「狂えるオルランド」(3)第1巻―2 覚書 アリオスト著 | サーシャのひとり言

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アリオストの「狂えるオルランド」第1巻の覚書2です。

第1、2巻を合わせると、行数にしてダンテの「神曲」の約3倍と言われるオルランド。

この長さの中に、いろいろなエピソードがこれでもかとてんこ盛りに詰め込まれています。

 

そのうちの一つが、ヘンデルがオペラ化している「アリオダンテ」。

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アフリカ勢に包囲されたシャルルマーニュ大帝はイギリスから援軍を送ってもらうために、甥のリナルドを使者として遣わす。

第1巻冒頭で姿を消したアンジェリカを探したいリナルドは嫌々ながら、そして早々に帰ってきたいがために海が荒れる中無理矢理船を出すものの、結局何日も漂った末にスコットランドに漂着。

 

 

伴も連れずにスコットランドの森を進むうちに、とある僧院に辿りついたリナルドはそこである話を耳にする。

「スコットランド王の姫君ギネヴィアは、ルルカーニオという男から、真夜中に男を部屋に引き入れたと訴えられている。この地では、法律によりいかなる女性も結婚前に男性と結ばれて訴えられると、誰か騎士が現れて女性を弁護し無実を明かさない限り火刑に処せられるのだ。」と。

 

父王は姫の無実を晴らしてくれた騎士には、領地と姫を妻として与えようと宣言したが、腕の立つルルカーニオを怖れて未だ誰も王女の救出に名乗りを上げないと聞いたリナルドは、姫君を救うために決闘の地に向かう。

 

道中、リナルドは今にも殺されそうになっている美女を助ける。助けられたダリンダは実はギネヴィア姫の侍女。

ダリンダにはポリネッソ公爵という密かな恋人がおり、しばしば宮殿の奥まった場所にあるギネヴィア姫の部屋を利用して恋人を引き入れてあいびきをしていた。

ところがこの公爵の本命は実はギネヴィア姫の方。

-本当に愛しているのは君(ダリンダ)だけなんだけど、うまく取り持ってくれて王女と結婚できたら、その時は妻にもまして君を第一の女性として愛するよ。-

 

と、調子のいいことを言われてすっかり公爵への愛に目がくらんだダリンダは、仕えているギネヴィア姫が公爵を慕うように努力するが姫には全くその気が無く…。

それもそのはず、ギネヴィア姫はイタリアからやって来た優しく凛々しい騎士アリオダンテ(ルルカーニオの兄)と相思相愛で、父王も彼を気に入っていたのだった。

 

姫が全く振り向かないのに業を煮やしたポリネッソ公爵は卑怯な一計を案じる。

-どうしても姫が振り向いてくれないのなら、真似事でもいいんだよ。

ダリンダ、君が王女の服を着て髪型もそっくりにして部屋から招き入れてくれたら、君を王女だと自分を欺いて諦めるから。-

 

そして、一方で公爵はアリオダンテに「元々姫と自分は愛しあっていたのに、どうして邪魔をするのだ。彼女は自分と一緒の時は、お主の事なんてたわいもないと言ってるぜ。嘘だともうならいいものを見せてやろう。」と欺き挑発する。

姫の言葉を信じながらも、公爵に指定された日時に姫の部屋の見える物陰に弟と一緒に潜むアリオダンテが見たものは…姫そっくりの姿をした侍女ダリンダが公爵を部屋に引き入れる様子。

 

すっかりダリンダを姫と勘違いしたアリオダンテは悲嘆のあまりその場で自殺しようとするが

弟に止められ出奔。

数日後、アリオダンテが崖から嵐の海に飛び込むのを見た旅人が宮廷に知らせをもたらす。

姫は嘆き悲しむが、弟ルルカーニオは姫の不実のせいで兄が死んだと思い込みギネヴィア姫を訴えた。

 

一方、訴えられた姫の真実を知ろうと父王は身の回りの世話をしていた女官たちを拘束する。ダリンダが拘束され自分の謀が明るみに出ることを怖れた公爵は、自分の城にかくまってやると嘘をつき人けのない森に連れ込んだダリンダを部下に殺させようとする、そこに偶然リナルドが出くわして彼女を助けたのだった。

 

リナルドは助けたダリンダと共に姫の名誉を守るべく決闘の行われる街に赴く。

ところが、既に見知らぬ騎士が名乗らぬまま名乗りを上げ、ルルカーニオと決闘を始めていた。

侍女ダリンダから真実を聞いていたリナルドは決闘を止めるべく王に言上、ポリネッソ公爵がギネヴィア姫を陥れるために謀った罠であることを洗いざらい述べ立てる。

名指しされた公爵は青くなりながらもリナルドとの決闘に応じるが、たちまちリナルドの槍に貫かれ、悪事を白状しながら息絶えた。

 

姫が汚名と死から救出され喜ぶ王は、最初に姫の為にルルカーニオとの決闘に応じた見知らぬ騎士にも感謝を向ける。

そして、兜を脱いだその騎士は…何と、身を投げて死んだと思われていたアリオダンテ。

泳ぎがうますぎて死ねなかったアリオダンテだが、弟が姫を訴えていることを知り胸を痛める。

そして、弟に剣ではかなわないから自分は殺される覚悟で、しかし侮辱を受けたとはいえ愛する姫の為に決闘して死ぬのなら本望と駆けつけたのだった。(駆けつけた時点では公爵の陰謀だったことをアリオダンテは知らない)

 

アリオダンテの誠実さと真実の愛の前に王は姫をめあわせ、亡くなった公爵の領地を彼に与えアルバニ―の公爵に叙する。

リナルドの計らいで許されたダリンダは尼僧になる決心をする。

 

(この後、第1巻の第18歌での対イスラム教徒パリ攻防戦でルルカーニオはダルディネッロ(メドーロの主君。彼の亡骸を求めて敵陣に赴きメドーロは重傷を負ったところをアンジェリカに助けられる。)の手により命を落とす。)

 

 

 

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ダリンダ、公爵への愛に目がくらみ過ぎでしょう!と、ツッコミを入れたくもなるアリオダンテのエピソード。

このようなエピソードが至る所に散りばめられながら、少しずつ時間軸が進展していきます。

そして、それぞれがまるで関連がないというわけではなく、先々のどこかで繋がっているのがまた複雑でもあり、面白くもあり…。

 

さて、第2巻が待っています!