※宅建Tシリーズと「24年・基本テキスト」については「序章」をご覧ください。25年試験向けの基本テキストについては年末の記事を予定。

 

P:さて、今回は、抵当権者・設定者以外の第三者(複数の場合あり)がいた場合についてですね。

S:基本テキスト(24年版:124ページ~)では、

 ①抵当権のついた土地・建物の賃借人と、競売後の落札者との関係

 ②抵当権のついた土地・建物を抵当権設定者から買った人(第三取得者)と、抵当権者との関係

 ③土地のみに抵当権がついていた場合の、抵当権設定者(建物所有者)と土地競売後の落札者との関係

が紹介されています。今回は、①②の事例を確認してみましょう。

①抵当権のついた土地・建物の賃借人と、競売後の落札者との関係

P:アニメ・となりのトトロにでてくる「サツキとメイの家」みたいに、家をまるごとCが借りているケースで、家主のBの土地・建物が、競売にかけられてDが落札。

つまり家主がBからDへと変わったわけですが、もしDが賃借人Cに対して「立ち退いてくれ」と言った場合、Cは立ち退きを拒否できるか? ということですよね?

もし、筆者がCの立場だったら、あれ? Bとは3年間借りるの約束をしていて、まだ1年半だけど? と思うはずですが…。

S: そこが「競売」の特殊なところで、Dが新しい家主になった時点で、B・C間で結んだ賃貸借契約は終了します。

くわしくは、「賃借権」のところで触れますが、通常の賃貸借で、家主が賃借人に退去してもらうには、

 ・家賃滞納など、信頼関係がなくなった

 ・家主が自ら使うなどの「正当事由」

のどちらかが必要ですが、「競売」でDが新しい家主になったときは、「正当事由」がなくても、DはCへ立ち退いてくれと言えるんですよ。

ただし、A-B間で抵当権の設定登記をする前に、Cが不動産の引き渡しを受けている(占有している)か、賃借権の登記をしていれば、Dに対抗できます。

 

逆に、抵当権設定後に、賃貸契約を結んだのなら、「知ってて借りたんだよね?」ということで、保護されないというわけです。

ふつうは、入居前に、物件を管理する管理会社等が「抵当権付き~」と、説明してくれるはずですから ※補足1

P: 筆者も、もし新しい部屋へ引っ越しをするときは、要注意ですね!

 

S: ただし、実際には、賃貸マンション・アパートのオーナーが金融機関に借金して、マンション・アパートを建てることはよくあります。そして、金融機関が「競売」までするケースはあまり多くないので、心配しすぎない方がいいですよ!

 

 

そして、競売手続きの開始前から住んでいた賃借人は、万一、立ち退きを迫られても、6か月の猶予があります。

民法395条1項

『抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
 ① 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
 ② 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者』

ただし、これは「明け渡し」を猶予されているだけで、6か月間、引き続き家賃を支払って、住み続けられるわけではないんですよ。

ちなみに、宅建試験の過去問では、22年の問4・肢2

で、「土地」での引っ掛け? 問題が出題されています。

他の肢についてものちほどふれますが、先に下記の解説記事で、チェックしておくとよいでしょう。

ちなみに、競売以外の手段(たとえば任意売却)でDが新オーナーになったときは、賃借人Cに395条の猶予はありません。

 

②抵当権のついた土地・建物を抵当権設定者から買った人(第三取得者)と、抵当権者との関係

P: この関係の方が、①よりシンプルですね。

要するに、Eは抵当権が付いた不動産を、Bから購入したと。

S: そうです。

宅建07(所有権移転登記)で、二重譲渡の対抗問題を取り上げましたが、今回のケースでも抵当権設定登記(AB間)と、所有権移転登記(BE間)の先後が重要です。

抵当権設定登記の方が先なら、Pくんの言ったとおり、Eは抵当権が設定されていることを承知のうえで、Bから不動産を買ったわけですからね。

P: 筆者だったら、抵当権のついた不動産を買う気にはなれませんが…。

S: 前回も話題にした、「住宅ローン」は抵当権といわばセットなので、なんらかの事情で「住宅ローン」が残った不動産が売りに出されることは珍しくありません。

が、その場合は、いったん売主が買主からの売却代金で「住宅ローン」を一括返済して抵当権を抹消してから、不動産を引き渡すことが多いようです。

https://o-uccino.com/front/articles/54545

Pくんは、将来の中古マンション(新築は高そうなので)購入も視野に入れ始めたみたいですが、Pくんが買うときに、あらためて住宅ローンをくんだときは、当然、抵当権が設定されます。

P: 中古マンションでも、たぶん全額キャッシュでの購入はきついでしょうね…。

S:基本テキスト(24年版)126ページに、抵当権付きの不動産を買ったE(第三取得者)のような立場の人を保護する手段として、次の3つが掲載されています。

 ① 第三者弁済

 ② 抵当権消滅請求

 ③ 自ら競落

P:①の第三者弁済は、宅建23で、民法474条
『①債務の弁済は、第三者もすることができる。
 ②弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。(後略)

を紹介してましたよね。

S:そうです。

今回のEは「正当な利益を有する者」なので、第三者弁済ができるわけです。

Eは、弁済したお金を債務者に、請求できます。

そして、②の抵当権消滅請求は、

民法第379条
『抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。』

民法383条

『抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。(後略)』

のような条文があります。

383条は、細かい手続きの規定なので、詳細は省きましたが、要するに「抵当不動産の第三取得者(今回はE)」は、書面で、抵当権者(登記した者。今回はAですが、後順位の者がいれば、全員)に、書面で「○○の代価を支払うから、抵当権を消滅させてくれ」と請求し、もし2か月以内にAが競売の申し立て(抵当権の実行)をしなければ、Eの提案をOKしたものとみなされます。

民法口語化(2004年)の前には「滌除(てきじょ)」と呼ばれた制度がありました。※補足2

 

P: 「滌除」って…漢文でも見覚えないし、このブログをやってなければ、おそらく縁のない言葉でしたね!

S: そして、③は、抵当権者Aが、Eが購入した抵当権付きの不動産の抵当権を実行した=競売にかけたときに、E自らが落札する方法で、

民法390条に
『抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。』

とあります。

P: 購入した不動産を、わざわざまた落札するんですか?
S: 一般の住宅取引ではあまりないと思いますが、バブルの名残の「越後湯沢のリゾートマンション」などでは、「1万円落札」も珍しくないそうなので、わけあり物件購入代金+落札金額 < 相場 なら、買おうと思う人もいると。

 

 

ここまでの説明で、先にあげた宅建試験2022年問4の残り(肢1・4)も回答できると思います。

P: 肢1は、第三者弁済(○)。ただ、肢4は、土地を買い受けたBが、そもそも「債務者」なので、Bは「第三取得者」といえるのか? 迷いました。

S: Pくんが迷ったところが、ここも肢2と同様、「ひっかけ」(債務者や保証人は、「第三取得者」とはいえない)の部分で、試験会場だととっさに判断できない人が多かったと思います。

下記の記事が分かりやすかったので、参考にしてください。

 

 

P:上記・問4の肢3については、次回「法定地上権・一括競売」で触れる予定です。

次回からは、25年の新・基本テキストでリスタートなので、その新テキストの紹介もかねるそうで。

S:あっという間に12月下旬になり、書店で実際にいろいろな本を見比べた結果、

 

を購入しました。

くわしくは、次回。

 

【補足】

※1 基本テキスト(24年版) 宅建業法の81ページに、重要事項の説明項目・「登記された権利の種類・内容」で、抵当権については、たとえ「近々抹消される予定でも説明」と赤色文字で強調されています。

※2 「滌除」と「抵当権消滅請求」の違いは ↓ 

 

【BGM】

S選曲:EXILE Liveバージョン「WON'T BE LONG」
P選曲:-真天地開闢集団-ジグザグ ライブMV 「五月ノ雪」

【写真】先頭:提供Pixabay、中間・末尾(千代田区・行幸通り) 筆者