成年後見制度のニュースで、今年一年を振り返ってみました。

一言でいうと、制度が変わってきていることを実感・予感する一年でした。

 

(1)成年後見制度、本人意思尊重へ 診断書4月に初改訂、最高裁(2019.1.13)

 https://this.kiji.is/457079699330843745?c=110564226228225532

(2)欠格条項削除法が成立 成年後見、参院本会議(2019.6.7)

 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45820490X00C19A6000000/

(3)成年後見人には「親族が望ましい」 最高裁、考え方示す(2019.3.18)

 https://www.asahi.com/articles/ASM3L54SDM3LUCLV00X.html

(4)成年後見制度 報酬見直し 業務量で算定 最高裁通知(2019.3.24)

 https://mainichi.jp/articles/20190324/ddm/001/040/161000c

(5)最高裁が後見制度の指針概要案 利用者の意思尊重を求める(2019.11.5)

 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191105-00000155-kyodonews-soci

 

それぞれ、解説してみます。。。

(1)成年後見制度、本人意思尊重へ 診断書4月に初改訂、最高裁(2019.1.13)

 

成年後見制度の診断書のフォーマットが大きく変わりました。そして、「本人情報シート」が追加されました。

これについては、すでに私のブログでも解説していました。

 

 2019.11.20に開催された有識者会議(成年後見制度利用促進専門家会議 第3回中間検証WG)では、本人情報シートがどのぐらい利用されているか、報告がありました。

今年7月、8月、9月の集計ですが、44.3%、55.0%、60.5%と推移しており、3か月の平均では53.0%となり、利用が約半数という結果でした。

この理由を自分なりに考えてみると、申し立てをする前に、弁護士、司法書士などの専門職に相談することが多く、それら専門職の多くは以前に使った資料をコピーして使っているから、と思います。

弁護士会、リーガルサポートなどは、最新のフォーマットおよび本人情報シートを使う様、徹底するべきです。

また各家庭裁判所は、最新のフォーマットでなければ受け付けないなどの対応をするべきだと思います。

 

(2)欠格条項削除法が成立 成年後見、参院本会議(2019.6.7)

 

約180の法律の欠格条項から、成年被後見人と被保佐人を一括削除する法案は、2018年の国会で審議する予定でしたが、モリカケ問題などの問題で審議されず、年を越していました。

そしてようやく2019年の国会で審議され、可決成立しました。

これについても、以前何回か私のブログで紹介していました。

 

2010年10月の「横浜宣言」の中でも、日本の成年後見制度の課題の1つに、「欠格事由の廃止。特に選挙権の剥奪は基本的人権に反する」がありました。

選挙権(投票する権利)は、制度が始まって13年後の2013年に復活しました。

欠格条項は、制度が始まって19年後の2019年に削除されることが決まったのでした。

遅すぎますが、あきらめない意志を感じました。

 

(3)成年後見人には「親族が望ましい」 最高裁、考え方示す(2019.3.18)

この記事についても、以前私のブログで解説をしていました。

 

2019.11.20に開催された有識者会議(成年後見制度利用促進専門家会議)において、厚生労働省が、「中核機関における適切な後見人候補者の推薦及び後見人支援の取組状況、助成制度の取組状況」を発表しています。

これによると、令和元年7月現在で、全国1,741の自治体のうち、中核機関が設置されているのは、139自治体(約7.9%)に増えており、受任者調整を実施している自治体は、279自治体(約16%)あるそうです。

※受任者調整している機関は、中核機関だけでなく、権利擁護センター等も含みます。

例えば、品川成年後見センターでは、ケース会議を月2回、方針決定会議を年4回、受任調整会議を年4回開催しており、緊急事案については随時開催しているそうです。

 

具体的に親族後見人が増えたかどうかは、来年に発表される「成年後見関係事件の概況(平成31年1月~令和元年12月)」を楽しみに待ちたいと思います。

 

(4)成年後見制度 報酬見直し 業務量で算定 最高裁通知(2019.3.24)

 

成年後見人等の報酬の目安として、東京、横浜、大阪家裁などが発表していますが、本人の後見人が管理している流動資産額(預貯金と現金の金額。ただし、後見信託、および、大口の後見預金は除く)となっています。

 

報酬は、本人の財産から与えることができる(民法第862条)ことになっていて、報酬を出すことで本人が生活できなくなる場合は、報酬金額0円となる場合もあります。

その場合は、各自治体が実施している成年後見制度利用支援事業の条件に当てはまれば、これを使い報酬をもらうことになります。

 

報酬は、基本報酬と付加報酬にわかれていて、

基本報酬は、

・管理財産額が1000万円以下の場合・・・月額2~3万円

・管理財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合・・・月額3~4万円

・管理財産額が5000万円を超える場合・・・月額5~6万円

となっています。

 

付加報酬は、「身上監護等に特別困難な事情があった場合には,上記基本報酬額の50パーセントの範囲内で相当額」となっており、具体例として、

例1)訴訟  被後見人が不法行為による被害を受けたことを原因として,加害者に対する1000万円の損害賠償請求訴訟を提起し,勝訴判決を得て,管理財産額を1000万円増額させた場合:約80万円~約150万円

例2)遺産分割調停  被後見人の配偶者が死亡したことによる遺産分割の調停を申し立て,相手方の子ら との間で調停が成立したことにより,総額約4000万円の遺産のうち約2000万円相当の遺産を取得させた場合:約55万円~約100万円

例3)居住用不動産の任意売却  被後見人の療養看護費用を捻出する目的で,その居住用不動産を,家庭裁判所の許可を得て3000万円で任意売却した場合:約40万円~約70万円

となっています。(横浜家庭裁判所 成年後見人等の報酬金額の目安より)

 

それを毎日新聞の記事によると、業務ごとに標準金額を設け、”やった分だけもらえる”様に変更するとなっています。

 

本当に変わったかどうかは、私が来月1月に後見事務報告書と一緒に、後見付与申立書を提出しますので、その結果でわかると思います。

 

(5)最高裁が後見制度の指針概要案 利用者の意思尊重を求める(2019/11/5)

 

これについても私のブログで解説をしていました。

 

現場では、ちょっとした混乱が起きているということを聞いています。

今までは、被後見人=判断能力がない人だから、本人不在の代行をしてきたのに、

これからは、本人の意思をなんとかして聞き出して、それを実現するのが基本になったと言われても、何からしたらいいのか、わからないと。。。

 

また、意思決定支援を行なったことを、家庭裁判所がどのように評価して、どのように報酬に反映していくのかまだわかりません。

報酬の基準は、都市と地方で格差があってはいけませんので、おそらく最高裁判所家庭局が報酬の目安のようなものを作成して、全国の家庭裁判所に配布すると思います。

 

さて、来年はどんな年になるでしょうか?今から楽しみです。