さて、繰り返しますが、磁器とは、高温で焼成されて吸水性が無く、叩いた時に金属音を発する陶磁器の一種です。
日本・ドイツでの磁器の概念は、胎土にケイ酸を多く含み施釉して高温で焼成し、ガラス化が進んだ焼き物の事を指します。
一般的には、陶磁器のうち素地が多孔性で透光性が無く吸水性が有るものを陶器、素地が緻密質で透光性があり吸水性が無いものを磁器と言います。
磁器には、焼成温度や原料の違いから硬質磁器(hard porcelain 1380−1500度焼成)と軟質磁器(soft porcelain 1200度前後焼成)に分けられます。
また、原料にカオリンを多量に含むのが硬質磁器、カオリンを全く含まない(あるいは極めて少ない)のが軟質磁器です。
ヨーロッパで、最初に愛でられたのが、この硬質磁器だった訳です。
軟質磁器には、カオリンのかわりに石灰、骨灰(リン酸カルシウム)が添加されます。
種別 | 焼成 | 釉薬 | 特徴 |
---|---|---|---|
土器 | 低火度(1000℃以下) | 無釉 | 軟質、土色、吸水性大 |
陶器 | 低中火度(1200℃以上) | 施釉 | 軟硬質、灰白色、吸水性あり |
炻器 | 高火度(1100 - 1250℃) | 無釉 | 硬質、灰色、吸水性小 |
磁器 | 高火度(1350℃以上) | 施釉 | 硬質、白色、吸水性無 |
硬質磁器には、佐賀県有田などで焼かれる肥前磁器(古伊万里)や九谷焼、ドイツのマイセン、中国の景徳鎮、デンマークのロイヤルコペンハーゲン、ハンガリーのヘレンド、フランスの19世紀以降のセーブル磁器等があります。
(硬質磁器:古伊万里1670−90)
(硬質磁器:古九谷焼)
(硬質磁器:古マイセン1730ー1735年頃)
(硬質磁器:ヘレンド 1960ー70)
(硬質磁器:ロイヤルコペンハーゲン 神戸異人館うろこの家にて。現在、おそらくデパートなどで稀に見かけたとしても、花絵はかなり地味なものだと思います。喫茶店などでロイコペのフローラダニカでコーヒーを出す所もあるでしょうが、おそらくこれだけの花絵のものは珍しいと思います。アンティーク物を探した方が華やかな絵付けを見つけやすいと思います。)
軟質磁器には、ボーンチャイナ、フランスの19世紀以前のセーブル磁器等があります。
ボーンチャイナは、カオリンが含まれた白色粘土が入手困難だった英国で発明されました。
カオリンの代わりに牛の骨灰を陶土に混ぜて製作したため、ボーンの名を冠します。
牛の骨灰にはリン酸カルシウムが多く含まれていて、それがカオリンの役目を担ったのです。
英国の食器の多くの銘柄’ウエッジウッド、ロイヤルドルトン、ミントン、ロイヤルウースター等)、現代物のノリタケカンパニーリミテドなどがボーンチャイナです。
(軟質磁器のボーンチャイナ:現代物のウエッジウッド)
(軟質磁器のボーンチャイナ:アンティークのウエッジウッド)
(軟質磁器のボーンチャイナ:現代物のミントン)
(軟質磁器のボーンチャイナ:現代物のノリタケ)
(1820年頃のセーブルの軟質磁器:この時代にはセーブルは硬質磁器に移行してしまっていましたが、恐らくこの作品は、1800年以前の素焼きの軟質磁器に綿密な絵付けをしたものと思われます。なぜなら、この緑色は以降のセーブルでは見られず、金彩も手書きで描かれているからです。更に磁器質は粗悪❓なザラザラ感があり、分厚いのです。そのようなザラついた磁器面にプリントで金彩を施すことは不可能ですから、軟質磁器時代のセーブルの金彩はすべて手描きで施されているようです。)
一般に、軟質磁器は、硬質磁器よりも焼成温度が低い為、高温下で褪色する顔料を使用することが出来、白磁器よりも多くの色彩を演出する事が可能です、
この為、手間をかけられた18世紀のセーブル磁器などは、美しい絵や微細な模様が刷り込まれ、ヘロルトを亡くしたマイセンの暗黒時代にはマイセンに取って代わって王侯貴族に持て囃されました。
今日は以上です。
セーブル磁器やマイセンについては、また機会がありましたら別個項目を作って記事を書きたいと思っております。
それでは今日も良い一日お過ごし下さいね❣️