この仕事(着物製作)に携わっていると、常に意識するものは"
とりわけ日本の四季や原風景は私にとって欠かせないものだ。
自然から大いなる力をいただき、美しさに感動し、
今日までそうして'工芸'を生業として仕事をして来たわけだが、
吉村昭氏の"破船"だ。
江戸時代初期の貧しい漁村を舞台にした物語である。
そこでは土地は痩せ田畑からは雑穀しか穫れず、
村人は裕福とは遠い暮らしを立てている。
身売りは常で、それは女・
銀と引き換えに主が奉公に出るのだ。
家族は主を売って得た銀で米を買い、数年間を細々と食い繋ぎ、主が帰ってくる日を待つ。
想像を絶する生活なのだ。
そんな極限の暮らしでも数年に一度村に神様が降りてくる。
人々はそれを"お船様"と奉り、
座礁した商船から荷を奪い、
それは幸せも、不幸も連れてくる神の船であった。
有り余る肉とミルクで育った80年代に少年であった私には理解が
それほど非現実的な話なのだ。
私が取材に欠かせない日本の原風景の美しさとは、
そこには機械化されたものは無く、
藁の中で寝て、
衣服を得るにはそれしか手段が無いのだ。
暖かい時期に植物の収穫をし繊維を取りおき、
私の知るある友○染作家は、"
染色こそ優れた着物であると豪語し、
自身の理念を確かめるが如く宣言に近いものであった。
しかし、この小説を読んでからはその方の仰る意味も分かる。
手仕事の価値とは一体何なのだろうか
手仕事、ありのままの自然、それに伴う技術。
私が携わる工芸とは一体何であるのか、
極限における時に自らが作り出したものに"美"
”美”として良いものなのだろうか
この小説は一つの村のコミュニティの話ではあるが、
出張のお供に読んでいたのだけれども、何か暗〜
text/14/Oct/2026



