この作品を読むにあたり、事前に
「ホラーとミステリ両方の要素を含む」
「本格ミステリに分類出来るのかどうかが話題になった」
「しかるべき箇所に“読者への挑戦”を挿入すれば犯人当て小説になる」
という予備知識を仕入れ、それが購買意欲になりました。
『新本格ミステリ』の先駆者、綾辻行人
さんのホラーミステリです。
ホラーというジャンルには正直興味が無いのですが、
私的見解では対極に位置するホラーとミステリが
どういった絡みをし、見事に融合する事が出来るのだろうか?
つまりは「気持ちよく終われるのか?」という点にそそられたワケです。
「デカッ!」というのが最初の感想です(笑)
文庫版が上下2巻に分けて収録されているのは知っていましたが、
ハードカバー1冊に纏めるとこれ程とは。。
650ページ超の長編ですが非常に読みやすく、
いつの間にかしおりが大量のページの下敷きになっています。
物語は2部構成となっており、その上細かくチャプター分けされているので
短時間でキリのいい場面まで読める為、電車内等の移動中の短い時間での読書にもオススメです。
その際は文庫版を購入するのが吉。
物語の核となるのが主人公の通う中学校に降りかかった呪いです。
呪いが根底にあり、それ故に主人公はある疑問を抱えながらの
学校生活を送る訳ですが、ここが面白い。
主人公は呪いに関して全くの無知どころか存在さえ知らず、
本文を読み進めるに従って読者と共に少しずつ情報を得ていきます。
つまり主人公と読者の持つ情報が完全に一致するので、主人公の疑問は読者の疑問となり、
置いてけぼりを食うことなく、さも読者自身が物語の中で
謎に挑んでいるかの様な臨場感が生まれてきます。
呪いというホラー要素が核としてあり、そこから生まれる日常の違和を起点に
“何が起こっているのか?”
“何故それが起こったのか?”
という風に展開され、最終的には
“どうすれば呪いを打ち破れるのか?”
“その鍵を握っているのは誰なのか?”
と、物語の骨格を明るみに出し、呪いの謎を紐解くまでの道程をミステリ要素として
順々に分かり易く提示されているので、普段ミステリを読まない方でも楽しめると思います。
実際に読むまではホラーとミステリが曖昧になるのでは?という不安もあったのですが、
両者の間にはしっかりと線引きがしてあり、どっちつかずという場面はありませんでいた。
それでいてイントロからエピローグまで、ホラーの不気味な雰囲気とミステリの謎解き・解決の爽快感は
しっかり共存していて、上手く纏めたなーと拍手を送りたくなる作品でした。
大きな仕掛けが1つあるのですが、それも様々な所に伏線が散りばめられているので、
上級者の方はそっちも是非見破ってみてはどうでしょうか。
ネタバレ感想
『十画館の殺人』でも思いましたが、綾辻さんは2つの世界を扱うのがウマいですよね。
思い返せば恒一と怜子の会話や、父陽介からの電話等に伏線が張ってあったんですが、
スラスラと読めてしまうのも手伝って、死者が誰かを考える事も忘れて読み進めていくうちに
正体が明かされてしまい、思わず「あ~~っ!」と声が出ました(笑)
家と学校という互いに干渉しないと思っていた両世界が、
重要な意味を持ちながら重なっていたワケです。
結局事件は全て呪いのせいで、そこに関してはミステリが介入する余地が無い訳ですが、
物語を紐解く過程にミステリ要素を絡ませる事で読者を引き込み、
段階的に全貌が見えて来るという演出になっていると思います。
記憶の改竄という理詰め出来ないホラー要素も展開に含みをもたせ、それがあるからこそ
ミステリ要素の普段とは異なる用い方が実現し、この作品の雰囲気が完成したのだと思います。
ホラーとミステリがお互いを引き立てた、新しい形の素晴らしい作品でした!
義眼で「見えないモノが見える」なんて厨二病なのか?とか
独りぼっちで可哀想・・・とか
『死の色』が出てくるまでは「まさか彼女が・・・」とドキドキしたりとか
小っこくて可愛い不思議な女の子・鳴の描かれ方も魅力的でした。
しわくちゃの名札の真相は笑ったなー
