子育ての面白さは、成長するにつれて日々少しずつ
ボキャブラリーが増えていくところにあると思っている。
そして子育てには、乗り越えるべき試練がときどき訪れる。
このときがそうだった。どこの家庭内にも起こりがちな
トラブルのひとつで、我を忘れるほど取り乱した数日間が
あったんだ。この曲の歌詞は、そのときの気分がそのまま
あふれ出たものだ。
”なんてこった、この最悪の気分を全部ぶちまけてやろう”
という感じだった。おかげで、これを書き終えた後は、
まるで精神科医のソファーで診察を受けたかのような
気分になっていたよ。
僕がひどく落ち込むことは滅多にないんだけど、
このときはリアルに重荷を課せられた気分だった。
この曲の歌詞の基本的なアイデアは、
自分の悩みをブルース調で語るというものだ。
詩や音楽の送り手には、作品を通じて何かを投影し、
表現する能力、受け手にあらゆる種類の感情を高揚させる
能力が要求される。まさに、表現こそがすべてなんだ。
優れた教師が作文のときに、”伝える”のではなく”表現しな
さい”と指導するのには、そういった理由があるんだよ。
僕はよく、曲を書くのは精神科医と会話するようなものだと
言うんだけど、この曲の制作過程もまさにそんな感じだった。
悩みや考えを吐き出して、自分の何がいけなかったのかを
考える。でも答えは、”I Don't know”だ。
( 電子書籍 PAUL McCARTNEY THE LYRICS )