源氏物語「浮舟」⑨ 浮舟、我が身の運命を嘆き、死を願う。 | 気ままな日常を綴っています。

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いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

浮舟は、右近が手紙を盗み見したとは思いもよらなかったので、他で薫の君の御様子を見ている人が右近に話したのに違いない、と思うのよ。

でも、誰がそんな事を言ったのか❓など右近に尋ねる事も出来ないわ。

自分と匂宮との事を、女房達にも知られているのかと思うと、浮舟は恥ずかしくてならないのよ。

 

自分の心からこんな事になった訳ではないけれども、なんと言う辛いわが宿世かと思いつめている時、右近が侍従と二人で話しているのよ。

右近が「この際、どちらかお一人にお決めなさいませ。匂宮も、愛情の深さが薫の君に優っていて、真剣におっしゃってくださるなら、そちらにお決めなさいまして、お悩みになるのはおよしなさいませ。お嘆きのあまり、お体まで痩せ衰えたりなさるのは何の得にもなりません」と言うのよ。

侍従も「姫君がお考えになって、少しでもお気持ちの惹かれるお方こそが因縁の人とお決めなさいませ。でも、匂宮が何とも言いようのない程もったいなく、姫君を御寵愛あそばしている御様子を拝見しておりますので、私などは、薫の君が、今こうして京への引越しをあまりお急ぎになるのに、なんだか気が進まないのです。しばらく姫君がどこかにお姿をお隠しになっても、姫君の愛情が強いお方にお決めになるのが良いと存じます」と、侍従は匂宮のおみごとさにすっかり憧れ切っているので、ひたむきに申すのね。

 

さらに右近は「私は『姫君を御安泰にお過ごしくださいますよう』と、初瀬や石山などの観音様に願掛けをしております。この薫の君の荘園の人というのが乱暴者揃いでして、宇治の領地の当番の時は、少しの落ち度も無いように力むあまりに、間違いを起こさないでもありません。先夜、匂宮と川向こうへいらっしゃった時は、本当に危ないと怖い思いをしていました。匂宮は、出来るだけ人目に立たないように。。と、お供の人もお連れにならず、そんな所をああした連中が見つけましたら、どんな間違いを起こすかわかったものではありません」としゃべり続けるのよ。。

 

これらの話を聞いて浮舟は「やはり、この人達は私が匂宮の方に心惹かれていると思っているのだろう。。居た堪れない程恥ずかしい。。」と思うのよ。

浮舟は、心の内でどちらかのお方に決めようとしている訳ではなく、匂宮がどうしてこう恋焦がれるのか、又、長い間おすがりして来た薫の君とこれ限りお別れしようと考えている訳でも無かったのよ。。

そして「何としてでも死んでしまいたい。。こんな情けない身の上になるのは、身分の低い者たちの間にだってそう多くは無いだろうに。。」と言って泣き伏してしまうのよ。

 

右近は、浮舟が、前は心配な事が有っても、たださりげない風にしてのんびりしていらしたのに、匂宮との事が起こった後は、大そうお悩みの御様子なので、案じているのよ。

でも、事情を知らない乳母達は、満足そうに染め物などをしているのよ。

薫の君からは、あの返された手紙のお返事をいただかないうちに、何日か過ぎていたのね。

そんなある日、右近が恐ろしがっていた内舎人(薫の君の荘園の人)がやって来たのよ。

この者は、見るからに荒れくれた、太って野暮くさい年寄りで声も嗄れていて、ただ者とは見えないのよ。

内舎人は右近に「最近、薫の大将のお耳に入った噂では、女房の所にどこの誰とも知れない男たちが通っているとの事で、今後よく気を付けて夜番をせよ、不届きな事があれば厳重に罰するぞ、との仰せで御座います」と言うのよ。

右近はそれを聞いて、梟の鳴き声よりももっと恐ろしい気がするのよ。

 

右近は浮舟の元に行き「やはり、薫の君は、今度の出来事をお勘づきになったようで御座います。だから、あれ以来、お手紙も下さらないのでしょう」と言って嘆くのよ。

乳母は何となくそれを聞きかじって「それは嬉しい事でございます。このあたりは盗人が多いのに、宿直人も始めの頃のようによく夜番もせず、皆、代役だとか言って変な下人ばかり寄越すのだもの」と喜ぶのよ。

 

浮舟は、右近の言う通り、ついに今こそ身の破滅が来たとお思いになるのよ。

匂宮からは、いつ逢えるのか、引っ越しはどうなったのかと訴えていらっしゃり、本当に困った事なのよ。

浮舟は「こうなっては、どちらに従った所で煩わしい事が起こるに違いない。それならいっそ自分一人が死んでしまうのが一番無難な方法なのだ。このまま生き永らえていれば、必ず辛い目を見るに違いない。私が死ねば、母君はしばらくお悲しみお嘆きになるだろうけど、そのうち、たくさんの子供達の世話に紛れてその嘆きもお忘れになるだろう。。でも、これ以上、生き永らえて身を持ち崩し、人の笑い者になって落ちぶれてさすらうなら、もっと情けない嘆きを見るだろう。。」と思い詰めるのよ。

 

それからは、浮舟は、残しておけないような厄介な恋文などを目立たないように少しずつ始末して行くのよ。

それを見た(事情を知っている)侍従などは、匂宮があれほど立派な髪に、もったいないお言葉の数々を書き尽くされたお手紙を破ってしまうのは、情けない事だ、と言うのね。

それを浮舟は「いいえ、後でわずらわしい事になる手紙をどうして残しておけましょう。。どうせ私は長くは生きていられそうにないのだもの。死後にこんなものが残っていては、あの方にもご迷惑となりますから。。」とおっしゃるのよ。

 

でも、入水自殺の方は流石に決心しかねているのね。。。

「親を残して先だった者は、格別罪深いという者なのに。。」など、どこかで聞いた言葉など思い出しながら。。

 

今日はここまでです。

本当に毎回の長文でお時間を取らせて申し訳ありません。

次回は「浮舟」⑩(最終回)です。

 

今日も良い1日を送ってくださいね❣️

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(追記①)

浮舟は、右近が薫の君のお手紙を盗み見したとは思いも寄らず、自分と匂宮との事を女房達にも知られているのか。。と思うと、恥ずかしくなるのでした。

浮舟が、我が身の運命を思い詰めている時、右近も侍従も「匂宮にお決めなさいませ」と勧めます。

さらに右近は、薫の君の宇治の領地の荘園の者が乱暴者なので、見張り当番の時に匂宮が密かに見えた場合、匂宮の身に何かあるのではないか心配です、と話すのでした。

 

浮舟は、これらの話を聞いて、この人達は自分が匂宮に惹かれていると思って居るのだろう。。と思うのでした。

浮舟は、匂宮がどうして自分に恋焦がれるのか、又、長い間おすがりして来た薫の君とこれ限り。。とも考えて居る訳では無く、ただもうこんな事になった自分の身の上を情けないと思うのでした。

 

右近は、匂宮とこんな事になってから浮舟が大そう悩んでいる事を心配します。

しかし、事情を知らない乳母達は(薫の君が浮舟を京へお迎えに来てくださる事に)満足して居るのでした。

 

薫の君からは、あの返された手紙のお返事をいただかないうちに何日かが過ぎていました。

そんなある日、右近が恐ろしがっていた薫の君の荘園の人々がやってきます。

この者達の言う事から、右近は、薫の君が、匂宮が浮舟に近づいた一件を知って居るのだと悟り、それを浮舟に伝えます。

 

浮舟は、右近の言う通り、ついに今こそ身の破滅が来たと思います。

浮舟は「こうなっては、どちらに従った所で煩わしい事が起こるに違いない。それならいっそ自分一人が死んでしまうのが一番無難な方法なのだ。母君はしばらく悲しまれるだろうけれど、このまま生き永らえて身を持ち崩し、人の笑い者になって落ちぶれてさすらうなら、もっと情けない嘆きを見るだろう。。」と思い詰めるのでした。

 

それから浮舟は、厄介な恋文などを少しずつ始末します。

後で煩わしい事になる手紙はどうして残しておけよう。。薫の君にも迷惑になるし。。と思うのでした。。

しかし、入水自殺の方は流石に決心しかねているのでした。

「親を残して先だった者は、格別罪深いという者なのに。。」など、どこかで聞いた言葉など思い出しながら。。

(追記②)

浮舟は、薫の君の、(匂宮との関係を追求するような)お手紙を頂いて、さらに右近や侍従たちの会話から、自分と匂宮との関係はどうやら知れているかも知れない。。と思い悩むのですね。

右近や侍従は、そんな浮舟が匂宮に心惹かれている事を、ちゃんと見破っているのですよ。

だから「匂宮について行きなさい、悩むことなんてないでしょう。。」と勧めるのです。

 

しかし、浮舟は、もしそうなった場合、自分の姉である夫の愛人になってしまう訳ですから、事情は、そう簡単には行かず、必ず実家や中の君をも巻き込んだ「厄介な事」になるのは分かっているのですね。

しかも、そもそもは薫の君にお世話になっていたのに、それを裏切る形にもなります。

 

だからと言って薫の君について行くのは、もう「罪を犯した自分」と向き合う事になりますし、やはり浮舟の女心は右近たちが言うように匂宮に有ると思うのですね。。

 

そこへ、薫の君の荘園の内舎人が「薫の大将から厳重に警備するように申しつけられた」旨の報告が入ります。

今まで、未必的にはあのような追求の手紙を頂いても、薫は「何も知らないかも知れない」と思っていたのに、薫は全てを知っているのだ、とはっきり認識するのですね。

と思うと、もう薫に捨てられるだろう。。と浮舟は思い悩むのです。

 

それで彼女は、生き永らえて恥を晒し落ちぶれて行く自分を母君に見せるよりは、入水自殺をした方がうんとマシだ。。と考える事になるのですね。。