成年後見制度の診断書の形式が、今年4月から改訂されるらしいです。
本人意思が尊重されるかどうかは疑問が残りますが、
平成30年7月2日に開催された「第1回 成年後見制度利用促進専門家会議」で、成年後見制度の診断書の改訂内容が発表されていました。
閣議決定された成年後見制度利用促進基本計画の中で、メリットを感じやすい制度にするための方策として、成年後見制度の診断書のフォーマットを変更することが決まっていました。
それによると、
資料10-成年後見制度における診断書の見直しについて.pdf
より、抜粋
改訂のポイントは3点あります。
1.判断能力の意見欄が見直しされます。
(今まで:改訂前)
□ 自己の財産を管理・処分することができない。
□ 自己の財産を管理・処分するには,常に援助が必要である。
□ 自己の財産を管理・処分するには,援助が必要な場合がある。
□ 自己の財産を単独で管理・処分することができる。
(H31年4月~:改訂後)
□ 契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができる。
□ 支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することが難しい場合がある。
□ 支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。
□ 支援を受けても,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。
⇒自ら理解できるか、支援を受けなければ難しいことがある、支援を受けなければできない、できないの4段階になりました。
⇒後見・保佐・補助・対象外の順番になっていたのが、対象外・補助・保佐・後見の順番になりました。
2.判定の根拠が明確化されるようになります。
(今まで:改訂前)
自由フォーマットになっており、診断した医師が長谷川式の結果などを記載していました。
(H31年4月~:改訂後)
(1) 見当識の障害の有無
(2) 他人との意思疎通の障害の有無
(3) 理解力・判断力の障害の有無
(4) 記憶力の障害の有無
(5) その他
参考となる事項(本人の心身の状態,日常的・社会的な生活状況等)
⇒根拠として、6項目についてそれぞれの状態を記載するようになります。
3.介護・福祉関係者が「本人情報シート」を作成した場合、それを参考にしたかを明確に記載するようになります。
(今まで:改訂前)
備考(本人以外の情報提供者など)
(H31年4月~:改訂後)
※ 「本人情報シート」の提供を □ 受けた □ 受けなかった
(受けた場合には,その考慮の有無,考慮した事項等についても記載してください。)
⇒備考欄で、本人以外から情報提供があったら記載するだけでしたが、明確に「本人情報シート」を提供されたか、提供された場合それを考慮したかどうか、考慮した事項について記載するようになります。
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さて、この診断書の改訂で、どのように変わるでしょうか?
今までは、判断能力が常にないと診断される「後見類型」が、法定後見の78%を占めていました。
それは、本人の判断能力がまったくなくなるまで利用しなかった結果なのか、
診断書のフォーマットが悪かったのかは、わかりません。
さらに、日本のほとんどの医療機関で利用されている改訂長谷川式認知症スケールの点数が何点以下なら後見類型だよね、とかの明確な規定はありません。
しかし、家庭裁判所がどの類型で開始審判するかは、診断書の結果でほぼ決まります。
”医師が判断した結果により、ご本人の人生が決まってしまう”と言っても過言ではありません。
法律上、判断能力がない人は契約能力がないため、後見人を立てなければいけません。
その判断能力について、
・自己の財産を管理・処分ができない(後見相当)
・常に援助が必要(保佐相当)
・援助が必要(補助相当)
・自らできるか(対象外)
で判断するのではなく、
・自らできる(対象外)
・支援がなければ難しいことがある(補助相当)
・支援がなければできない(保佐相当)
・支援を受けてもできない(後見相当)
になったことは、成年後見制度の大きな転換点と言えるでしょう。