※以下は、2020年卒まで対象の記事です。2021年卒予定(2018年現在、学部2年生で学士で就職予定)は、18年9月速報記事のとおり、夏の短期インターンシップ=事実上の会社説明会 になる可能性があります。じゃあ、何時から企業研究をはじめればいいの? この点は、別途記事を追加しています(文末)。
 
3-1  学部3年生でも「当事者意識」があれば、挑戦の価値あり
今回の記事は、以前に書いた「工学部Zくん 理系で大学3年のインターンシップは必要か?」 という疑問への、現時点でのアンサーです。
結論として、修士進学予定の学生にとって、絶対必要とはいえません(理系学卒については、●3-4)。
しかし、あくまで
  学業(単位) >>> イン活(●3-2でも触れます)
という前提で、挑戦してみる価値は十分あると思います。
というのは、今年以降の、「企業が採用したい人材のキーワード」として
  強い当事者意識をもつ
があげられます。
典型は、就活・インターンシップサイト「リクナビ」の運営もしているリクルート※1 グループ 。就活サイトのライバル「マイナビ」が、「AIを使ったエントリーシート(ES)判定サービスを本格稼働予定」という話題は以前紹介しました。
グループ会社のうち「リクルートホールディングス」では、2016年度のIT人材採用から、書類選考業務にAIを導入し、16年度の検証結果では、人事担当者との一致度(正しい評価が出せた精度)は95%だったそうです。
そして、2017年度はESの自由記述欄の内容を分析し、「強い当事者意識をもって行動できる人物か? 」の判定機能を加えたそうです。
「強い当事者意識」だと、漠然としていますが、別の記事※2 で、ソニーの採用部統括部長が、やはり「当事者意識を持っているかを重視する」それは、
 ・自分の頭でしっかり状況を理解し、考えた上で、アクションを起こしているかどうか?
つまり、オリジナルな「異見」を言えるかどうか?であると、話されています。
学卒予定の文系/理系3年生が、「強い当事者意識」をもつのは当然ですが、修士6年前提の理工系3年生が、「強い当事者意識」をもてるのか? この点は、最終章で、また書きます。
以下、
●3-2 で、2017年夏、首都圏国公立大学・理工系学部3年生Zくんが、実際に理系インターンシップに挑戦した反省まとめ。
●3-3 筆者の「反省」
●3-4 日経産業新聞が、8月31日の一面トップに掲載した「就業体験 もはや前哨戦」の記事(以下、★)の内容をまじえて、2019年卒向け・秋冬インターンシップの動向
●3-5 これからの、理系学部3年インターンシップは?

●3-2 工学部3年・Zくんの反省
【おさらい】過去の記事 0-1~2-4を読んだ方は、飛ばしてください。
・そもそも理系インターンシップとは? →本記事では、「理系限定、5日~15日くらいの日程で、職場体験(工場、事業所、研究所)するタイプ」を指します
・Zくんの応募結果
上記、理工系学部3年生・Zくんの応募結果は、5社(すべて、売上高1兆円超の国内企業かグローバル企業の日本法人)に応募。
エントリーシート(ES)通過2社。
面接は、「経験値不足で惨敗!! 」で終了。

Zくんの反省(PDCAのC)は、
【メリット】
・エントリーシート(とくに志望動機)を書く過程で、4年生からの「研究室選択」や「研究テーマ」について深く考えることができた
・応募企業を選択する過程で、いろいろな企業のHPを見て、こんな業務もあるんだという発見があった。視野が拡がった。
自分の弱点(面接)が分かった。これが、修士1年(就活本番)だったらと思うと…。
【デメリット】
・空き時間(1単位再履修したつもりの時間)で、インターンシップへの応募をするつもりだったが、時間がついオーバーして、勉強時間にしわよせ
中間試験で1科目、「黄色信号」の得点の科目があった。なんとか期末試験で帳尻をあわせた※3 が、学部3年生の場合は、日々のレポートもあり、時間配分は、けっこう難しいと思う。
ちなみに、インターンシップに参加できなかったZくんの、今年の夏バイトは、1日(8時間勤務)で、1万円超の収入。もし、3週間のインターンシップに行っていたら、最大15万円の減収だったわけです。自宅通学でお小遣いがかせげれば良いZくんは「デメリット」に挙げてませんでしたが、夏バイトを生活費の足しにする必要がある方は、長期インターンは無理です。
 
●3-3 筆者の反省? 名前を知らなかった企業に限る」を条件に追加すべきだった
Zくんには、事前に、インターンシップ応募企業について、「学科の就職先の王道(たとえば、都市開発専攻で建設会社とか)以外の会社を考えたら?」と、アドバイスしていました。
たとえば、信州大学の工学部(学士)の場合、学科別の主な就職先が一覧できるページがあり、

http://eng_shien.shinshu-u.ac.jp/shushoku/gakubusei(2009-2013).html

建築学科だと、○○建設、機械システムだと、○○製作所など、違いがはっきりしています。

先輩のいる会社については、修士1年になればOBルートでいろいろ聞けますから、学部3年の段階では、「選択肢」をひろげる活動をしてほしいと思ったわけです。

Zくんは、50社くらい調べて、10社くらいにプレエントリー、5社に応募しました。
この5社、「すべて、売上高1兆円超の国内企業かグローバル企業の日本法人」と、前に書きましたが、もう一つ「Zくんでも名前を知っていそうな有名企業か、業界の有力企業」、つまり、「Zくんがすでに名前を(なんとなくだけど)知っていた企業」という共通点があります。
9月初旬時点で、マイナビ(インターンシップ募集)に掲載の企業が約4000社。理系対象インターンシップ掲載企業だけでも2500社以上ありますので、「企業を調べる」だけでも大変だとは思いますけど、「みんなが知っている企業」には、応募が殺到するので、理系学部3年の場合は、「勝率」を上げる意味でも、「知名度はないけどスゴイ企業」を探す努力をしてみてください。
たとえば、「新光電気工業」は長野市が本社ですが、「半導体パッケージ」では、世界最高レベルの技術力をもっています。

こういう、「企業の探し方(理工系向け)」については、2019年5月の記事で、具体的に書きました(あくまで、例です)。
 
 
●3-4 「就業体験 もはや前哨戦」 2019年卒向け・秋冬インターンシップは?
日経産業新聞(★)が、7月末~8月に、2019年卒予定の首都圏の大学生・大学院生135人に調査した結果では、約70%が夏インターンシップに参加予定。「参加しない」(約27%)うちの約30%も「選考で落ちた」ということですから、国公私立・文系理系全学部対象のデータではありますが、約80%の首都圏の大学生が、イン活をしたことになります。
ただし、実質企業説明会の1dayインターンシップ、先着順(書類選考等なし)なども含んだ数字です。ちなみに、「参加予定」のインターンの日数(複数回答)では、「2~5日」が72%、1dayが41%ほか。
上のデータだけでは、理系の長期インターンシップについての傾向は、はっきりしませんが、記事(★)では、
企業が前のめりになれば、参加する学生もインターンシップ活動を就職活動の「前哨戦」ととらえるようになる』
とあり、夏季インターンシップよりもさらに、文系学卒、理系学・院卒予定者の秋冬インターンシップへのなだれ込みが、今年は起きる可能性があります。
 
●3-5 これからの、理系学部3年インターンシップは?
上記●3-4のような、秋冬インターンシップの実質「プレ就活」化が進むとすると、2019年学部卒(予定)だけれど、就職予定ではない理工系学部3年はどうなるのか? 
Zくんは、夏インターンシップのESの「志望動機」に、堂々と「修士での研究(予定)構想」を書いて2社通りましたが、秋冬は、企業の方も就職予定者の「囲い込み」を優先して、学部3年はさらに、不利になるかもしれません。

ただし、●3-3で触れた「実力の割に、名前を知られていない企業」(ものづくり系にはけっこう多いです)や、業種が理系学生の「専攻」と違うので採用が難しい(製薬会社で電気系とか)場合は、インターンシップで「理工系学部3年生」にアプローチして、「名前を知ってもらう」戦略がとれますので、ぜひそういう企業のみなさんには、「(修士卒予定)理工系学部3年生歓迎」のプログラムも用意していただきたいものです。

たとえば、コクヨ・サッポロビール・古河電工など異業種5社が相乗りで、7日間のプログラムを行ったようで、このタイプを増やすとかね。

https://unistyleinc.com/topics/2698

 

逆に、理工系学生の場合は、

A:これからのAI選考に負けないESを書くには、「異見」を言えるかどうか? ※4

がポイントになりますので、
B;その前提として、オリジナルな「研究テーマ」を、考え抜くことができるか? 
C:さらに、その前提として、学部3年で、Zくんのように、企業研究を卒論テーマ選びのヒントにいろいろ考えることもできます。※5
時間順で並べると、
 大学入学→2年間の基礎勉強→C;【学部3年】→B:卒論・修論→A:就活(就職)
で、学部3年で、「教えてもらう」と、「自分で調べて考える」の比重が逆転する感じですね、
レポート大変でしょうけれど、余力があれば、企業について調べてほしいというのは、こういう能動的な探索が、就活本番でも、就職後も役に立つからです。
 
■2018年9月 追記;2021年卒予定の2019年夏インターンシップと、2020年就活は要注意です! なぜかって? ⇒就活ルールが変わる? 第1報
■2017年夏に、学部3年でインターンシップに挑戦したZくんの「2年後」(2019年夏)
3年生でたとえ全敗ても、その経験と、2年間の「臥薪嘗胆」で、2021年卒以降の「就活ルール撤廃=就活戦国時代」を闘う力がついているはずです。
 
※1 日経産業新聞 2017年8月25日 2面「リクルート 働き方改革 下」
※2 日経産業新聞 2017年6月15日 19面「採用最前線 2018 ソニー」
※3 Zくんについて補足しておくと、工学系学部3年前期まで、「落とした単位ゼロ」を継続中。当ブログ・工学部Zくんシリーズは、おもにZくんの‘単位との闘い’と、‘アルバイト探し’を記録してきました。
※4 昨日(9月2日の読売新聞に、「カシオ G-SHOCK 1億本」の記事が出ていました。開発秘話は ↓ 

http://bizmakoto.jp/style/articles/1210/22/news119.html

※5 学部のある先生からは、「20年先、○○のコストが100分の1になった場合を考えて、研究テーマを考えよ。安易に‘機械学習’とかに走るな」とも言われたそうですがーーーこれは、学部3年末の「研究室選び」に向けての布石(牽制)かも。

BGM: 山下達郎 「スパークル」
写真提供:Pixabay