年末年始は何かと時間を持て余す・・・そんな人も多いハズ。
私は本を4冊入手してきて準備万端です。
今回紹介するのは麻耶雄嵩
さんの長編です。
大学のオカルトサークルが雨の中、10年前に連続殺人事件の舞台となった山中の館を夏合宿で訪れる。
しかし、合宿の最中にメンバーの1人が刺殺体で発見され、
更には大雨で山と下界を結ぶ橋が壊れ、下山する事が出来なくなり、携帯電話も圏外。
一行は殺人犯が潜む館に閉じ込められてしまう。
そんな中、外部犯を主張する上級生と内部犯を主張する下級生、2人の素人探偵が捜査を始める。
というクローズド・サークル物です。
序盤・中盤の非常にゆっくりした進行が特徴です。
事件が起き捜査を開始するものの、なかなか手掛かりを掴めません。
本当に事件を解決出来るのかというもどかしさも感じます。
そこで清涼剤ともなるのが館内で起こる小さな違和や事件の数々、
10年前の殺人犯の痕跡、サークルメンバーが犠牲となった過去の事件です。
それ等が今回起こった事件の真相を少しずつ照らし、
最後には全てが1つに繋がるという爽快感溢れる解決編が待っています。
次々と過去・現在の事実が明かされる終盤の怒涛の展開は
手に汗握り、最高に混乱でき、驚愕するでしょう。
個人的にこの作品の1番の魅力は
本文に書かれている事の全てが事件解決に於ける重要な情報と言っても過言ではない
というところです。
作品の背景や登場人物の過去というのは物語に深みを出す為のスパイスである事も多いですが、
この『蛍』に関しては全てが必要不可欠であり、全てが揃ったからこそ事件が起き、
全てを解き明かさないと真相へは到達出来ない作りになっています。
ある意味最初から最後までクライマックス!
2度驚かされる物語の全貌に、読了して直ぐ読み返したくなる最高の1冊です。
ネタバレ感想
『蛍』で最初に語りたくなるのはやはり、作者が仕掛けた2つの罠ですよね。
諫早と長崎を誤認させる視点のトリックは、中盤での
平戸の台詞「茄子クンは居てはいけない位置だった」でピンと来た方も多かったと思います。
しかし松浦に関しては見抜けた方は少ないのではないかと考えています。
私は当然見事にやられました。“やられた”はミステリに於ける快感ですね。
本文に入る前、人物紹介から罠を張っている作品は珍しいのではないでしょうか。
登場人物の性別や年齢等を読者に誤認させるというのはミステリの定番だと思いますが、
その逆、読者だけが真実を知っている状況というのは非常に珍しいでしょう。
読者は長崎視点で物語を読み進める訳ですが、
彼だけは真実を知っているというのが非常に用意周到です。
また、それに止まらず解決に於いて“登場人物全員が誤認している”という状況が
最後の最後、犯人を特定する際の決め手になるというのも
設定を活かし切っていて作者に拍手を送りたくなります。
何度でも読み返したくなる“私の好きな長編ミステリ”ベスト1です☆
最後は土砂崩れに巻き込まれ、生き残ったのは1人。
というオチですが、生き残りは誰かという考察をしているサイトがありました。
簡単に紹介させてもらいますと
バレンタイン八重奏団及びアキリーズに所属するメンバーの苗字はそれぞれ
石川県と長崎県の市名が由来となっているようです。
そして10年前の事件の生き残りである加賀は石川県の旧国名であり、
それに対応するのは現在の県名となっている長崎であり、生き残りも彼である。
といった具合です。
ミステリファンの本気を見た気がします。
