登り窯とは、陶磁器を大量に焼成する為に炉内を各間に仕切り、斜面等地形を利用し重力による燃焼ガスの対流を利用して、炉内の各製品を焼成時に一定に高温に保てるように工夫された窯の形態です。
薪を炊き、その灰を自然の釉薬として溶け込ませながら磁器を焼く窯です。
従来の穴窯や大窯が単室だったのに対し、登り窯は複数の焼成室があります。
上から見た焼成室は、房の形をしていますので、連房式と呼ばれています。
日本では、16世紀末に朝鮮半島の陶工が佐賀県北部波多村に作ったのが始まりとされています。
江戸時代になると、かまぼこ状の焼成室を階段状に連ねて仕上がりのばらつきを防ぐと共に大量生産を可能にし、いっそう熱効率が改良された連房式登り窯が出現します。
連房式登り窯の内部は、いくつかの焼成室に分かれており、各焼成室はもっとも下が「大口」と呼ばれる焼成室(窯口)であり、傾斜に沿っていくつかの焼成室が続き、それらが繋がった細長い形態をしています。
最上部の部屋の先には煙道、そして煙突と続いています。
さらに、各焼成室には薪を投入するための「小口」と呼ばれる小さな穴が設けられています。
焼成室と焼成室の間にあり、炎の通る道を「狭間」と呼びます。
狭間は、次の部屋に移る構造により、縦・横・斜めの狭間に区別されますが、現在は斜めに駆け上がるタイプの「斜め狭間」が一般的です。
「1の間」の炎の熱は狭間穴 を通って「2の間」に流れ込みます。
2の間では1の間の熱を流用しているので、足りない分だけ薪を補充します。
各焼成室の炎と作品の様子は、色見穴で確認できます。
この様に登り窯は、前の部屋の熱を活かしながら焼成ができます。
そして足りない部屋に不足分だけの薪をくべる効率性の高い窯です。
その為単室の穴窯と比べて保温と温度管理ができ易いです。
さらに、各部屋の酸素状態(酸化・還元)も調整できます。
薪を使った原始的な登り窯で1350度まで温度を上げるのは至難の技です。
さらに、磁器を焼く為には、窯の中の酸素濃度が上がりすぎない様に保たなければなりません。(※釉薬の色合いが変わるから❓理由はあまりわかりません。)
焼成にかかる時間は、気温や湿度によっても異なり、およそ30ー60時間程で、温度管理は職人の勘によって行われ、かなりの熟練を要します。
(登り窯)
(佐賀県有田あたりの煙突と思われる。)
登り窯が均一に焼成温度を保てるといっても全ての磁器が製品として登場できるわけではなさそうです。
深川製磁のホームページでは「登り窯で焼成した作品は、登り窯でなければ出せない味わい深いものですが、通常の品質管理基準を適用すれば、販売できるのは1割にも満たないほどで、残念ながらすべてが商品としては不採用となってしまうことも。」と記載があります。
おそらく、黎明期のマイセンでも多くの芸術的な作品が「作品として成り立たず」ボツにされた事と推定されます。
下記に黎明期のマイセンの焼成を如実に現す陶磁器を一例挙げて置きます。
(焼成の成功の境目を現す一例:マイセン1735ー40頃)
さて、ソーサーの裏側には3方面に渡って花の絵が描かれています。
右側のお写真の「パンジー」と下の「キク科のお花」は、残念ながら、完全に発色していな
いようです。
多分、この色が落ちているように見える部分は焼成時の問題ではないかな・・?と想像して
おります。
当時の窯がどのような規模でどのような加熱だったか解りませんが、このように多方面に絵
付けがしてある場合、部分的に温度が少し高すぎて(もしくは酸素濃度の違いで)発色が抜けて
しまう事があったのではないか。。と思います。
ソーサーの裏側の双剣マークも発色があまりできていませんからね。。。
染付け後には双剣マークはくっきりしていたのでしょうが、上絵付け後の窯の温度のトラブ
ルで、双剣マークも薄くなってしまったのではないか。。と想像しています。
しかも、ソーサーの表と裏の顔料の発色は少し異なっている感じがします。
裏はティーボウルの色とほとんど一緒ですが、表は少し赤みが強い感じがします。
これは、ディーラーさんも指摘されておられていました。
まあ、絵の具自体の混合の問題かもしれませんが、私的には、窯の中の置き方とかにも依る
のではないかな。。とか想像しております。
だから、当初のマイセンでは、絵付けの中心部の発色がウマく行かなくて作品として挫折し
てしまう事もあったのではないか・・と思っています。
このレベルだったら、作品としては生き残るべき。。という判断がなされたのだと思います。
(窯の中の温度にバラツキがあったためか、カップとソーサーの色合いが少し異なっています。
(温度が高すぎたのか、ソーサーの双剣マークの色が飛んでいます。)
(下の2枚のソーサーの裏側の絵付けの色が温度が高すぎた為か部分的に抜けています。)
今日はここまでです。
お読み頂きまして誠に有難うございました♪♪