最近は短~中編集が多く発刊されている麻耶雄嵩
さんですが、
長編としては最も新しいのが『隻眼の少女』です。
麻耶さんの作品と言えば個性の強い登場人物が印象的ですが、
この『隻眼の少女』の探偵、御陵みかげも例に漏れません。
“隻眼”というタイトルの通り、左目に碧の義眼を持ち、
水干姿で毒舌を振り撒く強烈なキャラクターとなっています。
文庫版の帯には“ツンデレ”と書かれていましたが、それは少し違うような…?
長編ミステリの宿命とも言えるのが、停滞感です。
複数の事件を経て、最後に一連の事件の犯人を突き止めるのが基本的な流れなので、
重要な手掛かりが登場するまでは情報収集に終始するワケです。
この作品では停滞感が一際強く感じられました。人によっては読みにくいと感じるかもしれません。
それを手伝うのが探偵・みかげの捜査です。
関係者への聞き込みでは手広く様々な情報を引き出し、
つい“果たしてそれは事件に関係するのだろうか?”とも思ってしまいます。
その上、事件現場には意味深な痕跡が多々残っており、
どう推理を進めていけば良いのか、道筋を立てる事すら困難な状況に陥ります。
そんな中でも事件を解決してこそ名探偵!
みかげは数々の情報を繋ぎ、遂に犯人へと辿り着きます。
そして話は『第一部 一九八五年・冬』から『第二部 二〇〇三年・冬』へと移ります。
話の全貌が明らかになった時、
先の停滞感や二部構成が如何に重要であったかが見えてきます。
一冊を通した物語の推移や構図等に麻耶さんのウマさが出ている作品だと思います。
そして何よりも“悔しさ”です。
解説にて巽昌章さんも書いていますが、とにかく悔しいんです。
全ての期待が裏切られた読者を猛烈な悔しさが襲うのです!
私は“悔しさ”というのはミステリの醍醐味だと思っています。
『隻眼の少女』は私が最も“悔しさ”を感じた作品でもあります。
あれは…いいモノだ!
綺麗な女の子が映った表紙やツンデレとか書かれた帯から想像もつかない
“悔しさ”が溢れる気持ちで読了後、直ぐに再読したくなり、
再読して改めて作品の完成度の高さに驚かされる、そんな強烈な作品です。
そして“ミステリ界のある問題”に挑んでいるのも注目です。
マスターピース(帯より)に偽りなし!
