メキシコとアメリカ国境付近を舞台に、熾烈で凄絶で血みどろの麻薬戦争を、麻薬捜査官、麻薬の製造元である『ファミリー』、その仕事をする殺し屋、それから高級コールガールの視点で描く。
私は、麻薬を見たことがない。
生活範囲に多分無い。もしかしたら病院にあるかもしれないけれど。
日本人ならきっと、ほとんどそんな感じじゃないでしょうか。
麻薬と覚せい剤の違いはよく分かりません。
やっぱり、日本で暮らしてばきっと、ほとんどそんな感じじゃないでしょうか。
日本で生まれて日本で死ねば、ずっと、そういう悪いお薬に出会わずに生きていけるのではないでしょうか。
…と言ったら、オマエはどんだけ箱入りなんだよ、と言われた。
そうなの?
始まりからして、阿鼻叫喚の地獄から。
全身で子供を庇う母親もろとも打ち抜かれた子供、凄惨な拷問の現場…などなど。
何故、こんなことが起こってしまったのか。
「犬の力」
そこに働いた力。
色んな視点から、ぐちゃぐちゃな麻薬戦争を描いているのですが、案外冷静に、まるでビジネスマンのように『事業』を拡大していくカランのファミリー。
売ってるものが麻薬じゃなきゃ良かったのに。
売っているのは麻薬だけど、麻薬王だけど、人間として、『悪い』人に見えないのだ。
奥さんを大事にして、障害を持って生まれた娘を、感動的なまでに愛していて、まるで理想の父親なのだ。
なのに何故、人の子や妻を、殺すことが出来るのか。
「犬の力」
それが違和感なく書かれている。
そんな彼を追う捜査官アート。
麻薬を国に入れない。それはきっと正しいことなのだろう。
その正しいことをするために、アートは嘘を重ね、罪のない人まで死なせ、狂い、途方もない屍山血河を築いていくのだ。
冷静に「ビジネス」を展開していくカランに対し、火の出るような執念で、家族さえも捨てて戦場を征くアート。
正しいことをすべきなのに、誰よりも狂っているアート。
「犬の力」
その狂気が強烈に書かれている。
とにかく、アートの狂気が怖かった。どんどん、どんどんどんどん狂っていくのが本当に怖かった。
こんなにも、狂わないと戦えないのかと。
こんなにも、手を汚さないと守れないのかと。
こんなにも、犠牲を払っても、何も守れないなんて。
その狂気に説得力があるのが堪らなかった。
なので、私は友人いわく箱入りでよかったと思ったのです。なんつーか、もう箱から出る気ないもんね。








