Dec/31/2023 | サボリ通信

サボリ通信

大村幸太郎ブログ

 
五年前のチラシ
 
前進座の2012年の南座の舞台のチラシ。
当時うちの女房と見に行った芝居だ。
 
本当は僕の父と母が楽しみにしていた芝居でもあった。  

 2011年の暮れに父が病を患いあっという間に床に伏せてしまって我が家は観劇どころではなくなっていた。 看病していた母がそれでもチケットが勿体ないからと僕ら夫婦に券を渡されたのだった。
思い出してもあの時の正月は気が気でなかった。 
 
 父の事や仕事のことも、あれこれ考えながら暗い面持ちで南座へ足を運んだことを覚えています。
 
 
この日の演目は二本立て。前進座オリジナルの脚本と、落語でお馴染みの「芝浜」でした。
芝浜は酒びたりの夫とその妻の物語。これが沁みた。
 
 
芝浜/
 酒におぼれ仕事に行かなくなった夫はある日妻から別れを告げられ、夫は金輪際酒をやめて真面目に働くことを誓う。その矢先、夫は大金の入った財布を拾いこれで一生遊んで暮らせると再び酒を飲み酔うけて眠ってしまう。
このままではまた駄目になってしまう。そう思った妻は目覚めた夫に嘘をつく、
 
”大金を拾った?何バカな事言ってんだい、夢だよ、夢。早く仕事に行きな!”
 
 夫はおかしいと思いながらも仕方なく働きにでかける。元来仕事ができる夫は酒を断ち商いは成功する。 そして迎えた3年目、妻は夫に3年前の嘘を告白するが…/
 
 

 古典落語の代表なのでご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、落ちがまたいいです。 


僕ら夫婦は劇場へは暗い面持ちで入ったものの、不思議なことに出る時には気持ちがすこし上向き、明るくなっていました。 
 それから半年経たずに父は旅立ちました。

その後も色々多々ありましたが、現在も何とか染の商いをやらせていただいています。
(芝浜の夫婦みたく大金は稼いでないけれども(笑

 チラシを見ながら当時の辛かったことを思い出していました。
しかしたしかにあの時の舞台は僕らを救ってくれた。 あの時の役者さん、前進座には大変感謝をしています。
良い芝居でした。

 そう、提供する側の人間はいつもそれを考えていたい。 

お客様のなかには様々な事情を抱えている方がいらっしゃる、それでも足を運んでくださる。 
お越しになった方が会場を出る時に、少しでも気持ち豊かになっていただけるように、
僕ら夫婦も今後仕事に尽力するのみです。  

 来年も良い作品を作っていきます。ご期待ください。
 
そして皆様どうぞ良いお年をお迎えください。
 
 
 
 
text/Dec/31/2023
 

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