次の目的地は大船駅からバスで10分ほど行ったところにある「田谷の大洞窟」。
ここは、鎌倉時代頃から江戸時代にかけて、真言密教の修行道場として使われていたところ。
全長1kmほどの洞窟の中には、至る所に仏像や全国の霊場の様子が彫られていて、ここに彫られた、四国、西国、秩父などの札所、胎蔵界、金剛界曼荼羅などをお参りすることにより、全国のそれらの場所を巡礼したのと同じご利益が得られる…とのこと。
そんな解説をエス氏から聞きつつも、どこか物見遊山的な気分があったことを、ここに告白しておきます…ごめんなさい…。
◆第5の目的地「田谷の大洞窟」~不思議のダンジョン~
だって、この洞窟ったら…。
こんな感じで「ロウソク一つで参拝する」っていうんですもの…
気分は「見仏師」というよりも「探検隊」という感じ。
脳内ジュークボックスでは「グーニーズ」とか「インディー・ジョーンズ」とか「ロード・オブ・ザ・リング」のテーマ曲が鳴り響いています。
ロウソクに火を点け…いよいよ冒険巡礼の旅のスタートです。
洞窟の中はひんやりと冷たい空気。
拝観ルートには小さな明かりが灯っているものの、そのままではあちらこちらに彫られている仏像の姿を観ることはできない。
そんな時にはロウソクの出番。
ロウソクの炎が消えないように、壁に彫られた仏像のご尊顔を観る…ってのは、やっぱりインディージョーンズ気分…。
そんなこんなで、キャアキャア言いながら(註:もちろん比喩表現です。実際にはかなり小さな声で喋ってました。)進んでいくうちに、次第に厳粛な気分になっている自分が…。
なんていうか、こんな空間を作り上げてしまった先人への崇敬の念…といったものが自然に湧き上がってくる…という感じ。
そうして、厳粛な気分で歩を進めていくうちに、ようやく見えてきた外界の光…。
少しだけほっとして、エス氏に話しかける。
「いやー、しかし誰にも会わなかったですね」
『そうだね。話している声はけっこう聞こえてきたけどね』
「やっぱ、壁に反響して、遠くの声も近くに聞こえるのですかね。」
『うん。そうかも。』
そんなことを話しながら、出入り口に置かれた傘立てから、二人分の傘を取って、外界へ……。
…ん
…………………傘立てには二人分の傘しか………
…………ないぞ…………。
ってことは、洞窟の中には二人しかいなかった……ってこと?
…………じゃ、じゃあ、中で聞こえたあの声は
「エスさん!傘、二人分しかないですよ!」
一瞬、顔を見合せて固まる二人。
いやいや、そんなはずは…。
と思いつつ、心配になり、出口付近の喫煙所でしばらく観察。
待つことしばし…………。
10分ほどして、ようやく一組のグループが出てくる。
ああ、よかった…。
緊張の糸がとけて、すっかりリラックスムードになってしまった、僕ら。
再びバスに乗り込んで、大船駅へと戻るのでした。