チュン君は ディスレクシア(書き字障害・難読症)である。
はっきり 診断を受けたのは 小学校4年生の時。
それまで 勉強はどうしていたか?
読み書き出来ない事に 気付かなかったのか?
いや いや いくら私でも 気付いていた。
しかし LD(学習障害)・ディスレクシアという障害がこの世に存在する事は知らなかった。
なので 字は いつか覚えるだろうって のんびり考えていた。
トイレに “あいうえお表”は 貼っていたし 聞かれたら教えていたし 音読は一緒にしたけど…
それ以外に 特に何か言った事も した事もなかった。
音読は 漢字は殆ど読めなかったけど ゆっくり ゆっくり 超ゆっくりとは読めて?いたし
書く字は やたら汚くて 平仮名ばかりだったけど 字がまったっく書けない訳じゃないし
だから いつか 少しずつマシになるさ~って感じだったのだ。
しかし私としては どちらかと言うと あまりにも記憶力がない方が かなり問題だと思っていた。
チュン君に
『お部屋からランドセル持っておいで。』
と言うと チュン君ご機嫌で
『ランドセル♪ランドセル♪』
と言いながら 部屋に向かうのだが
部屋に 入ったとたん なぜか
『戦車♪戦車♪』に変わる
そして しばらく待っていても 戻って来ないので
『チュンくーん!まだー?』と 呼びかけると
案の定
『ママー 戦車ないよー
』と返事が返ってくる。
面白すぎます…
よく 短期記憶が弱いとか 言いますが、チュンの場合 短期すぎです。
だから チュン君の日記は とても面白い…
なぜならば 文章を書いてる途中で 何を書いてるか忘れてしまうのだ。
そして 文章の途中でいきなり 『です。』がついて 終わったりする。
だから チュン君の日記は
『今日 たっくんとテレビです。』
と 意味不明な紹介文になったり
『今日 お母さんと電車で疲れた。』
と 楽しいレジャーも遺書のような終わり方をしてしまう。
かなり 面白すぎなので チュン君の日記は大人気。
本人でさえもサラサラ覚えてないので 私が読み上げて
『これは遺書ですか?あなた 疲れて死にますか?』
などと突っ込みを入れると
ヒーヒー言って笑い転げている。
まあ 面白いんだけど さすがの私も おかしいと思い
ネットなどで 記憶力が悪い事や 記憶障害について 調べたりしていたが
答えにいきつかなかった。
しかし チュン君本人は 自分が頭悪い事に コンプレックスを抱えながらも
持ち前の 明るさと 遊びの天才と言うリーダーシップを発揮したりして
大勢の友達にかこまれ、毎日 面白おかしく 生活していた。
そして チュン君が小学校4年生になった ある日、事件?は起こった。
チュン君の大量な漢字テストのプリントが たっくんに見つかったのだ。
いや 別に隠していた訳ではないのだが たっくんが チュン君の部屋で探し物をしていて見てしまったのだ。
そして たっくんは 説教した。
ちゃんと 勉強すれば必ず書けるはずだ!まじめにやれ!と。
チュンは ポロポロと涙を流している。
暫く 放っておいたのだが いつまでも終わりそうに無い。
いい加減に しつこくてウンザリしてきたので
たっくんに ありがとうと言い 交代してもらった
そして 泣いてるチュンに聞いた。
『チュンは 漢字の勉強するのが嫌なのかい?
それとも 勉強したいけど 出来ないのかい?』
すると
『だって…チュン君バカだもーん』と大泣き。
『ほう そうかい。
でも ママは 明るくて元気なチュン君が大好きなんだけど。
みんなが チュン君大好きって集まってくるでしょ?
それは お勉強が出来る事よりも ずーっと大切な事だと思うけど?
し・か・し・ 君が 漢字を本気で覚えたいって言うなら
ママが とことん付き合っちゃる!!どうするかい?』
すると
『漢字する。』
と、言う事で 最初で最後の 猛特訓が始まったのだ。
1時間が経ち…2時間が経ち…
普通の書き取りでは 覚えない。
そこで 書くことより まずは 読める事を目標にする事に。
漢字を3つ書いて 私が指差した漢字を読む という方法。
しかし これも 無理。
スピードを上げたり 下げたりして 半分ふざけたりもしながら
永遠と3つの漢字と格闘したが
5時間経過しても…結局 覚えられなかっのだ…
疲れ果てた二人
しまった… これでは
『やっぱり僕はバカなんだ!』と、
改めて思い知る結果になってしまうではないか。
確かにそうかもしれないが 投げやりになるのは 絶対ダメだ!
そこで また また 啖呵を切る私。
『これは おかしい!いくらなんでも おかしい!
君は頑張った!だから もういい 良くやった!
あとは ママが考える!
何か 違う方法があるはず!
だから ちょっと 待ってろ!!』
そう そして ディスレクシアの存在を知ることになったのだ。
チュン君の0点テストを見ても
『お前は のび のび太か!』
の突っ込みで 笑い飛ばしていた私。
いま時 珍しいくらいに 野山を駆け巡る 野生児チュン君は
単純に勉強よりも遊びに夢中としか思わなかった。
元気が1番。元気で何より。って
確かに それは そうなのだが、
でも ディスレクシアであるが故に やりたい勉強すらもできなかったのだ。
だから たっくんには ある意味 感謝だ
このままでは 単なる おバカな親子で終わってしまう所だったのだから。
そして 今 チュン君は 自分がディスレクシアであると知り、
勉強も遊びも思いっきり頑張っている。
…いや… やっぱり 遊びが1番だけどね