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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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以下本文となります。
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バイオマテリアルに関する論文の紹介になります。
Tailoring biomaterials for skin anti-aging
2024年の論文です。
前回の続きです。
他のアンチエイジング物質
- アンチエイジング治療では、他の成分を加えることで治療効果を高めることが可能である。 Table 2 は、各種アンチエイジング成分およびそれらをバイオマテリアルと併用した際のメリットとデメリットを比較したものである。
- 幹細胞は、老化した組織・臓器の若返りを促進する重要な役割を担い、老化または損傷した細胞を新しい機能的な細胞で補充する。さらに、成長因子やサイトカインの分泌を通じて、標的部位においてパラクリン作用による抗炎症および抗アポトーシス効果を発揮することが知られている 。
Taubらは、毛包内の特定の幹細胞が、好中球の損傷によるディフェンシン(ペプチド)放出により活性化されると、新たなケラチノサイトを生成できることを明らかにし、皮膚のリジュビネーションのための新しい治療戦略としての可能性を示した 。
Zhongらは、真皮の多能性幹細胞がP38/MAPKおよびTGF-β/Smadシグナル経路を活性化することで、線維芽細胞によるコラーゲンやエラスチンの分泌を促進する可能性を示した。これによりECMの成長が促進され、しわの軽減や肌の弾力性の改善につながると考えられる。
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幹細胞治療は、再生医療における大きな可能性を秘めているものの、臨床応用には依然として課題が多い。具体的には、移植細胞の生存率や分化能が最適化されていない点や、細胞供給源の選定、幹細胞の取り扱いの複雑さ、さらに治療プロトコルの確立が困難であること等が挙げられる。
このような課題に対応するため、複合材料であるバイオマテリアルが注目されている。つまり生体内の微小環境を模倣し、幹細胞に接着部位を提供することで、細胞の増殖、分化、移動を支援することが可能である。Nowackiらは、脂肪由来幹細胞(ADSCs)をヒアルロン酸(HA)あるいは魚由来コラーゲンと組み合わせ、これらをラットモデルに注入し、対照群と比較した。結果、ADSCsを移植された群では、充填効果が顕著で、治療効果の持続時間も長いことが示され、いずれの群でも炎症反応は観察されなかった。この結果は、ADSCsとHAを組み合わせたフィラーの安全性と有効性を裏付けるものである。
さらに、Altmanらは、動物由来でない安定化ヒアルロン酸とヒトADSCsを組み合わせたフィラーが、光老化マウスモデルでプロコラーゲンの発現を増加させ、3週間後には持続的な体積増加と線維血管ネットワーク形成を達成することを確認した。これは、当該複合フィラーがしわ改善に効果がある可能性を示している。
Exosomes
- 老化した線維芽細胞は、活性酸素種(ROS)やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)を産生し、これが皮膚の老化を引き起こす。しかし、エクソソームはMAPK、AKT、STAT3、ERK1/2シグナル伝達経路を活性化し、線維芽細胞の増殖と移動を促進することで、UVBによる老化現象を修復する作用を有する。
さらに、エクソソームはMMPの発現を減少させ、コラーゲンおよびエラスチンの産生を増加させることが示されている 。
- これらの進展にもかかわらず、エクソソーム療法を臨床応用する上では多くの課題が残されている。たとえば、エクソソームの分離、精製、大規模生産には高額な費用がかかるだけでなく、その輸送や保存も−80°Cという低温で行う必要がある 。さらに、エクソソームは血中から急速に排除されるうえ、損傷部位では保持が困難であり、その治療効果が制限される 。また、エクソソームは皮膚の角質層での浸透性と吸収率が低い。
- これらの課題を解決するために、エクソソームベースの治療にバイオエンジニアリング技術を導入することが期待されている。近年では、エクソソーム治療とバイオマテリアルを組み合わせる研究が注目を集めており、これらの研究は徐放型ドラッグデリバリーシステムを構築することを目的としている。
結果、エクソソームスキャフォールドの耐久性と安定性が向上し、治療効果を最大化する可能性が示されている 。また、前述のように、ハイドロゲルはその多機能性が評価され、注目を集めており、
Nooshabadiらは、エクソソームを添加したキトサン–グリセロールハイドロゲルを皮膚創傷ドレッシングおよび皮膚組織再生の効果的なスキャフォールドとして研究した 。この組み合わせはエクソソームの生体適合性を大幅に改善した。
Liuらは、脂肪由来幹細胞(ADSCs)のエクソソームをヒアルロン酸(HA)と組み合わせた複合材料が、創傷治癒の促進や線維芽細胞の活性化、再上皮化、血管新生を顕著に促し、老化した皮膚でのコラーゲン再生としわ抑制に寄与する可能性を示した。
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成長因子は皮膚の健康維持に不可欠であり、その濃度低下は皮膚老化に直結する 。酸化ストレスにより、コラーゲンやエラスチンの減少、ECM再生の低下が生じるが、成長因子の外用がこれらの老化プロセスを改善する可能性が指摘されている 。
しかし、成長因子治療の臨床応用には、安全性やコストパフォーマンスに課題があり、最適化、さらには標的化されたデリバリーシステムが求められる。このようなシステムにおいては、特に成長因子とECMの複合により、成長因子シグナル分子の適切な放出や受容体のシグナル伝達を調節することが可能となる。
実例として、HAと成長因子を含む製剤が目元のしわを有意に改善したり 、キトサンクロスリンクコラーゲンスポンジ(CCCS)と成長因子の組み合わせがTGF-β1およびコラーゲンの産生を促進して、皮膚再生を加速することが示されている。
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抗酸化物質は、ROSによる細胞老化や損傷を抑制する重要な役割を果たし、ビタミンC、ビタミンE、エピガロカテキンガレート(EGCG)等の天然化合物が老化抑制効果を持つことが知られている 。しかし、安定性の低さが治療に用いる際の課題となっており、バイオマテリアルとの複合(抗酸化物質の浸透性や安定性が向上し、老化抑制効果が高まるとされる)による解決が期待されている 。
具体的には、シルクバイオマテリアルとクルクミンを複合することで、細胞老化関連遺伝子の発現を抑制し 、また、HAゲルと抗酸化物質の複合により線維芽細胞の増殖やコラーゲン産生を促進した 。さらに、ビタミンCやEGCGを含むシルクタンパク質が抗酸化物質の安定性を向上させることが示されている 。臨床試験では、HAと抗酸化複合体(minerals, vitamins and amino acids) が、皮膚の水分量、皮膚の明度、色素沈着等を統計学的に有意に改善した。
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本レビューでは、皮膚老化のメカニズムを解明し、天然および合成ポリマー、無機バイオマテリアルの生物学的効果や作用メカニズムを分析し、アンチエイジング分野での可能性を検討した。
しかし、バイオマテリアルの応用には、生物学的適合性の確保、技術的改良、高コストの克服、厳格な規制遵守といった課題が依然として存在する。バイオマテリアルは拒絶反応を回避しながら細胞の成長・分化を促進し、特定の治療効果を発揮する能力が求められる 。技術的には、生体適合性や分解性を向上させる設計が求められるほか、用途に応じた形状や構造に対応する製造技術が課題となる。これらの課題に対応するため、物理的・化学的特性の最適化や規制機関のガイドライン整備が進行中であり、政府や研究機関の協力によるコスト削減も図られている。
将来的に、科学技術の進歩とともに、アンチエイジング分野でのバイオマテリアルの応用範囲はさらに拡大し、美容医療業界に新たな発展をもたらすと考えられえる。
今後の研究について、皮膚老化メカニズムのさらなる解明、新規バイオマテリアルの開発、臨床研究の充実を通じ、より効果的な老化対策が実現することが期待される。
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