アーロと少年 (2D・日本語吹替版) | ヤンジージャンプ・フェスティバル

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基本はシュミ日記です。
…遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん…
  

もう何度も書いていますが、何しろ無類のピクサー・ファンである僕。
当然、今作についても公開の日を楽しみにしていたのでした。

では、まずはあらすじです。

【あらすじ】
「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」のディズニー/ピクサーが贈る感動ファンタジー・アドベンチャー。地球に隕石がぶつからず、恐竜が絶滅せずに進化した“もしも”の世界を舞台に、恐がりの恐竜と勇敢な人間の少年の出会いと奇跡の友情をハートウォーミングに描く。監督は短編「晴れ ときどき くもり」を手がけ、これが長編デビューのピーター・ソーン。
 弱虫で甘えん坊の恐竜アーロは激しい嵐に遭遇し、最愛の父を亡くしてしまう。ある時、失意のアーロは川に落ちてしまい、見知らぬ土地で目覚める。途方に暮れるアーロを救ったのは、彼が父の死の原因になったと恨みを抱く人間の少年だった。しかし少年はアーロの側を離れようとはせず、やがて彼もひとりぼっちなのだと気づくアーロ。少年をスポットと名付け、自分とは正反対に体は小さくとも勇敢な彼と少しずつ友情を育んでいく。そしてアーロはスポットと一緒に家族が待つ我が家を目指して大冒険へと旅立つのだったが…。

(allcinema onlineより)

まずは同時上映の短編『ボクのスーパーチーム』から。

この作品は、今作の監督であるインド系のサンジェイさんの幼い頃の出来事を基に作られた作品で、敬虔なヒンドゥー教信者であるサンジェイ氏の父と、ヒーロー物アニメに夢中なサンジェイ氏との対立と和解を描いたもの。

楽しみにしていたテレビの時間に、お祈りを強要された幼いサンジェイ氏が、祭壇の中にいるヒンドゥーの神々の姿にスーパーヒーローの面影を感じることで、神々について興味を持ち、父親の育ってきた文化的な背景を理解する・・・というストーリーなんだけれども、このあたり、子供の時に仏像の写真を見て「わぁ!怪獣(ってか、星人)みたいでカッコイイ!」と感じて興味を持った、幼き頃の自分とかぶるところがあって、なんとも懐かしい気持ちに。

これは是非とも長編作品として制作をすすめていってもらいたいものだなぁ、と思ったのでした。


というわけで短編作品の上映が終わり、いよいよ本編。

冒頭で映し出される川の流れは、思わず「これはCGアニメではなくて、実写映画なのではないか!?」と疑ってしまうほどのリアリティ!!

川以外も、今作は背景の映像がとにかくリアルで、また一つピクサーのCG技術がレベルアップした感じ。
本当に、どこまで進化を遂げるのやら、恐ろしくなるほどの素晴らしい映像でした。


ところが今作はストーリーがちょっと残念だったなぁ・・・・。

隕石が地球にぶつからなかったことで恐竜が絶滅せずに進化し、それもあって哺乳類や霊長類の進化が進まなかった・・・という設定はいかにも面白そうだったんだけれども、はっきり言って、ちょっとそれだけだったかなぁ・・・・と。

特に残念だったのは悪役や脇役のキャラとして登場する、肉食恐竜たちの設定の詰めの甘さ。

ピクサーの過去作では、悪役・脇役たちが今の性格になったのは何故か・・・を考え抜いて、その作品では表現されていない、過去に起こった出来事までもが感じられるような描き方をするのが定番だったと思うのだけれども、今作ではその辺が曖昧でしたし、もっと言うとストーリーに都合の良いようなキャラ設定をしたのかなぁ・・・とも感じてしまったり。

あとはアーロと少年がどの段階で、どういう理由で親しみを感じたか・・・がどこか適当で、気づいたら仲良くなって、気づいたら人生最良のパートナーになっていたような気が・・・・。

中盤~ラストのストーリー展開はとても面白くて、ちょっと感動的だったりもしたのだけれども、ふと作品を振り返ってみるとアタマの中に浮かぶ疑問符。
そして、そんな疑問符を全て(悪い方向に)吹き飛ばしたのは、エンドロールで流れる懐かしのヒット曲、Kiroroの「ベスト・フレンド」!!

作品の世界観に合うように配慮したのか、多少はワールド・ミュージックっぽくアレンジはされていたけれども、ここでkiroroが出てくるのはちょっと唐突でしたし、どこか取って付けたような感じ。
ここのところ、とにかく目立つようになってきた日本語版のみのテーマソングですが、作品の世界観と観終わった後の余韻をぶち壊してまでもやる意味って、いったいどこにあるのだろうか・・・と、心の底から思わずにはいられませんでした。


いや、Kiroroの曲は(好き嫌いはあるにしても)人気曲ですし、実際、観た人の感想レビューなどでも「Kiroroがよかった」という意見も散見されましたので、これはこれで、求めている人にとっては良いのでしょうが、それならば吹替版だけじゃなくて、字幕版を公開する劇場も増やしていただいて、観客側に選択させるのが筋なんじゃあないかなぁ?・・・と思うのだけれども、今作の字幕版上映館数の異常な少なさではそれもできない状況・・・・。

映画というものは、オープニングからエンドロールまでが一つの作品。

日本版独自の主題歌は、場合によっては作品を破壊し、観客から感動や余韻を奪い去る、強盗犯のようなもの。

映画上映前に流れる映像のように「No More! 映画強盗!」と、声高に叫びたくなってしまうような、そんな作品でした。
(2016年4月10日 109シネマズ湘南にて鑑賞)