源氏物語「蜻蛉」④ 匂宮、侍従を迎えて語り合う。 | 気ままな日常を綴っています。

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いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

中の君は、今度の宇治での出来事は全て御存知だったのよ。

儚かった大君といい、この妹君といい、それぞれに考え深く心優しかったのに。。と思うにつけても、なぜ自分ひとりのんびり深い考えもなく生き永らえているのだろうか。。とお思いになるのよ。

匂宮も、浮舟との件は、中の君にも知られているので、今更黙っているのも心苦しく、亡くなる前の様子などを、少しは取り繕いながらお話になるのよ。

匂宮は「あの人の事を、貴女が私に隠していらっしゃったのが恨めしかった」(※中の君と浮舟が姉妹だったという事実ですね。)とお話になるのよ。

それにつけても、お二人は御姉妹なので、他人を相手にするのとは違った親しさが感じられて哀れ深いのよ。。

 

六条の院では、何事も仰々しくなさるので、匂宮が少しお加減がお悪いと言っても、大げさに騒ぎ立てるのよ。

それに引き換え、この二条の院では、たいそうのんびりなさり、くつろいだ御気分になられるのね。

匂宮は、それにつけても、どうして浮舟があんなに急に死んでしまったのか。。と、その事ばかりが気掛かりなので、例の時方をお呼びになり、右近を迎えに宇治へおやりになるのよ。

 

宇治の山荘では、母君も、自分も川に飛び込みたいほど悲しく、宇治に居ては気持ちが塞ぎこんでしまうので、京へお帰りになるのよ。

残された 女房達は、念仏を上げてくれる僧たちだけを頼りにして、本当にひっそりと暮らしている所へ匂宮のお使いが入って来るのよ。

この前、厳しく警備していた夜警の人々も、今は人の出入りを咎めようともしないわ。

「あの時は、最後のお別れになったのに、あんな風に匂宮を警戒してお入れする事も出来なかったのが、本当に残念だった事」と、女房達はあの時の匂宮がお気の毒になるのだったのよ。

 

右近が時方に会うのよ。

時方が、右近を迎えに来たと言うと、右近は「匂宮が、今度の事情をはっきり御納得なさるようにには、何もかもスッキリお話が出来そうにも思われません。時が来ましたら、こちらから参上して、あの時のあれこれを宮にお話し申し上げとうございます」と、今回はここを動きそうも無いのよ。

時方は「わざわざお迎えのお車など、匂宮がおさし向けになりましたので、お心遣いが無駄になりましては誠に申し訳ない事になります。せめてもうお一方でもどうか御一緒に行って下さい」と言うのよ。

それで右近は、侍従を行かせるのね。

侍従は、以前お目にかかった匂宮のお姿を、大そう恋しくお慕いしていたので、浮舟が亡くなった今、どんな機会にお目にかかれるだろうか。。と、この機を逃さず宮のお邸にお伺いする事にしたのよ。

京への道中「もし、姫君が生きていらっしゃったら、この道を人目を忍びこっそり京へお出でになられただろう。。この私だって、密かに匂宮の方にお味方していたのに」と思うと、しみじみ悲しさが身に沁みるのだったのよ。。

 

匂宮は、中の君にどうしても遠慮があるので、寝殿にお出ましになり、秘かに侍従と面会なさるのよ。

侍従は、浮舟のその折の有り様(近頃ずっと物思いにお悩みで泣いてばかりいた事、口数も少なく悲しんでいる気持ちも人に打ち明ける事が無かった事、一人で胸に隠しているばかりで遺言も無かった事)を匂宮に話して聞かせるのよ。

そして「入水などこんな気の強い事をお覚悟になっていらっしゃるなどとは、夢にも考えてみませんでした」と申し上げるのよ。

匂宮も「どんな風に思い詰めて決心し、身投げなどをしたのだろうか。。なぜ、それを事前に見つけて止める事が出来なかったのか」と、胸の煮え立つようなお気持ちがするのよ。

 

匂宮と侍従は、その夜一晩中亡き人の思い出を語り明かすわ。

侍従は、あの誦経目録に、浮舟が書きつけた母君へのお返事の事などをお話するのよ。

匂宮は、今までどれほどの者とも気にも留めていらっしゃらなかった侍従も、親しく懐かしくお感じになられるのよ。

「ここに居てずっと仕えるが良い。こちらの中の君も、その人とは姉妹だったのだから」とおっしゃるのよ。

侍従は「今は悲しくてなりませんので、ひとまず宇治に帰りまして、姫君の喪が明けましてからまた。。」と申し上げるのよ。

 

夜明け方に侍従は帰って行くので、匂宮は浮舟に御用意して置かれた櫛の箱、衣装箱各一揃いをお与えになるのよ。

侍従は、周りの女房達がどう思うだろう。。と困惑したけれども、お返しする訳にも行かず持ち替えるのよ。

 

宇治に帰って、右近二人でこっそり開けて見るのよ。

それは丹念に見新しい意匠を凝らして作らせ、集められた品々で、それを見ると匂宮の浮舟への思いを見るようで、二人で涙するのよ。。

衣装の方も大そう立派なものばかりで「どうやって人目につかない様に隠したら良いでしょうかね。。」と、その処置に困ってしまうのね。

 

今日はここまでです。

いつも長文で申し訳ありません💦

次回も「蜻蛉」⑤です。

 

今日も良い一日をお過ごしくださいね❣️

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(追記①)

まず、匂宮と浮舟との一件については、中の君が知っているという記述から始まります。

これは、宇治へのお二人のお手紙の使者も知っている事実ですから、当然、中の君の耳にも入った。。と言う事でしょうね。

当時は、娯楽も少なかったので、身分社会といえど「高貴な方の恋愛事情」は好奇心の的だったのでしょう。。

ここで、文中には中の君の心情には触れられていませんが、もう既に女性として妻として母として落ち着いた中の君の表情が読み取れるような気が致します。

 

むしろ匂宮の方が、浮舟の実の姉である中の君に自分の苦しみを訴えて慰めてもらっている感じですね。

ここに、匂宮と中の君の確固たる夫婦の絆のような物を感じ取る事が出来ると思います。

多分、このシーンでこの二人の遣り取りの記載は終了すると記憶しておりますが、このお二人の安定した未来を読者に予想させてくれるような気が致します。

「橋姫」の帖での中の君の生まれた時の事情(母が出産とほぼ同時になくなる。生活に困窮し、まともな乳母も付けれない状態。)からすると、一番将来が危ぶまれた女性ですが、三姉妹の中でこの方だけが生きながらえ、しかも東宮になるであろう匂宮の皇子まで生んだ。。と言う結末に「人の運命は分からない」と言う紫式部の思いを読み取ることも出来ると思います。

 

宇治川の向こう岸の別荘での浮舟との密会が最後だった匂宮は、どうしても浮舟の死に納得が行かず、時方を、右近を迎えに宇治に遣ります。

しかし、右近にしてみれば、浮舟が入水自殺したらしい事や亡骸が無いまま葬儀を済ませてしまった事などを話す事は出来ないのですね。。

それで右近は、侍従に、匂宮の元に行かせます。

 

匂宮は、中の君に流石に遠慮して寝殿で侍従と会い、亡くなる間際の浮舟の様子を聞き、入水自殺したらしい。。との事も聞き及びます。

浮舟の事を話してくれる侍従に、匂宮は懐かしく思い(侍従は主人を亡くして困っているだろうと)自分の所で仕えないか。。と申し出ます。

しかし侍従は「姫君の喪が明けてから。。」と申し上げ、一旦宇治に帰って行きます。

匂宮は、そんな侍従に、浮舟の為に用意していた衣装などを持たせるのでした。

宇治に帰った侍従は、右近とその品を見て、匂宮の浮舟への思いに涙するのでした。。

(この匂宮と侍従の遣り取りも源氏物語らしい情緒豊かな感じがしますよね〜)

 

(追記②)

浮舟の突然の死に納得がいかない匂宮が侍従に浮舟の死の直前までの様子を聞く話ですね。

匂宮は、宇治川の向こう岸の別荘で浮舟と愛し合った後、浮舟とは会っていません。

薫の宇治の山荘周辺の警護が厳しすぎたからねですね。

だから、「その時の記憶」で浮舟とは永遠のお別れになってしまっているので、なんで急に入水する心理になったのかわからないのですね。

 

浮舟は、自分の境遇を救ってくれた❓薫の君に義理立てしているところもあったでしょうし、薫を裏切ってしまった後、なんと匂宮の優しさや情熱に惹かれてしまった自分への自己嫌悪、そしてその匂宮は自分に優しく接してくれた姉・中の君の夫なのですね。

男の世話にならないと生きてゆけなかった高貴な女性の細やかな感情をどうしても男性は理解しがたい様ですね。

 

匂宮が浮舟を述懐するシーンはここで終了となってしまいます。