源氏物語「蜻蛉」⑥ 義父の常陸の守、浮舟の真相を知る。そして薫、女一宮を垣間見る。 | 気ままな日常を綴っています。

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いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

母君の所に、ある日、常陸の守(浮舟の義父)がやって来て、娘のお産にも帰ってこない事に腹を立ててるのよ。

母君は、浮舟の事はあの婚約破棄の一件から後の長い間、何一つ守には知らせていなかったのよね。

母君はまた、薫の君が京へ娘を迎えて下さった後で「こんな名誉な身の上になりました」と、守に知らせるつもりで居たのよ。

それなのに、こんな事になってしまって今更隠しても仕方がないので、これまでの事情を泣く泣く打ち明けるのよ。

 

薫の大将のお手紙を取り出して見せると、守は田舎者らしく権門や貴人をむやみの有り難がる人なので、びっくり仰天して怖れ入るのよ。

「何という素晴らしい幸運を捨てて亡くなってしまわれた人だろう。自分も、薫の大将の家来として出仕しているが、お側近く呼ばれて使っていただく事も無い。それが若い息子達の事までおっしゃって下さったとは、何と頼もしい事では無いか」と喜ぶのよ。

母君は、まして亡き人が生きていてくれたなら。。と思って泣きむせぶのよ。

守も今になって泣くのね。

でも、もし女君が生きていらっしゃたら、却って守の子の事までお心にかけられる事は無かったかも知れないのね、

なぜなら、薫の君は、自分の過ちから女君を死なせてしまったと言う後悔から母親を慰めてやりたいと思ったからよ。

 

薫の君は49日の法要を、例の山の律師の寺でおさせになるのよ。

でも、心の中では本当はどうなっているのだろう。。もしかしたら生きているのでは無いか。。と思っているのね。

この御法事は、薫の君としては、せいぜいひっそりというおつもりだったのに、全てが立派だったので、それを見た常陸の守は、もし女君が生きていたら、自分などとは比べようもない御運勢の人だったと思うのよ。

今では、薫の君がこう言う愛人を持っておられたのだと、帝のお耳にも達してしまい、帝は、女二宮に御遠慮して宇治に隠しておかれたのを、気の毒に思し召されるのよ。

 

匂宮と薫の君のお心のうちは、いつまでも悲しみが薄らがないのよ。

匂宮は、恋の炎が燃え盛っていた最中に、突然相手に死なれてしまったので、実に耐え難くお辛くていらっしゃるけれど、元々浮気な御性分なので、次第に他の女との情事を試される事も多くなるのね。

一方、薫の君の方は、遺族達の面倒まで見ておやりになりながら、いくら嘆いても仕方のない人の事を、やはりお忘れになれないお気持ちでいらっしゃるのよ。

 

明石の中宮は、叔父宮の式部卿の宮服喪の間は、お里の六条の院に御滞在なのよ。

その間に、二の宮が式部卿の宮になられたのね。

弟の匂宮は、淋しく悲しい御気分のままに、姉君の一品の宮の御殿を慰めどころとしていらっしゃったのね。

とりわけ、薫の君がようようの事で、人目を忍んで逢っておいでになる小宰相の君という女房は、何をやっても人より優れていて、手紙を書いても話をしてもどこか他の女とは違う一種の趣が有るのよ。

匂宮も、前から大そう小宰相の君に心惹かれていらっしゃって、例によって二人の仲を壊そうと言い寄るのね。

でも、小宰相は、他の女房と違ってやすやすと宮になびく事は無いのよ。

それを見て薫の君は、小宰相をいくらか他の女とは違っていると、お思いのようなのね。

亡くなった人の事で、薫の君がこんな風にご傷心なのをよく知っている小宰相の君は、忍び見れなくなってお手紙を差し上げるのよ。

もの悲しい夕暮れの、しんみりとした気分になる頃合いを上手に察して言って寄こしたのも気が利いているとお思いになるのね。

「しんみりと悲しい折から、お手紙をひとしお嬉しく思いました」などと言って、薫の君は小宰相の君のお部屋に立ち寄るのよ。

薫の君は、亡くなった浮舟よりこちらの方の方が奥ゆかしさが備わっているな、とお感じになるのよ。

どうしてこんな風に宮仕えに出たのだろう。。自分の愛人として囲っておきたいなどとお思いになるけれども、そんな素振りはお顔にもお出しにならないのよ。

 

蓮の花の盛りの頃に、明石の中宮が、亡き源氏の君と紫の上の御為に法華八講を六条の院でお催しになったのよ。

女一宮もご参加なさって、その片付けの間、西の渡り廊下にいらっしゃったのよ。

女一宮のお側には、すっかり人少なになっていたのよ。

そんな夕暮れの事だったのよ。

薫の君は、今日退出する僧の中に用事があったので、僧たちの控え所になっている釣殿の方にお出でになったのよ。

ところが、僧たちはもう退出してしまっていたので、一人で池の所で涼んでいたのね。

 

そこへ衣ずれの音がするので、襖が細く開いている所からそっと覗いて御覧になるのよ。

そこはさっぱりと明るく片付けてあり、几帳など立て違えてある間から奥まですっかり見渡せるのよ。

 

そこでは、氷を何かの蓋に乗せて割ろうと騒いでいる所であり、まさかそこが女一宮の御前とは思いも寄らなかったのよ。

そこには、白い薄いお召し物を着ておいでになる姫宮が、手に氷をお持ちになったまま微笑んでらしたのね。。

そのお顔が言いようもなくお美しいのよ。。

薫の君は、これまで美しい女君をたくさん御覧になっていらっしゃるけれど、このお方に比べられるような人は居なかったと、お思いになるのね。

 

そこへ下働きの女房が、この襖を急ぎの用事で開け放したまま退ってしまったのを思い出して、誰かに見つけられて騒ぎになっては大変だと思い、慌てて閉めに来たのよ。

薫の君はとっさに立ち去って行くのよ。

「ようやく自分も道心を固めて出家者のような心境になっていたのに、大君の事で一度踏み誤ってからは、いろいろと恋の物思いに悩む羽目になってしまった。昔、さっさと出家していたら、今頃は深い山の中に住み着いてこんな風に心乱す事もなかったろうに。。」とお心が落ち着かないのよ。

「この女一宮びお目にかかったところで却って苦しいだけでどうにもならないのに。。」と、溜め息をつかれるのね。。

 

今日はここまでです。

いつも有難うございます♪

次回も「蜻蛉」⑦です。

 

今日も良い一日をお過ごしくださいね❣️

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(追記)

浮舟の母君は、死の穢れを、出産を控えている娘の居る自宅には持って帰れないので、一旦三条の小屋に身を置きます。

そこへ夫の常陸の守がやってきて、母君をなじります。

母君は、浮舟の事については、あの婚約破棄の時から一切事情を夫に話していなかったのですね。

そして浮舟亡き今となっては、夫に隠していても仕方がない、と薫の君の手紙を見せて全てを話すのですね。

夫は、もうびっくり仰天で、浮舟がそんなに幸運な娘だったのか。。と驚きます。

 

一方、匂宮と薫は、浮舟の事が未だに忘れられないのですね。

薫は、浮舟は本当に亡くなったのか。。と疑問を持っています。

匂宮は、恋の絶頂期で相手の浮舟を亡くしたので痛手が大きいのです(源氏と夕顔の時を彷彿させますね)。

でも、持ち前の色好みから、あちこちの女房と遊び過ごして淋しさを紛らわすのですね。。。

薫の方も、特定の女房と仲良くして居るようですね。

 

そんなとき、明石の中宮が亡き源氏の君と紫の上の御為に法華八講を六条の院でお催しになったのね。

そのお片付けの際、ちょうど西の渡り廊下にいらっしゃった女一宮のお姿を薫は偶然垣間見てしまうのですね。

白い薄いお召し物をまとって、氷を手に持って微笑んでおられる女一宮の美しさに薫は感動してしまうのです。

そして、自分の半生を振り返って、道心を得て出家するはずだった自分が、大君への恋から煩悩に悩まされ続けてのだ。。と思うのです。

そして、今更、女一宮にお目にかかった所でどうしようもないじゃないか。。。と溜め息をつくのですね。。

 

概ね、男という生き物は、好きだった女が(特に修羅場もなく突然)亡くなってしまったとしても、別の女の人を好きになったり。。とそういうものなのだ。。という紫式部の観察眼が見られるような感じも致しますね。