いていないティーボールは、東洋磁器の影響であると思われています。

ヘロルト時代の絵付けの技術・芸術性は優れており、又、ティーボールは珍しく希少性という点からも、価値が高いと言われていると思われます。

 

個人的には、まず目に付くのは、窓枠の金彩の稚拙さ❓ですね。。

同年代の他の作品の金彩を載せて置きます。

初期の金彩は、明らかにフリーハンドであることがわかる様な線や曲線だったり、黒の絵の具で所々輪郭が縁取られている感じは確かにしますね。

ただ、この作品の窓枠の金彩は、作品が小さい事もあってか、描きにくかったのか、多少の荒っぽさを感じずにはいられないですね。

ソーサーやティーボールの周囲の金彩はとても綿密です。

窓枠の金彩は、金彩として中の絵付けを浮き立たせる事が出来なかったのか。所々黒い線で「強調」されている感じが否めません。

ティーボールやソーサーの淵の金も剥げ落ちていることから考えても、金彩の焼成自体にやや問題があるような感じがしないでもありません。

当時のマイセン磁器は、「使われていた」という話もありますので、金彩の擦れは、使用時のものかもしれません。

ひょっとしたら、金彩の問題故に、商品としては成立しなかった「練習用」の可能性も無きにしもあらず、という感じはします。

とはいえ、この時代の真正のマイセンの作品で絵付けの緻密さや希少性から言ったら、価値ある作品と言えると思います。

写真を撮影していて、絵付けは本当に見事だと思いました。

 

この作品は、意匠から見ると、恐らくヘロルトは1731年に35歳で絵筆を取らなくなった後の、東洋的なシノワズリー様式からヨーロッパ的なデザインに移って行った頃の作品と思われます。

絵付けは、とても小さなティーボールとソーサーに綿密に細い筆で丁寧に描き上げられていると思います。

絵付けの芸術性や技術性は「流石にヘロルト時代のマイセン❣️」と思わせる風格が有ります。

 

恐らく、絵付け師は、ルーペなどを使って絵付けをしていたものと思われ、陶磁器の絵付け師にはかなりの視力が求められていた、と推定されます。

ヘロルトは、35歳で絵筆を置いてしまいましたが、長年の絵付け作業により、視力を落としてしまった事も原因だったのではないか、と個人的には推定しております。

 

最後に、この作品を譲って下さったディーラーさんの、この作品についての説明文を載せて置きます。

「初期マイセンのティーボウル&ソーサーは、コレクターには垂涎のアイテムでしょう。
特にヘロルト時代の高品質の作品は、アンティーク市場でも資産的価値が囁かれる程 その価値が認められています。

本作はその中でも人気の高い「旅路の風景」や「港湾風景」」等と呼ばれる図柄で、オランダやイタリアの想像上の風景を描いたものです。寒いドイツから異国の暖かい港町へ旅することは、18世紀王侯貴族の憧れであり、マイセンの器に描かれたこれらの風景にエキゾチズム(異国情緒)を掻き立てられたのでしょう。もちろん、港の遥か向こうには、遠い東洋の国をに対する強い憧れがありました。

本作の絵付けを是非ご鑑賞下さい。ソーサーには馬に乗った二人の貴族が、水辺の村を訪れています。赤い服の人物の辮髪がご覧いただけるでしょうか?馬の肌にぼかしや遠景の筆使いも見事です。
こうしてみると、絵付けに一連のストーリーが存在することが分かります。

渋い彩色や繊細にして大胆な絵付けは、この時代にしか出来えない18世紀特有のものです。磁器を焼き物と感じさせる素地と相まって、古マイセンのもつ力を強く感じさせる逸品といえるでしょう。

コンディションは修復・ダメージの無いとてもよいものです。金彩のスレやハガレは見られるものの、この種の古マイセンとしては良い状態といえます。」

 

(同年代の金彩例)

(マイセン 色絵狩猟文双耳付蓋付壺 1735−40)

ドレスデン国立美術館蔵ですから、本作品よりも綿密な金彩が施されているのは納得ですね。

絵付けの水準も本当に素晴らしいです。

造形はケンドラーですね。

 

(マイセン 色絵紋章文受皿付双耳杯 1728年頃)

ヘロルト時代の金彩です。

これもドレスデン国立美術館蔵です。

金彩は上のドレスデン国立美術館蔵のものよりも単純化ですが、フリーハンドで正確に描かれていますし、焼成もしっかりなされています。

 

今日は以上です。

どうも有難うございました♪