『論理爆弾』 有栖川有栖 | ぱぶろの読書感想文

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読了したミステリ小説の感想文をアップしていきます。
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闇の喇叭真夜中の探偵に続く有栖川有栖 さんの『探偵ソラシリーズ』の3作目、
2015年1月現在のシリーズ最新作です。


論理爆弾



行方不明の母を追うというシリーズの流れはあるものの
1冊につき1つの事件が起き解決されるというスタイルなので、
どこから読み始めてもいいでしょう。特に今作はこれまでのあらすじが付いているので尚更です。
主人公である空閑純(ソラ)成長や彼女が母に近づいて行く過程が主に描かれているので、
シリーズの最初から読み進めるのがオススメではありますが。

今回のソラは、ついに母が失踪した地を訪れます。
失踪直前の目撃情報を得、母は探偵として何を調べていたのか。
また、何故失踪してしまったのかを“探偵行為”を通じて探ります。

これまでの作品では、ソラは事件とそれほど深い関わりを持っていませんでした。
知人(の身内)が容疑者となっており、ソラ自身が事件に巻き込まれたという訳ではありません。
しかし、今回は違います。
死体の発見者となり、事件の重要参考人の1人となるのです。
金田一少年コナンよろしく、警察に頼らず独力で事件の解決を試みます。
これもまたミステリの定番の1つですね。

前回までで学んだ探偵の心得を胸に、ついに探偵ソラとして本格的に事件に挑みます。
シリーズ1作目から作品内で約半年を経て、ようやくスタートラインに立つのです。


ミステリ小説若しくは探偵物において、探偵はとても重要なポジションです。
程度の差はあれど、既に完成されている私立探偵や、
“今回の探偵役”として明確に事件の解決を作者に託された素人探偵がその役を努め、
作品の最後には彼等が真相を語るという作品がほとんどです。

しかし、この『探偵ソラシリーズ』におけるソラは、探偵“未満”として扱われています。
最初の2作では探偵を志す者として、今回は探偵と言っても自称の域を出ず、
ソラも自身を「探偵見習い」と評しています。

それ故に、探偵として在る為の条件克服すべき困難等が多く語られ、
『ソラが歩む探偵までの道程』読者が見守る様な物語になっています。
それは作者がソラに与えた試練であり、作者が探偵に求める素養を得る為の物語でもあるでしょう。
“世の中(他作品)の探偵達にはそれが備わっているのか?”と考えてみる楽しさにも繋がります。


『論理爆弾』というタイトルに釣られてこの本を手に取る方もいるでしょう。
有栖川さんは所謂新本格ミステリ作家として知られており、
更にタイトルに『論理』とつけば皆様が期待する事は同じでしょう。
しかし、この作品にパズラー要素は一切ありません
ミステリを通した主人公の青春物語としてお楽しみください。









ネタバレ感想





今作はシリーズとしての進展が著しい話でした。


母の失踪という最大の謎を解く鍵が何処にあるのかが見えて来て、
読者には前作で知らされていた母の所在に関する情報も遂にソラが知るところとなりました。
これはストーリーとしての大きな進展でしょう。
ソラがとるべきルートが見えた事で、今後の展開の加速が期待されます。


ソラ自身についても、奥多岐野の友人に言葉を送ったり、
ガンジスへのを自覚したりと前に進んでいる印象を受けます。
前作では幼さについて言及される事が多かったソラは、
今回は独りで旅をし、年齢を3つ上に誤魔化し、家庭教師になり、デートに誘われたりと、
うって変わって大人として書かれている場面が目立ちました。
ソラの描写だけを見ても、物語が進んでいる事が強調されています。


そして今回最も興味を惹かれたのが連続殺人事件全般についてです。
これまではミステリとして手品的とも言える物理トリックを解明するという事件が2つ続きました。
しかし、今回は本のタイトルとは真逆「論理の欠片もない」謎が扱われました。
正直、最初は残念な思いもあったのですが、シリーズを回想していると
“今回に相応しい事件だった”から敢えてそういう形を取ったのだと納得しました。

“読者への挑戦”が挿入される『江神シリーズ』や
論理の積み重ねを重要視する『火村シリーズ』とは違い、
読者に謎解きを楽しんでもらう為の作品として書かれたモノではないでしょう。
『探偵ソラシリーズ』全体に言える事ですが、

全てはソラの為に書かれている


これに尽きると思います。今回、それを示すのが

「推理すればきれいに解ける問題を用意しましたよ、
    挑戦してみなさい、という事件ばかりではない」

という文章です。前作でも
「犯人を絞首台に送る覚悟はあるのか」
「犯人を突き止めるだけでなく、事件をどう処理するのか。しっかりとした思想をもつべき」
というソラに向けられた台詞がありました。

上記した今作の文章も含めて、最初は
“有栖川さんによるミステリ界への問題提起なのではないか”
と思いましたが、シリーズ全体を通して細かく描写されるソラを見ていると
“本文をそのまま読み、受け止めるのが正しいのかな”という結論に行き着いたワケです。

“ソラにはこういう探偵になって欲しい。そう描き上げたい”
という有栖川さんの気持ちが表れている文章として読みました。