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ヤンジージャンプ・フェスティバル

基本はシュミ日記です。
…遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん…
  

今日は4/10。
毎月10日といえば、109シネマズの割引サービスデーだ!
というわけで、自宅近くの映画館へと足を運んだのでした。

では、本日1本目はこちらの作品です。

【あらすじ】
エマ・ドナヒューのベストセラー『部屋』を「ショート・ターム」のブリー・ラーソン主演で映画化した衝撃と感動のサスペンス・ドラマ。7年間もひとつの部屋に監禁されているヒロインと、その間に生まれ、部屋の中しか知らない5歳の息子が辿る予測不能の運命を描く。監督は「FRANK -フランク-」のレニー・アブラハムソン。
 5歳の誕生日を迎えたジャックは、狭い部屋に母親と2人で暮らしていた。外の景色は天窓から見える空だけ。母親からは部屋の外には何もないと教えられ、部屋の中が世界の全てだと信じていた。2人はある男によってこの部屋に監禁されていたのだった。しかし母親は真実を明かす決断をし、部屋の外には本物の広い世界があるのだとジャックに教える。そしてここから脱出するために、ついに行動を開始するのだったが…。

(allcinema onlineより)

いやいや、これは良い作品でしたよ。
2016年公開の映画、暫定1位!!!

原作は未読、事前にも作品の情報をほぼ入手していない状態で臨んだこともあって、これは衝撃的な出逢いでした!!



この後は多少のネタバレを含めて感想を書いていきます。
これから観に行く予定の方は読まずに劇場へ!!

決して楽しいだけの作品ではないし、重いテーマを扱っているのですが、観終わった後にはほんの少しだけ人生に希望を持てるような、そんな大傑作でした。

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というわけで、以下感想。




あらすじの通り、この作品はある人物に監禁された母子が主人公。

なので、きっと2人が犯人とどのように戦って、どうやってその部屋から脱出するか・・・とか、犯人が彼らを監禁することになった動機は何だったのか・・・といった過程を見せる、サスペンス作品なんだろうなぁ・・・・と思って観ていたら、作品の前半でわりとあっさり部屋から脱出!!!

まぁ、その脱出シーンの緊迫感がこの作品の一番のドキドキシーンだし、エンターテインメント映画的には一番楽しめるシーンではあるのだけれども、その後も作品はまだまだ続く。

ということで、この作品。
「閉ざされた部屋からの脱出劇」は、あくまでも第一幕といったところ。


そして、続く第二幕目は、2人が脱出後の世界。

母子2人はまずは病院へ。
そこで医師たちや、今は離れて暮らしている両親(祖父母)たちと対面するのですが、彼らのような、主人公母子を守ってくれる存在ですら、部屋の中の世界しか知らない5歳のジャックにとっては、初めて触れる「外の世界」にいる、脅威の存在。

あぁ、そうか。
我々にとって、相手が自分の敵か味方か・・・っていうのは、生まれてからどういう教育を受けてきたか・・・とか、その相手とどういう関係を築いてきたか・・・によるもので「医者だから」「祖父母だから」という理由で「彼らは味方である」と、無条件に思えるというのは、あくまでも後付けの知識なんだなぁ・・・と実感。
そして、幼い子供が限られた世界しか知らされずに生きてきた・・・という悲劇と、重大さを改めて思い知らされるのです。

しばらくして2人は退院し自宅へ。

そこで待ち受けるのは彼らの帰宅を、過剰に歓迎する近所の人たち。
そして、マスコミによる鳴りやまない取材交渉の電話のベルと、インターフォンの音・・・・・。

そんなわけで、何とか脱出した母子2人の、世間からの好奇心との闘いの日々がスタート。

この闘い。
戦う相手には悪意が無い分、そして、どうすれば勝利をおさめることができるのかが判らないだけに、第一幕の「閉ざされた部屋から外界への脱出」よりも過酷な闘いなのかもしれません。


そして続く第3幕。

7年間にも及ぶ監禁生活から脱出し、ようやく帰りついた外の世界は、かつて自分が慣れ親しんできた世界とは違う世界になってしまっていた・・・ってんで、すっかり疲弊して肉体と精神を病んでしまった母親。

一方、息子のジャックは、これまで自分の世界の中心だった母親からの愛情を渇望しつつも、初めて知った外の世界に順応して、居場所を見つけようとします。

外の世界からの、さまざまな情報を吸収し、立派な少年へと成長した彼が母親に提案したこと。
それは「あの部屋にお別れをしに行こう」というもの。

あのシーンがあんなにも感動的なのは、彼の想いが、彼のような特殊な幼年期を過ごした人間だけではなく、誰もがかつて味わったことのある想いと同じだったからなのではないか・・・と思います。


彼ほど極端ではないにせよ、僕らが生まれてから自我を持つまでの間に過ごす「世界」というのは、主に自分と母親。そして数人の知り合いしか存在しない世界。

しばらくはそんな小さな世界の中で、自分のルールに従って生きていればいいのだけれども、僕らが人として成長していくためには、外の世界にいる人々と付き合ったり、外の世界のルールに従ったりして生きて行かねばならないし、最終的には「自分だけの小さな世界」に別れを告げなければならない。

ジャックが「あの部屋」に別れを告げる姿は、幼いころの僕らが「自分だけの世界」に別れを告げた時の姿と重なるものがあるのでしょう。

そんな一面があるからこそ、この作品は多くの人の心をつかんで、アカデミー賞での受賞(主演女優賞)にもつながったのではないか・・・と思うのでした。

いやはや、本当に素晴らしい作品に出会えました。
これから先、折に触れて何度も観返したくなるであろう、
そんな作品でした!
(2016年4月10日 109シネマズ湘南にて鑑賞)