10月5日、ロイヤルオペラハウスのTristan und Isoldeを観に行きました。5時開始なので半日休暇取ったのですが、忙しいので4時過ぎまで残業。


どんなお話かは→こちら でどうぞ。一言で言うと、惚れ薬を飲んで色情狂になった不倫カップルの猥褻行為と発覚後のなりゆき。


家舞台とセット椅子


新プロダクションは初日を狙うのですが、忙しい時期の9月29日に休暇は取れず、3日目に行ったのですが、これが幸いして、ちゃんと正しい側に座ることができました。

初日を観た知り合いが、アクションが左側に偏っているので右側だったら何も見えないよ、と教えてくれたんですが、私の席はストールサークルの2列目の舞台袖という正に最悪の位置じゃないですか!一回しか行けないから65ポンドも奮発したのに、そりゃあんまりだわと憤慨してネットで逆側の席を探したら、ずっと売り切れ状態だったのに運よくほぼ反対側のストールサークルがリターンされてたので即ゲット(同じく65ポンド)ニコニコ ラッキー!


しかし、席については後日談があり、公演の2日前になってROHが電話で反対側の席をオファーしてくれました。私が移った席から3つ舞台に近い上に15ポンドも安い当日券の席。チェッ、知らずに待ってればよかった。


そんなわけで私はいずれにしてもちゃんと観られたのですが、ほとんどの人はそのまま左側に座ったわけで、その人たちの顔が見える私は気の毒でたまりませんでした。ROHも申し訳なく思ったのでしょう、せめてもの償いをと左側の席の人には一部払い戻しされたようです(おそらく3割)。


でもいくら少しお金返してくれたって嫌な人は我慢できないでしょうから、その日の開演前の切符売り場は誰かに切符を買って貰いたい人でごった返すという異様な光景でした。いつもはリターン待ちの人だけ整然と並んでるのに。


舞台写真をアップしますので、どんな舞台だったかまずご覧下さい。

オペラ三昧イン・ロンドン   オペラ三昧イン・ロンドン

オペラ三昧イン・ロンドン    オペラ三昧イン・ロンドン

タリックなグレーの壁に張り付いて演じる場面が多かったのですが、問題は壁の位置で、これが正面だったらいいのですが、左側にあるので、馬蹄形のオペラハウスの左側の人にはほとんど見えません。


右側にいた私はそのおかげでよく見えたわけですが、猛烈に腹が立ちましたプンプン 


奇をてらってヘンテコなことを考えるのが演出家の仕事でしょうけど、こんなのを許すオペラハウス側にです。演出家に任せた限りは芸術面では口を挟むことはできないでしょうし、しない方がいいですが、ちょっとテーブルや椅子の位置をずらせばいいだけの話なのに、それすらできないなんて。


最初から見えない人がたくさんいることを承知の上でよくこんなセットを作るなんて、観客をなんだと思ってるわけ?ROHは野外中継をしたりサン紙まで引き込んでオペラの大衆化を図っている筈なのに、それに全く相反するこんな新プロダクションをすぐ後に持ってくるなんて、やっぱりあのオファーはゼスチャーだけで本当の意図は別だとしか思えないですね。
オペラ三昧イン・ロンドン
しかし、それならそれで構わないどころか興味のない人をら無理に引っ張ってこなくてもいいのにと思ってる私ですら憤慨させたこの舞台、船もお城も出てこないし現代衣装なのは受け入れますが、この隅っこアクションはゆるせません。但し、受け入れると云っても、ついこないだルル(→こちら )で観たばかりの同じ演出家のそっくりなプロダクションをこんなにすぐに見せらるのは辟易ですむっ


初日は当然演出家に対してはブーイングの嵐だったようですが、ブーイングされるのを注目されて知名度が上がると勘違いしてませんか、Christof Loyって奴。ルルは結構好きでしたが、今回は殴ってやりたいですパンチ!    


オペラ三昧イン・ロンドン    オペラ三昧イン・ロンドン


オペラ三昧イン・ロンドン
Composer Richard Wagner
Director Christof Loy
Designs Johannes Leiacker
Conductor Antonio Pappano
Tristan Ben Heppner
King Marke John Tomlinson
Isolde Nina Stemme
Kurwenal Michael Volle
Brangäne Sophie Koch
Melot Richard Berkeley Steele
Sailor Ji-Min Park
Steersman Dawid Kimberg
Shepherd Ryland Davies



オペラ三昧イン・ロンドン


カラオケパフォーマンス

女の子イゾルデ

これでパフォーマンスが悪かったら目も当てられませんが、イゾルデの素晴らしさが全てを救ってくれましたニーナ・シュテンメが歌ってる間は、「オペラは歌唱が全て、セットや衣装なんて全くどうでもいいわ」と腹立ちもどこかに吹っ飛んだくらい。


彼女はROH2度目のお目見えで、3年前の仮面舞踏会(→こちら )は充分素晴らしかったものの高音に問題があったので特に凄い人だとは思わなかったけど、今回は大感激。何人か聴いたイゾルデの中でもベストで、2月にスカラ座で素晴らしかったマイヤー(→こちら )よりも私は好き。全ての批評でべた褒めされてますが、本当に素晴らしいイゾルデで、彼女が出てる間は居眠りもせず長いとも感じずただうっとりラブラブ!

オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン

    アップ               ダウン                  クラッカー クラッカー クラッカー


オペラ三昧イン・ロンドン
男の子トリスタン


あんな素晴らしいイゾルデに相手役がこんなトリスタンだなんて・・・、

ベン・ヘップナーと知ってからずっとオペラ仲間と彼が病気にでもなってキャンセルしますようにと祈っていたのですが、呪いは通じず、ヨロヨロとベン・ヘップナーが登場。足の悪いトリスタンって設定かしら?それともリューマチで苦しむトリスタン? 歩くのも困難なくらいなら、無理して長い舞台に立たなくてもいいのに。 


でも、あら、ちょっと痩せたわねって、私はデブの中年だって知ってるからいいけど、颯爽とした若い二枚目を期待してた人はさぞがっかりしたでしょう。やっぱりトリスタン歌手が魅力的だとラブシーンもぐっと盛り上がるけど、ベン・ヘップナーではねえ・・・


歌さえよければルックスは無視しないとやっていけないオペラですが、肝心の歌は、まあベン・ヘップナーですから、ベン・ヘップナーでしたよ。張り上げるはずの声がひっくり返ることは上手な人でも時々あるのですが、今日のヘップナーのように途中で急に数秒間ヘナヘナになる歌唱って初めて。プシューって空気が抜けたみたい。


でも、予想よりはかなりましだったので、安心しました。トゥーランドットで声量がなくて声が聞こえないくらいだったのに比べれば(→こちら )、今日は一応聞こえたし、時折かつての栄光の片鱗を感じさせる瞬間もあり、ヘップナーとしては好調だったにちがいないです。


立派なシュテンメと年食ったトリスタンを観ていたら、映画「スター誕生」をつい思い浮かべてしまいました。古くはジュディ・ガーランドとジェームス・メイスン、リメイクはBストライサンドとCクリストファーソンのコンビで、落ちぶれたかつての男性スターと日の出の勢いで人気実力ともに一線に踊りでた女性歌手の物語です。



ヒツジその他

ソフィ・コッホは一枚看板で客が呼べるくらいの人ですから、さすがに上手で、すらっと美しいイゾルデの侍女ブランゲーネでした。

トリスタンの召使のミヒャエル・ヴォッレはジャック・ニコルソンを大きくしたような風貌で、ばりっとした服装も格好良すぎてクルヴェナル役には立派過ぎ。ルルと丸っきり同じいでたちだったのでイメージが邪魔した一因でしょうけど。でも余裕があって上手いし存在感もあり、彼が出ると舞台が引き締まります。


威厳はあるし文句の付け様のないジョン・トムリンソンのマルケ王だけど、ROHに出過ぎて飽きたので、当初予定のサルミネンで聴きたかったです。今回、サルミネンが何回かキャンセルした代役がトムリンソンで、私が行った日もそうだったんです。

サー・ジョン殿(=トムリンソン)、ROHの代役を一手に引き受けて頂くのは大変ありがたいことなのではありますが、貴方ほどの方はもっと世界中で広く聴いてもらうべきですので、他所でまだその素晴らしい低音を聴いたことがない人にご披露してあげて下さいませ。


ワグナーが得意のパッパーノ指揮のオケは予想通り安定して聴け、シュテンメが病欠してもこれだけは大丈夫でしょう。



はてなマーク

以前のトリスタンとイゾルデは、青い箱に入ってるトリスタンと赤い箱のイゾルデは愛を交わすシーンでも数メートル離れたままというひどいもので、いくらなんでもあれよりはましだろうと思ったのに、この始末。特にこの新プロダクションは明らかな問題もあるわけですから、果たして次回があるのでしょうか? あるとしたら椅子とテーブルを少しはずらしてくれるんでしょうか?

                                           人気ブログランキング 口紅