『真夜中の探偵』 有栖川有栖 | ぱぶろの読書感想文

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前作闇の喇叭から数ヵ月後、舞台は大阪へと移ります。


真夜中の探偵


この『真夜中の探偵』有栖川有栖 さんの『探偵ソラシリーズ』の2作目となるのですが、
いきなりこの作品から読んでも大丈夫でしょう。
勿論、『闇の喇叭』を読んでからの方が楽しめるのは間違いないのですが、
言うなれば前作が第1部、今作が第2部といった様相である程度独立しています。

世界観や前作での出来事が所々で簡潔に書かれているので、前作の内容をあまり覚えていない方や、
そもそも読んでいないという方もシリーズの流れに置いて行かれる事は無いでしょう。


非常にゆったりと物語は進行していきます。
まずは探偵になる事を決意し大阪に出た空閑純(ソラ)の暮らし振りが書かれるのですが、
17歳の女の子っぽさが皆無で少し悲しくなってしまいます。。
まぁ、その年齢相応の暮らしや感情表現というのがシリーズのゴールとも言えますね。

全体の3分の1程度を読み進めると、いよいよ話が動き出します。
かつてソラの両親に仕事を仲介していた人物との接触に成功し、
ソラが最も欲している“母の行方”に関する情報を得ることとなるのですが・・・

その直後にその人物が殺人事件に巻き込まれ、
ソラは探偵としての第1歩とすべく、事件の解決を目指します。


前作はシリーズを通しての最大の謎である『母の失踪』を解明すべく、
ソラが探偵になる事を決意するまでを描いたプロローグ的な作品でした。
そのきっかけとなる事件を中心に、ソラの心の動きが主題となっていました。

一方、今作では警察・反社会団体・探偵の仕事仲間・探偵が関与した事件の関係者といった
様々な角度から“探偵という存在”が語られています

そして、探偵の存在理由・立ち向かう相手・すべき覚悟といった
探偵としての心構えが強調されています。

今作は『探偵ソラシリーズ』の“準備編”と言えそうです。
大きな動きは無いのですが、ソラの前に立ちはだかる壁が数多く登場します。
それを彼女がどう越えていくのか、越えられるのか。期待と不安が入り混じります。
今後ソラが探偵として活躍する為には
この作品でのソラの経験は必要不可欠なモノになるでしょう。

次回作以降への橋渡しとして、シリーズ内でもとても重要な立ち位置となるのではないでしょうか。
ソラの成長から目が離せません。










ネタバレ感想





ついにソラの母親・朱鷺子が登場しましたね。
“北”にいる事・記憶喪失に陥っている事が明かされました。
そして、彼女が保護(監視)されている理由である日本政府の秘密とは・・・?
シリーズに新たな謎が加わり、続編に興味を惹かれます。
この焦らされている感じがシリーズ物の魅力の1つですね。


今作では仲介人・押井や明神警視からソラが幼さを指摘されるシーンが目立ちました。
前作で「探偵になる」と決意したものの、
探偵としてのスタートラインに立つまでの道程はとても険しいようです。
「〈ソラ〉にします」という発言の場面では“ついにか!”と興奮したのですが、
結局は探偵にはなれませんでしたね。
今回の事件で探偵になる為に必要なモノを学んだソラはそれ等を会得し、
次回作では探偵を名乗るという展開が見たいですね。


序章にはやられましたね。
“期せずして母子が会う寸前まで行ったのに惜しい!”という気持ちは見事に裏切られました
ミステリ作家の憎いところですね(笑)


1月17日の防空訓練というのは、やはり“別世界であれ、決して無かった事には出来ない”
という思いからなのでしょうか。
阪神大震災を受けて、どこかのあとがきで有栖川さんが
“人の死を題材とする事に悩んでいる”という様な事を書いていたと思うのですが、
今回のこの設定にはどういった思いが込められているのでしょうか。
どこかで語ってくれる事を期待しています。


「『スパイを追ってるみたいでカッコええな』と思えるからや」という有栖川節から
「世界なんかじゃなくて、目の前にある現実の社会を相手にしているから」といった名言まで、
相変わらず印象深いセリフが多く登場し、作品に華を添えていたと思います。