オペラ三昧イン・ロンドン

6月8日と10日の2回、ロイヤルオペラハウスにアルバン・ベルグのLuluを観に行きました。


19.37年初演のこのオペラ、20世紀の傑作とされてますが、演じるのも観るのも難しい作品で、歌手はよくあんなメロディを覚えられることだわと感心してしまう前衛さです。


随分前に一度だけテレビで観たことがあり(ルルはCシェーファー)、うへ~っ、二度と観たくないわと思ったし、同じベルグのこれまた名作と言われるウォツェックなんてROHで聴いたら頭痛がしたくらいなので、今回のルルも果たして最後まで我慢して観られるかしらと不安でした。同じように思った人が多かったのでしょうか、値段の安い設定だったのにも拘わらず、切符の売れ行きはすごく悪くて、ROHも往生こいたに違いないです。


毛嫌いしてるのに早くから2回分押さえておいたのは、お目当てのクラウス・フロリアン・フォークトが休んだ場合の予備でしたが、結論から言うと、とても楽しめました。苦手だったこの手のオペラも場数を踏んで慣れたおかげで理解できるようになったことと、パフォーマンスが素晴らしかったことの両方でしょう。

オペラ三昧イン・ロンドン
Composer Alban Berg
Designs Herbert Murauer
Director Christof Loy


ConductorAntonio Pappano
Lulu Agneta Eichenholz
Countess Geschwitz Jennifer Larmore
Dr Schön / Jack the Ripper Michael Volle
Alwa Klaus Florian Vogt
Schigolch Gwynne Howell
Animal Trainer / Athlete Peter Rose
Dresser / Schoolboy / Groom Heather Shipp
Prince / Manservant / Marquis Philip Langridge
Mother Frances McCafferty
Painter / Negro Will Hartmann
Professor of Medicine Jeremy White
15 year-old Girl Simona Mihai
Lady Artist Monika-Evelin Liiv

Journalist Kostas Smoriginas
Manservant Vuyani Mlinde




  
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本ストーリー


まず、どんなお話かと言うと、凄くドラマチックな女の栄枯盛衰です。

あらゆる男を惹きつけて破壊する魔性の女ルルは、男出入りが原因で二人の夫を死なせ(心臓マヒと自殺)、やっと結婚した最愛の男を射殺、ブタ箱に入るがレズ女の手助けで脱獄。恐喝されて、ベルリンからパリ、ロンドンと逃れ娼婦に身と落とし、切り裂きジャックに惨殺される。


ひょえ~っ汗、壮絶!女も綺麗過ぎてこれだけもてると大変そうだから、並でいいわと思っちゃいますね。



オペラ三昧イン・ロンドン

家セットと衣装


どの批評もボロくそだったように、私もいくらなんでもこれはあんまり、と思いました。、初めて本格的に観るオペラなのに、いきなり凄い変化球を投げられたので面食らっちゃいました。


だって、全てこちらの想像力で補わなければならないミニマリズムの極みなんですもん。すっきりと何もない舞台が結構好きな私だけど、これは行き過ぎで、これはどういう場面で何をやっているんだろうか、と考えなきゃいけなくて、疲れました。台詞は直接的ではないので、字幕を読んでもさっぱりだったし。


オペラ三昧イン・ロンドン
フェロモン発散女ルルの上昇と没落という、境遇の変化がミソの内容なのに、全編セットは全く変わらず、すりガラスの衝立と椅子が一つだけ。せめてルルの今の境遇を表わす小物でも出てくればいいのに、それもなく、ルルだけ何回か変る衣装も一体何を意味するのかよくわからないものが多くて・・・。

それに、ルルを取り巻く何人かの男性は複数の役を演じるのだけれど、同じいでたちだし、それどころかわざと混乱させようとしているふしもあり、そういうのはこのオペラを何度も何度も観てすっかりわかっている人にはいいかもしれないけど、ROHでは長い間やってないんだし、そんな人が何人いるって言うんだ!


オペラ三昧イン・ロンドン
第一、これはルルのセックスアピールがむんむんしてないと、肝心なポイントが欠けるわけで、白黒だけの冷たいがらーんとした空間では、例え主演歌手がすごくセクシーな人でも、熱い雰囲気出すのは至難の技。白黒にしたのは、何人かの男が死ぬ場面で流す血を色が映えるようにってことでしょうけど、ルルのテーマは性であって死ではないと私は思うので、これもひねくり過ぎ。


せめてもの救いだったのは、新プロダクションは初日に行くことにしてるのに今回は行きそびれ、初日の非難ごうごうをすでに聞いてたことで、覚悟ができてたんです。初日は当然ブーイングの嵐だったそうですが、私もそこにいたら怒り心頭だったことでしょう。

演出家の自己満足って本当にやーねむっ


カラオケパフォーマンス


近代オペラはオーケストラが主役のことが多いけど、これもそう。十二音技法というのはさっぱりわからないけど、この緻密で研ぎ澄まされた音楽はオーケストラにとっては難しいけどやりがいのあるものにちがいなくて、下手くそに演奏されたらたまったものではありませんが、ROH大将のパッパーノ自ら陣頭指揮にあたり緊張感溢れる素晴らしい迫力でした。一回目は歌を聞いて場面を想像するだけでしっかりオケを聞く余裕がなかったのが惜しくて、2回目はなるべく歌に気を取られないようにしてオケに集中するようにした程です。おそらくこの手の音楽は、生でないと良さが充分味わえないしょうから。

このオケ音楽だけのコンサートがあったら行きますよ、私。

オペラ三昧イン・ロンドン
ルルは、最初の予定だったアレクサンドラ・クルツァックが降りて、代役はスェーデン人のAgneta Eichenholz


この役は初めてだそうですが、覚えるのも歌うのも難しいルルを立派に歌ってくれました。特に演技が上手ではないし、わかり易いセックスアピールもないけれど、クールな美貌がこの冷たいモノクロ舞台にマッチしてて、このプロダクション向け。


私は8日と10日に2回聞いたわけですが、出番の多くて声にも負担の掛かるルルを中一日置いただけで歌うなんて凄いです。


「セヴィリアの理髪師」のDVD撮影するのに中一日の休みでは不足だからという理由で7月13日の公演をキャンセルしまったフローレスに聞かせてやりたいですよ。セヴィリアの伯爵役なんて主役の一人に過ぎないのに、このルルはうんと大変なんだから。



オペラ三昧イン・ロンドン

シェーン博士と切り裂きジャックの二役はヒャエル・ヴォレ


多くの男に言い寄られて気がありそうな態度をみせるルルだけど、本当に愛するのはシェーン博士。ルルは愛人にしておいて若い婚約者もいる地位も名誉も男性的魅力もある精悍な中年男には理想的。


去年3月のサロメ で初めてROHに登場した時もマッチョな体がなかなか印象的だったけど、今回はもっと上手でした。


最後にちょっとだけ切り裂きジャック役で出てくるときは、シェーン博士と同じ背広姿なんかじゃなくて、衣装も演技もがらっと変えて連続殺人鬼を演じて、また違う面を見せて欲しかったです。彼のせいじゃないけど。



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義母ともなるルルに恋焦がれるシェーンの息子アルヴァは、話の展開には大した影響を与えないので小さな役かもしれないと心配だったけど(だってクラウス君だもの)、ルルの周りをちょろついて最後はロンドンまで同行するので出番は結構あり。


特に見せ場があるわけではので下手をすると脇役になってしまうところを、姿も声も端正なクラウス・フロリアン・フォークトはすご~くかっこ良くて、すっかり惚れてしまいました。テレビで彼のローエングリンを観て以来大好きでしたが、実物は期待以上ラブラブ!


美男子はなんの変哲もない背広姿がよく似合うものですが、背丈もあるクラウス君も黒いスーツとネクタイが素敵で、白いワイシャツが眩しかったです。


嗚呼、このよく伸びる美声で生のローエングリンを聴いてみたいものです。変な衣装は着て欲しくないですが。


カーテンコール写真も彼中心に狙ったので、すでにたくさんご覧に入れたでしょ?(→こちら カメラ




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ルルのレスビアンの恋人である伯爵令嬢は、久し振りのジェニファー・ラムール。中年になって、体も声も萎んじゃったような。充分上手なんだけど、声量も肌の張りもルルに負けてて、もうラムールは盛りを過ぎてしまったのかしらね?


どうでもいいことだけど、体は前よりほっそりしたのに、足がやけに太かったのが意外。ラムールだけじゃなくて、なぜか今回出てる女性歌手は、顔も上半身も細いのに足の太い人が多かった。ほっそりしてるルルまでも。


そう言えば、こないだロミオで凛々しくて素敵だったガランチャも下半身はどっしりしてたし、オペラ歌手やってると足が太くなるのかしらね?


この人だけは綺麗なおみ足だったのが少年役も含め3役演じたヘザー・シップ。ほぼ全裸になるリングのラインの乙女の一人として素晴らしいボディを見せてくれたヘザーには、こんなのじゃなくて、美女役を選んで欲しいものです。ここでも充分な活躍だったけど。


画家役のウィル・ハートマン、今回もまあまあだったけど、同じテノールとして、そりゃクラウス君と一緒に出たら勝負は明らか。個性もカリスマもない彼は、大劇場の脇役として生きる道を選ぶんでしょうね。


テノールと言えば、英国のベテラン、フィリップ・ラングリッジもちょい役をいくつか歌ってくれました。彼の場合は独特の声と貫禄で存在感を示し、こんな実力歌手を脇役で使うなんてなんて贅沢、と思わせてくれました。私、結構ファンなんです。



カメラ2回とも同じような角度ですが、舞台袖の席からカーテンコール写真をたくさん撮りました。クリックで好きなのを拡大して下さいませ。


ハンサム・ボーイ(クラウス君)特集はすでに別途アップしましたので→こちら でどうぞ。



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