2021
01(04/22)30年の慰安婦闘争史で「最大の暗礁」…日本政府による謝罪と賠償、行き詰まり
02(04/22)[社説]日本の「慰安婦」被害者への賠償責任否定した没歴史的な判決
03(04/22)慰安婦被害者の損害賠償をめぐる2件の訴訟で韓国裁判所の判断が分かれた理由は
04(04/22)法廷を飛び出した「慰安婦」被害者イ・ヨンスさん「国際司法裁判所に持ち込む」
05(04/22)韓国外相、「慰安婦問題めぐり自分の主張を押し通す日本の態度に驚いた」
06(04/22)「覆された正義」…日本に「慰安婦」賠償責任は問えないという韓国裁判所
07(04/23)日本メディア「韓国の司法が主権免除認め、韓日慰安婦合意を肯定」と歓迎
08(04/27)日本軍「慰安婦」とハンセン病被害者、日本の補償の姿勢が異なる理由は
09(04/28)韓国政府、日本の「独島領有権主張」に「即時撤回」求める
10(04/28)菅政権初の外交青書「1月の『慰安婦』判決、断じて受け入れられない」
11(04/28)[社説]「独島・慰安婦」強引に踏襲した菅政権初の外交青書
12(04/29)日本政府が「従軍慰安婦」より「慰安婦」が適切と閣議決定したわけは
13(04/29)韓国最高裁の判事候補者「『慰安婦』被害者の名誉回復のために努力する」
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登録:2021-04-22 03:54 修正:2021-04-22 08:32
朴正煕政権の「65体制」の壁に阻まれ
朴槿恵政権の「12・28合意」が結局足を引っ張る
裁判所「被害者救済の代替手段存在」
慰安婦のほか強制動員、汚染水
悪材料は相変わらず
政府「被害者の名誉回復に努力」原則論のみ
韓日関係改善には当面影響しない見込み
21日、ソウル瑞草区のソウル中央地裁での判決後、イ・ヨンスさんが裁判所から出て来て立場を明らかにしている。同地裁民事合議15部はこの日、故クァク・イェナムさん、故キム・ボクトンさん、イ・ヨンスさんら被害者と遺族20人による日本に対する損害賠償請求を却下した/聯合ニュース
「つかまえて放してくれない、つかまえて放してくれないんです。日本の軍人が…。それでしかたなく泣きながらやられる。私が死ぬ前に必ず、せめて言葉ででも恨みを晴らしたいのです」
30年前の1991年8月14日、金学順(キム・ハクスン)さん(1924~1997)が日本軍「慰安婦」だったことを初めて実名告発した時、韓国社会は耐えきれない悲しみと羞恥心を感じた。以来、慰安婦被害者たちの苦しみに共感して、名誉を回復し、日本政府から正しい謝罪を引き出すことは、韓国社会が必ず達成すべき「時代的課題」となった。最初は女性たちが「業者に騙されて行ったもの」という不誠実な回答にとどまっていた日本政府は、1993年8月4日、慰安婦に対する軍の関与と動員の過程の強制性を認めた「河野談話」を出すことになる。
韓日間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」とする1965年(韓日請求権協定の)体制の壁は、堅固で高かった。日本政府は1995年7月に「アジア女性基金」を設立してこの問題の解決を図るが、65年体制のため政府予算は投入できないと言い張った。慰安婦問題が国家犯罪であることを認めて「法的責任」を受け入れるのではなく、「道義的責任」を認めるにとどまったのだ。韓国社会は「法的責任」を認めないアジア女性基金を拒否し、いつ終わるとも知れぬ対日闘争に乗り出した。
状況が変わったのは、慰安婦問題は「65年協定に含まれない」という2005年8月の韓国政府の見解が出てからだった。では、なぜ政府はこの問題の解決に取り組まないのか! このような韓国社会の切迫した問いに、2011年8月、憲法裁判所が応えた。日本政府と交渉しない韓国政府の「ずうずうしい不作為」が違憲であることを宣言したのだ。以降、慰安婦問題は韓国政府が必ず解決しなければならない「外交課題として」歴史の前面に再浮上した。
2013年からは、朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍晋三政権との間で凄絶な慰安婦外交が始まった。しかし、「中国の台頭」に韓米日は共同で対応すべきとする米国の圧力に押され、2015年末に朴槿恵政権は12・28(韓日慰安婦)合意を飲んでしまう。この合意を通じて安倍晋三前首相は、自分が認めるのが「法的責任」なのか「道義的責任」なのかを明らかにせずに「責任を痛感する」と宣言し、その延長線上でこれまで拒否し続けてきた10億円の政府予算支出を受け入れた。その代わりとして韓国政府が約束したのは、この問題の「最終的かつ不可逆的解決」だった。2016年末のろうそく集会で政権についた文在寅(ムン・ジェイン)政権は「この合意によって慰安婦問題が解決されてはいない」としつつも、2018年1月には「再交渉」は求めないと述べた。この時点ですでに慰安婦問題は、韓日両政府が「解決すべき」懸案ではなく「管理すべき」懸案として格下げされたのだ。
その後、2021年1月8日、多くの人の予想を覆す判決が出た。裁判所が国際慣習法上の主権免除(国家免除)原則を破って、日本政府に慰安婦被害者への賠償を命じる判決(1件目の判決)を下したのだ。しかし文在寅大統領は新年の記者会見で、この判決について「少し困惑したのは事実」と述べ、裁判所は先月末、勝訴した原告が日本の国家資産を強制執行する道をふさいだ。
そして裁判所は21日、2件目の裁判の判決で原告の訴えを却下した。裁判所は、1件目の判決においては慰安婦のような「反人権的不法行為」には適用できないと判断した主権免除の原則を受け入れ、「この事件の被害者たちに対する『代替的な権利救済手段』」である12・28合意が存在すると判断した。慰安婦問題の最終解決策として12・28合意を認めたのである。抗告の手続きは依然として残っているが、被害者が法的に救済される可能性は今のところかなり低くなった。慰安婦問題解決のための30年に渡る闘争史にとって、重大な分岐点となったのだ。
この判決は、韓日関係改善の流れへと導くことはできないだろう。両国は依然として北朝鮮と中国に対する「戦略的な見解の相違」という根本的な問題を抱えており、強制動員被害者賠償判決などの積年の難題、福島原発汚染水の海洋放出という新たな悪材料で対立している。
韓日両国政府は、判決に対する具体的な言及は控え、原則論的な立場のみを明らかにしている。外交部は「本日の判決に関する詳細内容を把握中であり、これに関する具体的な言及は控える」としつつ、「韓国政府は被害者中心主義の原則に則り、日本軍慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復するために政府がなしうるあらゆる努力をしていく」と述べた。続いて、日本に対しては「慰安婦問題は、世界でも類を見ない戦時の女性に対する人権蹂躙かつ普遍的な人権侵害の問題であり、日本政府には、1993年の河野談話や2015年の12・28合意などで自ら表明した責任の痛感と謝罪、反省の精神に見合った行動を示すことを求める」と述べた。
日本政府の反応は冷淡だった。加藤勝信官房長官は午前の定例記者会見で「内容を精査する必要があり、現時点で政府としてのコメントは差し控えたい」と述べるにとどまった。
キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/992000.html
韓国語原文入力:2021-04-21 16:28
訳D.K
登録:2021-04-22 03:56 修正:2021-04-22 07:50
ソウル鍾路区の旧駐韓日本大使館前の平和の少女像。21日、ソウル中央地裁民事合議15部(ムン・ソンチョル部長判事)は、故クァク・イェナムさん、故キム・ボクトンさんやイ・ヨンスさんら被害者と遺族20人による日本政府への損害賠償請求を却下した/聯合ニュース
日本軍「慰安婦」被害者たちが日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で21日、原告の請求が却下された。日本政府の責任を問う訴訟そのものが成立しないというもの。同じ趣旨の訴訟で裁判所は今年1月、日本政府に対し被害者1人当たり1億ウォン(約967万円)の賠償を命じる判決を下しているが、これと相反する結果だ。日帝の反人道的犯罪に責任を問い、実質的正義を打ち立てようとした前回の判決とは異なり、今回の判決は国際慣習法などの形式的要件に埋没し、消極的な態度を取ったものとなった。
裁判の最重要争点は「国内の裁判所は他国に対して裁判権を行使できない」という「国家免除(主権免除)」の法理だ。先の判決は、「慰安婦」強制動員のような「反人道的な犯罪」は国家免除法理の例外だと述べたが、今回の判決は国際司法裁判所(ICJ)の多数意見に寄りかかってこのような例外を認めなかった。
国際慣習法は、強者が支配する国際秩序を反映せざるを得ない。「慰安婦」問題を被害者の立場から取り扱うことには明らかな限界がある。イタリアとギリシャの裁判所も、ナチス・ドイツによる自国民に対する人権蹂躙行為に対し、国家免除を認めない判決を下したことがあるが、ICJでドイツに敗訴している。しかし、少しずつ国際社会が人権と正義を普遍的価値と認識しつつあるだけに、各国の努力が加われば国際慣習法も変化せざるを得ないということを、今回の法廷は看過している。
「慰安婦」問題は国際法の形式的枠組みに閉じ込められるべきものではなく、韓国の憲法と国際人権法が最高の価値と宣言している人間の尊厳に照らして判断しなければならない。裁判所は、憲法の掲げる国際法尊重の原則は強調しつつも、被害者の尊厳の回復は軽視したようだ。「外交的な屈辱」である朴槿恵(パク・クネ)政権による12・28韓日慰安婦合意を、被害者に対する権利救済の手段として評価していることも受け入れがたい。
判決は「慰安婦問題の解決は、韓国と日本の政府の対内外的な努力によって実現されねばならない」と注文しているが、日本政府の態度を見れば空虚な話だ。「慰安婦記録」の「世界の記憶」への登録さえ、日本の要求により先日ユネスコの規定が変わり、危機を迎えている。日本の歴史教科書は1993年の「河野談話」をかなぐり捨て、「慰安婦」の強制性についての記述を消してしまっている。人間性を踏みにじった戦時性暴力であるという「慰安婦」問題の本質を国際社会と歴史に刻みつけるには、外交努力だけでなく司法的評価も鮮明でなければならない。司法府は「人権の最後の砦」という役割を思い出し、上級審では今回の判決を正してほしい。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/992039.html
韓国語原文入力:2021-04-21 18:31
訳D.K
登録:2021-04-22 06:08 修正:2021-04-22 07:41
1件目の裁判の「国家免除は例外」判決から一転、2件目では「現時点では有効」
韓国裁判所、3カ月前とは正反対の判決
日本軍「慰安婦」被害者らが日本政府を相手に起こした2件目の損害賠償訴訟の公判が開かれた今月21日午前、ソウル瑞草区にあるソウル中央地裁で、イ・ヨンスさんが公判後、裁判所を後にしている/聯合ニュース
日本軍「慰安婦」被害者たちが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、3カ月前の判決とは異なり敗訴したのは、国際法上の「国家免除」(主権免除)と朴槿恵(パク・クネ)政権時代に結んだ「韓日慰安婦合意」に対する裁判所の判断が分かれたためだ。1件目の訴訟では、判決後日本政府が対応を示さなかったため勝訴判決が確定したが、2件目の訴訟は原告の被害者女性たちが直ちに控訴する意思を表明しており、上級審の判断を再度受けなければならない。
ソウル中央地裁民事合議15部(ミン・ソンチョル裁判長)は21日、イ・ヨンスさんや故クァク・イェナムさんら被害者20人が日本政府を相手取って起こした損害賠償訴訟で、原告の訴えを退けた。今年1月、被害者12人が日本に損害賠償を求めた訴訟で、日本政府に一人当たり1億ウォンの支払いを命じた同じ裁判所の民事合議34部(キム・ジョンゴン裁判長)の判断とは異なる結論を下したのだ。
1件目と2件目の訴訟の結論を分けた分水嶺は「国家免除」に関する判断だ。これは日本政府が主張してきた内容で、国内の裁判所は他国に対する訴訟の裁判権を持たないという国際慣習法だ。1件目の訴訟で裁判部は「国家免除理論は、絶対的な規範(国際強行規範)に違反し他国の個人に大きな損害を与えた国家が、国家免除理論の裏に隠れ、賠償や補償を回避できるような機会を与えるために形成されたものではないため、このような場合、国家免除に関する国際慣習法の解釈に例外を認めるべきだ」と判断した。国家免除理論は恒久的で固定的な価値ではなく、多くの国の国内法で例外事由を定めるなど、国際法体系が個人の権利を保護する方向に移行していると判断したのだ。
一方、2件目の訴訟の裁判部はこの日、「現時点で有効な国家免除に関する国際慣習法と、それに関する最高裁(大法院)の判例法理によると、日本政府を相手取って主権的行為に対して損害賠償を請求することは認められない」として、却下の判決を下した。「不法に占領された国家の領土内で不法行為が行われた場合、国家免除は適用されない」という条約に批准あるいは個別の法規定を設けている国は国連加盟国の約19%にすぎず、従来の国際慣習法が変わったとはいえないと判断したのだ。
韓日慰安婦合意に対する裁判部の判断も分かれた。1件目の訴訟で、裁判部は2015年の韓日慰安婦の合意と1965年の韓日請求権協定が被害者の賠償を包括しなかったと判断した。これに先立ち、慰安婦被害者たちは1991年、日本の裁判所で何度も民事訴訟を起こしたが、全部棄却または却下されており、2000年に米国など国外裁判所に提示した訴訟の結果も同様だった。1件目の訴訟で裁判部は「日本政府が国際共同体の普遍的な価値を破壊し、反人権的行為で被害者に深刻な被害を加えた場合までも、最終的手段に選択された民事訴訟で裁判権が免除されると解釈すれば、不合理で不当な結果を招く」とし、「韓日請求権協定と韓日合意は被害を受けた個人に対する賠償を包括できず、交渉力や政治的権力を持てなかった被害者個人にとっては、訴訟以外には具体的な損害賠償を受けることが難しい」と強調した。
しかし2件目の訴訟の裁判部は「日本政府に国家免除が認められた結果、被害者たちが韓国裁判所に提訴して権利救済を受けることが難しいとしても、“外交的保護権”の行使とみることができる2015年の韓日合意により、被害者たちに対する“代替的な権利救済手段”が客観的に存在する」とし、異なる判断を下した。2015年の韓日合意を慰安婦被害者の被害の回復に向けた日本政府レベルの措置だとし、被害者たちに対する代替的権利救済手段を調達するためのものとみなしたのだ。裁判部はまた、「(韓日慰安婦)合意で、日本政府の責任の性格を明確に規定できず、最終合意案に関して慰安婦被害者たちの意見を聴取しないなど、内容と手続きにおいて一部の問題点がある」としながらも、「この合意とこれによる後続措置によって、被害者たちのための代替的な権利救済手段が用意されたこと自体は否定しがたい」と付け加えた。
2件目の訴訟で裁判部は、判決が外交政策と国益に潜在的な影響を及ぼしかねないという点にも言及した。現在の国際慣習法と違って日本政府の国家免除を否定することになれば、判決後の強制執行の過程で、日本政府との外交的な衝突が避けられないとして懸念を示したのが代表的な事例だ。裁判部は「(今回このような判断を下したのは)韓国と日本政府の間で成立した外交的合意の効力を尊重し、追加的な外交交渉を円滑に行うためであって、被害者らにとって一方的に不本意な結果を強要するためではない」としたうえで、「韓日合意によって被害者の権利が処分または消滅したとみるわけでもない」と付け加えた。
チョ・ユニョン記者(お問い合わせjapan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/992019.html
韓国語原文入力:2021-04-21 20:33
訳H.J
登録:2021-04-22 06:09 修正:2021-04-22 07:06
日本政府に「慰安婦」被害の損害賠償求めた2件目の裁判で敗訴
正義記憶連帯「被害者の切実な訴えに背を向けた判決」
「今年1月の賠償判決の意味は消えない」
日本軍「慰安婦」被害者らが日本政府を相手に起こした2件目の損害賠償訴訟の公判が開かれた今月21日午前、ソウル瑞草区にあるソウル中央地裁で、イ・ヨンスさんが公判後、裁判所を後にしている/聯合ニュース
日本軍「慰安婦」被害者たちが日本に損害賠償を求めた訴訟の一審で敗訴した21日、法廷でこれを見守っていたイ・ヨンスさんは、「裁判結果がどうであれ、国際司法裁判所(ICJ)に持ち込む」と目を潤ませた。同日の判決について、慰安婦被害者支援団体も「裁判所が被害者らの切実な訴えを無視し、“人権の最後の砦”としての責務を果たさなかった」と強く反発した。
同日、ソウル中央地裁民事15部(裁判長ミン・ソンチョル)は、イさんら慰安婦被害者と遺族20人が日本に1人当たり1億ウォンの慰謝料の支給を求めた訴訟で、原告らの訴えを退けた。2016年に初めて訴訟を起こしてから5年の歳月が経ち、原告の被害者10人のうち生存者は現在4人だけだ。
イさんは判決を聞くため、車椅子に乗って韓服(ハンボク、韓国の民族衣装)姿で法廷に姿を現したが、敗訴趣旨の判決を聞くなり、途中で席を蹴って法廷から出て行った。法廷を出てからしばらく言葉を詰まらせたイさんは涙をぬぐい、取材陣の前で「本当に呆れる。結果がどうであれ、必ず国際司法裁判所に持ち込む。今はこれしか言えない」と語った後、裁判所を後にした。「慰安婦」問題のICJ付託を推進する委員会は文書を通じて「イ・ヨンスさんは不当な判決にもかかわらず、控訴など次の段階を考えており、他のハルモ二(おばあさん)たちのためにも、日本の慰安婦制度の犯罪事実の認定や真の謝罪、歴史教育、慰安婦歪曲や不正への反論などを要求する運動は終わっていないと強調した」と伝えた。
正義記憶連帯(正義連)など日本軍「慰安婦」被害者支援団体ネットワークと代理人団も同日、裁判所の判決を強く批判した。被害者代理人を務めるイ・サンヒ弁護士(民主社会のための弁護士会所属)は、「裁判所は判決文で、被害者たちが損害賠償を請求することになった最大の理由である人間としての被害の回復については一言も触れなかった。むしろ国家の利益を強調し、日本に対する強制執行を前提に国益を案じた」と遺憾を表明した。また「裁判所は今回の判決で、慰安婦問題の(自らの)責任を行政府と立法府に転嫁した」とし、「今回の判決を通じて人権の最後の砦である裁判所が被害者の人権のために何ができるかを議論する機会になることを願っている」とした。
イ・ナヨン正義連理事長も「(裁判所が)この30年間、日本軍性奴隷制度問題を告発して、国際社会で人間としての尊厳の回復に向けて闘争した被害者たちの活動を徹底的に無視した。国家は他国の法廷で被告にならないという“国家免除”(主権免除)を主張した日本政府の立場を受け入れた」とし、「自国の国民が重大な人権侵害を受けたにもかかわらず、加害者が外国だから責任を問えないというのか。被害者たちの切実な訴えに背を向け、“人権の最後の砦”としての責務を見捨てた今日の判決を歴史は恥ずべき出来事として記録するだろう」と強調した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも同日の判決に対する遺憾の意を示した。アムネスティ・インターナショナルのアーノルド・ファン東アジア調査官は「今日の判決は、日本軍性奴隷制度の生存者たちだけでなく、第二次世界大戦中に彼女らのように残酷な行為に苦しんだ末、すでにこの世を去った被害者にも、正義が具現されないという大きな失望を与えた」とし、「第二次世界大戦から70年の歳月が流れた。日本政府がこれ以上生存者の権利を奪えないよう歯止めをかけなければならない」と指摘した。
これに先立つ1月、ソウル中央地裁民事34部(キム・ソンゴン裁判長)は、別の慰安婦被害者らが起こした訴訟で、このような人権侵害事件には国家免除の理論を適用できないとし、賠償責任を認めた。同日の判決は、民事34部の判決に反するものだ。イ弁護士は「今回の判決で1月の判決の意味が消えるわけではない。9カ国から410人の法律家がこの判決を支持する声明を出した。個人の人権を保障する方向に進む国際人権法の流れに逆行する今回の判決は誠に遺憾だ」と述べた。
チャン・イェジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/991945.html
韓国語原文入力:2021-04-21 15:51
訳H.J
登録:2021-04-22 06:24 修正:2021-04-22 06:54
21日の寛勲クラブ招請討論会で
チョン・ウィヨン外交部長官が今月21日、ソウルプレスセンターで開かれた寛勲討論会で、質問に答えている/聯合ニュース
チョン・ウィヨン外交部長官が大統領府国家安保室長時代、日本軍「慰安婦」被害者問題を解決するため、「極めて現実的な代案」をまとめ、日本側と数回協議を行ったが、「一貫して自分の主張を押し通す」日本側の「交渉態度にかなり驚いた」と明らかにした。
チョン長官は21日午前、ソウルプレスセンターで開かれた寛勲クラブ招請討論会で「文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後、慰安婦被害者問題を解決するためにいかなる努力をしてきたのか」という質問を答える過程でこのように述べた。
チョン長官は2015年の韓日政府間合意の枠組みを壊さずに被害者が受け入れることができる「非常に現実的ないくつかの案を日本側に提示した」と明らかにした。ところが「(韓国側の案を持って)行く度に、『受け入れられない、もっと良い代案を持って来い』と言われた」とし、日本側が「(協議に)少し進展が見られれば、進展したものは受け入れたうえで、『これでは足りない、もっと(良い案を)持って来い』」と要求したと明らかにした。
チョン長官はまた、「安保室長時代、この問題を解決するために何度も非公開で日本に行き、日本の高官と協議を行った。そのたびに非常に現実的な案を提示したが、日本側の交渉態度にかなり驚いた」と述べた。チョン長官は日本側が「一貫して自分の主張を押し通した」とし、これは「交渉する気がないことを示すもの」だと解釈した。また日本政府が「政府間合意を守らない場合は、韓国が国際法に反することになる」という「理屈に合わない主張」を展開し、あちこちで韓国政府を罵倒していると指摘した。「慰安婦」被害者問題の根本原因と基本的な性格を踏まえたうえで、「果たして日本にそのような資格があるのか」と問い返す場面もあった。チョン長官は日本にどのような提案をしたかについては明らかにしなかった。
チョン長官は討論会中、落ち着いて質問に答えていたが、日本側と協議過程を語る際には、多少興奮した様子だった。彼は答弁後「興奮して申し訳ない」としたうえで、「慰安婦問題については言いたいことがたくさんある」と説明した。
チョン長官が、故クァク・イェナムさんやキム・ボクトンさん、「慰安婦」被害者遺族など20人が日本に損害賠償を求めた訴訟の結果を念頭に置いて、このような発言をしたかどうかは確認されていないが、外交部長官が非公開で行われた両国間の協議過程を公開し、相手国の態度を強く批判したのは極めて異例だ。
この発言に先立ち、チョン長官は同日、「最近の歴史問題に関する基本的認識の相違のため、韓日関係があまりにも否定的に映ることを残念に思っており、できるだけ早期に日本の外相に会って、これらの問題を対話によって解決できるのではないか」と期待感をのぞかせた。ただし、「まだ日本はそうする準備ができていないようだ」としたうえで、「日本は最も近い隣国」であり、「朝鮮半島の平和と安定のためには必ず協力しなければならないパートナー」とも述べたが、チョン長官の同日の発言が両国関係の改善に肯定的な影響を及ぼすことはないと見られる。
討論会が終わった後、慰安婦被害者の敗訴に対する立場を尋ねる取材陣の質問に、チョン長官は「報告を受けたばかりだ。詳しく検討してみる必要がある」とし、慎重な態度を示した。
キム・ジウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/991998.html
韓国語原文入力:2021-04-21 16:37
訳H.J
登録:2021-04-22 09:58 修正:2021-04-22 10:42
慰安婦被害者の2件目の損賠訴訟「却下」
賠償責任を認めた1件目の訴訟とは異なり
「他の国家の主権行為は損賠訴訟不可」
被害者ら、判決を不服とし控訴へ
日本軍「慰安婦」被害者たちが日本政府を相手取って起こした2件目の損害賠償請求訴訟の一審で敗訴した21日午前、ソウル瑞草区のソウル中央地裁で女性人権運動家のイ・ヨンスさんが裁判所を出ながら話をしている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社
きれいな翡翠色の韓服を着たイ・ヨンスさん(93)の目から涙があふれだした。80年の恨(ハン)を少しでも晴らす瞬間を期待して車椅子でやってきたイさんが流したのは、わだかまりが解けた涙ではなかった。自国の法廷でも最後まで認めてもらえないという絶望と当惑の涙だった。
ソウル中央地裁民事15部(ミン・ソンチョル裁判長)は21日、イさんや故クァク・イェナムさんなど元「慰安婦」被害者と遺族20人が日本政府を相手取って起こした損害賠償訴訟を却下した。却下は訴訟要件を満たしていないという理由で本案判断をせずに裁判を終わらせる決定だ。ほかの被害者12人が起こした「1件目の訴訟」で、今年1月に日本政府の賠償責任を認めた一審判決とは食い違った結論だ。
判決を聞いていたイさんは、敗訴の趣旨の内容に、裁判長の言葉を聞き終えず車椅子を回して法廷を出た。しばらく言葉を詰まらせたイさんは、涙をふいた後「あきれる。国際司法裁判所に必ず行く。これしか言う言葉がない」と短く言ってその場を離れた。
少女たちに犯した戦争犯罪の責任を問うために数十年間戦ってきた被害者たちは、「国家免除」という4文字の法論理にあっさりと阻まれた。同地裁は「韓国が国内外で傾けた努力とこれによる成果が、被害者の苦痛と被害の回復としては不十分だったとみられ、2015年12月の韓日合意も、彼らが過去に負った苦痛に比べれば十分満足な内容だとは考えがたい」と指摘した。しかし「現時点で有効な国家免除に関する国際慣習法とこれに関する最高裁判所の判例によると、日本政府を相手取って主権的行為に対して損害賠償を請求することは許容されない」とし、「韓国の裁判所が日本政府に対する裁判権を持つかどうかについて、韓国の憲法と法律またはこれと同じ効力を持つ国際慣習法によって判断するしかない」と明らかにした。さらに、国家免除を例外とできるかどうかは「韓国の外交政策と国益に潜在的影響を及ぼし得る事案なので、行政府と立法府の政策決定が先行されなければならない事項」だとし「裁判所が非常に抽象的な基準だけを提示して例外を認めることは適切ではない」と明らかにした。
裁判部は2015年の朴槿恵(パク・クネ)政権時代の韓日慰安婦合意を日本政府レベルの権利救済とみなすことができるという判断も明らかにした。この合意には、被害者に対する日本政府レベルの謝罪と反省の意味が込められており、日本政府が資金を拠出して財団を設立し被害回復事業をするとしたため、「代替的権利救済」手段を設けたものとみなすべきだという趣旨だ。また、「慰安婦被害者問題の解決は韓国がたびたび明らかにしたとおり、日本政府との外交的交渉を含む韓国の対内外的な努力によって行われなければならない」と明らかにした。
今回の判決は、1月に故ペ・チュンヒさんら12人が日本政府を相手取って起こした損賠訴訟の一審判決とは正反対だ。当時、ソウル中央地裁民事34部(キム・ジョンゴン裁判長)は「原告各自に1億ウォンを支払う」よう原告勝訴判決を言い渡した。当時、裁判所は「国際共同体の普遍的価値を破壊する反人権的行為まで裁判権が免除されると解釈するのは不合理だ」とし、国家免除を認めなかった。
2016年に訴訟を起こしてから5年が経ち、原告として立ち上がった被害者10人のうち生存者はイさんを含め4人だけだ。被害者女性らを代理するイ・サンヒ弁護士は「裁判所は判決の間、被害者が損害賠償を請求することになった最大の理由である『人間としての被害回復』については一言も言及せず、国益を懸念した」とし、裁判所を批判した。正義記憶連帯のイ・ナヨン理事長は「自国民が重大な人権侵害を受けたにもかかわらず、加害者が外国だから責任を問えないのか。被害者たちの切実な訴えに背を向け、『人権の最後の砦』としての責務をないがしろにした今日の判決を、歴史は恥ずべき出来事として記録するだろう」と述べた。アムネスティ・インターナショナルのアーノルド・ファン東アジア調査官も「日本軍性奴隷制の生存者たちだけでなく、第二次世界大戦中に彼女らのように残酷な行為に苦しんだ末、すでにこの世を去った被害者たちにも、正義が具現されないという大きな失望を与えた」と批判した。原告たちは判決を不服として控訴することを決めた。
日本の外務省幹部は判決に対し「妥当で当然の結果」という反応を示したとNHKが報じた。
チョ・ユンヨン、チャン・イェジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/992066.html
韓国語原文入力:2021-04-22 02:10
訳C.M
登録:2021-04-23 09:52 修正:2021-04-23 11:46
文大統領の「困惑」発言が影響を与えた可能性に言及
朝日新聞「敗訴を予想し、駐日韓国大使の招致準備も」
イ・ヨンスさん(一番左)をはじめとする日本軍「慰安婦」被害者たちが2019年11月13日、ソウルの民主社会のための弁護士会(民弁)事務所で日本政府に対する損害賠償請求訴訟と関連して発言している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
日本軍「慰安婦」被害者の2件目の損害賠償訴訟が却下されたことに対し、日本は主権免除(国家免除)が認められたとともに、韓国の裁判部が2015年の韓日慰安婦の合意を肯定的に言及したことについて意味付けをした。
読売新聞は22日付の社説で「元慰安婦訴訟は国際法を重視した妥当な判決だ」と主張した。茂木敏充外相も前日、国会で「(主権免除に関する)今回の判決が日本政府の立場を踏まえたものであるとするなら適切なもの」だとして、歓迎の立場を示した。主権免除は、国家の主権行為は他の国では裁かれないという国際慣習法だ。 また、裁判部が2015年12月の韓日慰安婦合意が被害者の被害回復に向けた日本政府レベルの措置だったと判断したことについて「韓国の司法が日本の対応を(肯定的に)評価したのは異例」だと同紙は報じた。
1件目の訴訟とは異なる結果が出た背景としては、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が1月の記者会見で日本政府に「慰安婦」損害賠への賠償を命じた半径について「困惑している」と発言したことが影響を与えたという分析tもある。東京大学大学院の木宮正史教授(韓国政治外交論)は共同通信とのインタビューで、「(文大統領の発言が)判決に影響を与えた可能性がある」と述べた。
日本政府が敗訴を予想し、カン・チャンイル駐日韓国大使の招致を準備していたことが分かった。 朝日新聞は「日本政府は今回も敗訴する可能性が高いとみて、判決直後に外務省の秋葉剛男事務次官が韓国のカン・チャンイル駐日大使を呼び、抗議する段取りまで整えていた」と伝えた。
訴訟が却下されたとしても、韓日関係の改善はすぐには難しいという分析が出ている。強制動員被害者に対する最高裁(大法院)判決と1月の「慰安婦」損害賠償訴訟がそのまま残っているためだ。外務省のある幹部は毎日新聞のインタビューで「日韓関係が更にマイナスにならなかっただけ。厳しい状況は変わらない」と述べた。
キム・ソヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/992177.html
韓国語原文入力:2021-04-23 02:31
訳C.M
登録:2021-04-27 03:40 修正:2021-04-27 07:29
26日午後、ソウル瑞草区の弁護士教育文化館で開かれた「韓国ハンセン病家族被害者たちの日本政府に対する第1次補償請求に関する韓日弁護団記者会見」で、日本家族訴訟原告団のファン・グァンナム副団長が発言している/聯合ニュース
日帝強占期(日本の植民地時代)に強制隔離されたハンセン病元患者の家族たちが日本政府を相手取って補償を請求している中、被害者の弁護団は「日本政府は補償を拒否しないだろう」との展望を示した。日本国民の被害者も存在することから、日本政府も日本軍「慰安婦」被害者とは異なり、ハンセン病元患者の家族被害者に対する補償には積極的だろうとの理由からだ。
韓日両国の弁護士からなるハンセン病家族補償請求弁護団は26日、ソウル瑞草区瑞草洞(ソチョグ・ソチョドン)のソウル地方弁護士会教育文化館で記者会見を開き、韓国のハンセン病元患者の家族被害者62人が日本政府に対して補償を請求した経緯と過程などを説明した。補償を請求したハンセン病元患者の家族たちは、植民地期に日本による差別と人権侵害行為に苦しんだハンセン病元患者の子どもたちだ。日本政府はハンセン病元患者家族補償金支給法に則り、ハンセン病患者隔離政策を反省し謝罪するという観点から、1945年8月15日以前に生まれたハンセン病元患者の子どもや配偶者などに180万円を補償している。韓国の被害者たちは19日に日本の厚生労働省に補償請求書を提出した。
この日の記者会見で両国の弁護団は、韓国の被害者が補償を申請するまでには長い時間がかかったと説明した。日本が全羅南道小鹿島(ソロクト)に慈恵医院を建て、国内のハンセン病患者の隔離を始めたのは1917年。この場所で日本はハンセン病患者を強制労働に動員し、断種(強制不妊)手術を実施するなど、人権侵害行為を日常的に行った。国内外のハンセン病患者隔離の根拠となった「らい予防法」を日本がようやく廃止したのは1996年のことだった。
紆余曲折の末、日本は2006年、「韓国、台湾などの他国のハンセン病患者被害者にも補償金を支給する」ことを趣旨とするハンセン病補償法の改正を行い、2006年から2016年にかけて韓国のハンセン病患者被害者590人は1人当たり800万円の補償金を受け取った。2019年にはハンセン病元患者の家族に対しても被害を補償するという「家族補償法」が制定され、韓国のハンセン病元患者の家族も少しでも被害に対する賠償を受け取れる道が開かれた。日本側弁護団の国宗直子弁護士はこの日の記者会見で、「家族補償法には『昭和20年8月15日までの間にあっては、台湾、朝鮮等も『本邦』と同様の取扱いとすること』と明記されているため、この法により(日本政府が)補償を拒否することはありえない」と述べた
ハンセン病患者に対する日本政府の見方は、日本軍「慰安婦」被害者や強制徴用被害者たちに対する時とはまったく異なる。家族補償法の前文には、「(強制隔離という)悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め、深くおわびする」と記されているほどだ。しかし、日本軍「慰安婦」や強制徴用被害者に対する謝罪と賠償責任は拒否している。
国宗弁護士は「『慰安婦』問題や強制徴用問題と異なる点は(ハンセン病被害者には)補償法があるということ」とし、「日本は本国と韓国、台湾に徹底してハンセン病政策を実施した」と語った。日本はかつて、自国民に対しても隔離政策をとって被害者を量産したため、他国の被害者に対する責任も認めざるを得ないという説明だ。2005年に東京地裁が台湾のハンセン病被害者に対する日本政府の賠償責任を認めた判決文にも、「(日本の被害者のみに補償し)台湾の被害者に補償しないのは憲法第14条の平等原則に反する」という表現が出てくる。
ハンセン病元患者被害者の家族である在日同胞ファン・グァンナムさんはこの日の記者会見で、「ハンセン病被害者家族訴訟が始まったのは2016年2月からで、3年間法廷で訴え、2019年6月に勝訴した」とし「それが家族補償法の成立へとつながり、補償が受け取れるようになった。今後もハンセン病患者に対する差別のない社会を作っていく」と述べた。ハンセン病患者家族補償請求弁護団の団長を務めるチョ・ヨンソン弁護士は、「被害者に会って、2次、3次の補償請求を行う計画」と述べた。
シン・ミンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/992700.html
韓国語原文入力:2021-04-26 19:48
訳D.K
登録:2021-04-28 03:24 修正:2021-04-28 07:52
在韓日本大使館総括公使を呼んで抗議
在日本大使館の相馬弘尚総括公使が27日、ソウル鍾路区都染洞の政府ソウル庁舎に入ってきたところ/聯合ニュース
韓国政府は27日、日本政府が外務省の公式文書である外交青書で「独島は日本の領土」と再び主張したことと、慰安婦被害者に対する1人当たり1億ウォンの賠償を日本政府に命じた1月の韓国裁判所の判決を「断じて受け入れることができない」と反発したことについて、強く抗議した。
外交部は27日午前10時ごろ、在韓日本大使館の相馬弘尚総括公使をソウル鍾路区都染洞(チョンノグ・トリョムドン)の政府ソウル庁舎の外交部に呼んで抗議した。政府はこの日、外交部報道官の論評を通じて「日本政府が27日に発表した外交青書において、歴史的、地理的、国際法的に明白な韓国固有の領土である独島について、再び根拠のない領有権主張を繰り返したことに対して強く抗議し、これを即時撤回することを厳重に求める」と発表した。さらに「韓国政府は、独島に対する日本政府のいかなる挑発に対しても、断固として対応していくことを再度明確に明らかにする」と付け加えた。
政府はさらに、「日本政府の日本軍『慰安婦』被害者問題についての認識に関し、この問題は世界で類を見ない武力紛争下における女性に対する人権蹂躙であり、普遍的な人権侵害の問題として、政府は、日本政府が1993年の河野談話や2015年の韓日慰安婦合意などで自ら表明した責任の痛感と謝罪・反省の精神にふさわしい動きを示すことを強く要求」した。
日本政府は昨年の外交青書で、独島については「日本固有の領土」であり韓国が「不法占拠」しているとし、2018年10月の強制動員被害者賠償判決については韓国が「国際法に違反」していると記している。日本政府に「慰安婦」被害者への賠償を命じた1月の判決については、今年の外交青書で初めて言及している。これを受け、韓国政府の抗議論評にもこの内容が初めて盛り込まれた。
キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/992755.html
韓国語原文入力:2021-04-27 10:44
訳D.K
登録:2021-04-28 05:46 修正:2021-04-28 06:57
独島は「日本固有の領土」繰り返し
米中対立の中、中国牽制の表現を大幅に強化
日本の菅義偉首相=東京/AFP・聯合ニュース
菅義偉政権発足後、初めて発行された「外交青書」で、日本政府は今年1月韓国裁判所の「慰安婦」被害への賠償判決について「断じて受け入れることはできない」と強い口調で主張した。独島が「日本固有の領土」という主張も再び繰り返された。
茂木敏充外相は27日、菅首相主宰で開かれた閣議で「外交青書」を報告した。「外交青書」は、外交状況や展望、国際情勢等に関する日本政府の認識を盛り込んだ一種の白書である。
2021年版「外交青書」(第64号)は、今年1月にソウル中央地裁が日本政府に日本軍「慰安婦」被害者への賠償を命じる判決を言い渡したことについて、「国際法及び日韓両国間の合意に明らかに反する」とし、「(強制動員問題などで)既に厳しい日韓関係を更に深刻化させるものであり、極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできない」と言及した。「慰安婦」判決は、今回新しく加えられた内容だ。日本が「竹島」と呼ぶ独島についても「(韓国が)竹島を不法占拠し続けている」とし、再び「日本固有の領土」という主張を展開した。
昨年3年ぶりに再び使用した「韓国は重要な隣国」という表現は今年も維持された。日本は、韓日関係の状況によって、首相の演説や外交青書などで韓国に対する表現を変えている。菅首相は昨年10月の国会演説では「韓国は非常に重要な隣国」と表現したものの、1月の「慰安婦」判決以降、「非常に」を除いて言及している。
北朝鮮問題については「北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄に向け、国際社会が一致結束して、安保理決議を完全に履行することが重要である」と主張した。これは「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄)」を意味する。菅首相は16日、日米首脳会談後の共同記者会見で、「CVID」について直接言及した。また「米国や韓国と緊密に連携し、国際社会と協力しながら、朝鮮半島の非核化を目指していく」とし、菅首相が施政方針演説で「政権の最重要課題である拉致問題」と強調したことにも触れた。
米中対立が激化している中、日本が中国をけん制する表現を大幅に強化したことも注目される。中国の軍事的台頭を説明しながら「日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっている」と明示した。昨年の「地域・国際社会共通の憂慮事項」という表現より強い表現で危機感を表した。
中国と領土紛争中の尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺で領海侵入を繰り返す中国海洋警察部隊の動きを取り上げ、「国際法違反」という表現を初めて用いた。昨年ほとんど扱われなかった新疆ウイグル人権弾圧についても「深刻に懸念する」と書いた。習近平中国国家主席の訪日についても「日中両政府はまずは新型コロナの収束に専念すべきであり、今は具体的な日程調整をする段階にはない」と記し、昨年の「再度調整する」に比べて内容が後退した。
今月16日、日米首脳会談と関連して「成果」を強調した内容が盛り込まれたが、最も注目を集めた台湾海峡の部分は今回抜けている。共同通信は「中国の反発を考慮した可能性がある」と報じた。日本は、台湾問題について言及することをかなり負担に思っているという。
キム・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/992791.html
韓国語原文入力:2021-04-28 02:44
訳H.J
登録:2021-04-28 06:00 修正:2021-04-28 06:41
日本の菅義偉首相=東京/AFP・聯合ニュース
日本政府は27日に公開した2021年版『外交青書』で、独島は「日本固有の領土」だという強引な主張を繰り返した。また、1月のソウル中央地裁の日本軍「慰安婦」被害者に対する賠償判決については「断じて受け入れることはできない」とした。外交青書は毎年の外交方針を国内外に公表する公式文書だが、菅義偉内閣発足後に初めて出た今回の外交青書でも、日本政府はこれまでの主張を繰り返しており残念だ。安倍晋三前首相時代に極端に悪化した韓日関係が、昨年9月の菅首相の就任を機に解決されることを願った一抹の期待さえ、色あせてしまった。
外交青書は独島について「歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土である」としながら「韓国は、警備隊を常駐させるなど、国際法上何ら根拠がないまま、竹島を不法占拠し続けてきている」と強弁した。日本は2017年の外交青書まで「竹島は日本の領土」だと主張しており、韓日関係が行き詰まった2018年の外交青書からは「不法占拠」という単語を追加したが、菅政権はそのまま受け継いだのだ。
今回の外交青書には、ソウル中央地裁の日本軍「慰安婦」被害者への賠償判決について「国際法及び日韓両国間の合意に明らかに反する」という主張が新たに加わった。日本政府は「韓国に対し、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを改めて強く求めていく方針」だという内容も加えた。強制徴用問題についても、日本が受け入れられる解決策を韓国が早期に提示しなければならないというこれまでの主張を繰り返した。
日本の植民地支配と侵略戦争により起きた悲劇に対し、むしろ韓国を非難し責任を負わないという日本政府の態度は、失望させられるものだと言うほかはない。日本軍「慰安婦」被害者の問題の本質は、世界で類のない武力紛争の下で起きた女性に対する人権蹂躙であり普遍的な人権侵害の問題だということを、日本政府は直視しなければならない。
韓日間には、過去の歴史問題とともに、日本の福島原発汚染水の放出決定や北朝鮮核問題をはじめとする朝鮮半島情勢に対する意見の相違など、解決しなければならない難題が山積している。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、三一節(独立運動記念日)の記念演説で韓日関係改善への意向を強く打ち出したが、日本政府はこれまでの態度に固執している。日本は、過去の歴史問題に対する居直りの認識と福島原発汚染水の放出についての無責任な態度を捨て、韓国と対話により問題を解決しようとする誠意ある姿勢を示さなければならない。「片方の手だけでは拍手はできない」という明らかな事実に気付いてほしい。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/992874.html
韓国語原文入力:2021-04-28 02:37
訳M.S
登録:2021-04-29 05:41 修正:2021-04-29 07:13
強制性を帯びており、不適切と判断、教科書に反映される見込み
「強制徴用」や「強制連行」も「徴用」と表記すべき
平和の少女像=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社
日本政府が「従軍慰安婦」や「強制徴用」の用語が強制性を帯びているとし、使用するのは不適切だという答弁書を閣議決定した。代わりに「慰安婦」と「徴用」という用語を用いることが適切という公式見解を示した。右翼の主張を受け入れたもので、小中高の教科書に反映されるとみられる。
日本政府は、日本維新の会の馬場伸幸衆院議員が「従軍慰安婦」という用語には軍によって強制連行されたという意味が込められていると質疑したことに対し、27日の閣議で「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切だ」という答弁書を決定したと、読売新聞が28日付で報道した。
日本政府は、朝日新聞が朝鮮半島で「慰安婦」を連行したと証言した吉田清治(2000年死亡)の証言が虚偽だと判断し、2014年に関連記事を全文または一部を取り消したことなどを考慮し、「従軍慰安婦」という表現が「誤解を招く恐れがある」と指摘した。しかし、当時、朝日新聞は「吉田証言」に信用性がないとしても、女性たちが本人の意思に反して「慰安婦」として連れて行かれたのは変わらない事実だと強調した。「従軍慰安婦」という表現は1993年4月河野洋平官房長官が発表した「河野談話」にも使われた。河野談話は、「慰安婦」の動員や生活における強制性を明確にした。
日本の右翼勢力は「慰安婦」の強制性を消すために様々な方法で圧力を行使してきたが、今回、政府がそれに応えたわけだ。右翼団体の「新しい歴史教科書をつくる会」は、教科書から「従軍慰安婦」という表現を削除するよう求めてきた。現在、日本の中学の社会(歴史)や高校の歴史総合教科書の一部に「従軍慰安婦」という表現が含まれている。日本政府関係者は読売新聞に「今回の閣議決定は今後(教科書)検定に反映される」と述べた。
もちろん、最近韓国でも「従軍慰安婦」という用語は使われていない。ただし、その理由は日本とは全く異なる。「軍隊に従い、戦場に出る」という意味の「従軍」が被害者が自発的に慰安婦になったという誤った認識を植えつけることを警戒し、この用語を使用していない。代わりに、日本軍の責任を明確に表現するため、「日本軍慰安婦」と表現している。国連報告書は、日本軍慰安婦を「性奴隷」と規定した。
日本政府はまた、閣議で、日帝強占期(植民地時代)に朝鮮半島出身の労務者を連れて行き、強制労働に従事させたことについても、「強制徴用」や「連行」の代わりに「徴用」という用語を使うのが適切だと決定した。日帝強占期の歴史専門家たちは労務動員・徴用や「慰安婦」などについて、当事者に事実上選択の自由がない状況で行われたと指摘してきた。
キム・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/992953.html
韓国語原文入力:2021-04-29 02:32
訳H.J
登録:2021-04-29 06:36 修正:2021-04-29 07:46
国会人事聴聞会で「司法府への信頼が落ちたことを体感している」
チョン・デヨプ最高裁判事候補者が28日、汝矣島の国会で開かれた人事聴聞会で答えている/聯合ニュース
チョン・デヨプ最高裁判事候補者は28日、国会で開かれた人事聴聞会で、日本軍「慰安婦」被害者らの名誉回復のために努力するという意向を表明した。
チョン候補者はこの日、「日本軍慰安婦への賠償判決がわずか3カ月で勝訴から敗訴に変わった理由はあるのか。国民の法感情と乖離しているのではないか」という共に民主党のシン・ドングン議員の質問に「国家主権理論について、二つの裁判部が互いに異なる判断を下した。『慰安婦』事件は国際法の争点を含んでおり、様々な法的争点があるため、今後の控訴や上告を通じ、最高裁で心血を注ぎ結論を下さなければならないだろう」と答えた。これに先立つ21日にイ・ヨンスさんやクァク・イェナムさんら「慰安婦」被害者や遺族20人あまりは、日本政府を相手取って起こした損害賠償訴訟で、他の被害者12人が起こした1件目の訴訟とは異なり敗訴した。チョン候補者は「『慰安婦』被害者の完全な名誉回復のために努力してほしい」という共に民主党のチェ・ヘヨン議員の要請にも「そのようにする」と約束した。
チョン候補者は、「司法壟断事件」で裁判中のユン・ジョンソプ部長判事がソウル中央地裁に6年間留任となった人事については「異例の人事であることは事実だ」と明らかにした。ただし彼は「事件の担当配分には例規があり、各レベルの裁判所で事務分担委員会が構成され民主的な会議体制を通じて事務配分が行われることを、ソウル高裁に勤務する間に確認し経験した」とし、「中央地裁でどのように事務分担がなされたのかについては分からない」と加えた。
司法府の信頼回復のために努力することも確約した。チョン候補者は「司法府に対する国民の信頼が大きく落ちたことを、様々な面で体感している」とし、「司法府は国民の信頼のみにより存立できる機関であるため、裁判官個人の道徳性、責任性、司法へのアクセシビリティ、裁判の透明性など、すべての面を満たし、信頼を回復しなければならない」と明らかにした。
チョン候補者は、キム・ミョンス最高裁長官がイム・ソングン前釜山高裁部長判事の辞表を差戻し、偽りの釈明を行った議論については「最高裁長官が謝罪したと認識している。ただし、謝罪が十分であるのか、そのような措置が必要なのかどうかについては、退任後に何らかの評価が下されるだろう」と答えた。
国会の人事聴聞特別委員会はこの日午後4時40分頃、チョン候補者の任命同意案の審査経過報告書を与野党満場一致で採択した。国会は29日に予定される本会議で、チョン候補者に対する任命同意案を票決で処理するものとみられる。
ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/992989.html
韓国語原文入力:2021-04-28 16:54
訳M.S
end