1972年に盗まれたポール・マッカートニーの
ヘフナー・ベース・ギターは51年後に見つかり、
ポールの手元に戻ってきました。
このベースギターに関するドキュメンタリー
『Paul McCartney: The Hunt For The Lost Bass』が
英BBCで先日放送されたのですが、
その内容にホークウインド(Hawkwind)の創設者で
バンドリーダーのデイヴ・ブロック(Dave Brock)は
怒りと落胆をあらわにし、
「頭にきたよ。これはバンドに対する侮辱だ」と語っています。
ポールはビートルズの2度目のハンブルク遠征中の1961年、
18歳の時に、ハンブルクでこのヘフナー・エレクトリック・
ベース・ギター「ヘフナー500/1 ヴァイオリンベース」を
購入しました。ポールはバンドの初期のライヴやデビュー・
アルバムを含む初期のレコーディングで使用しました。
ウイングスがロンドン各地のスタジオで『Red Rose Speedway』をレコーディングしていた1972年10月、
ウェスト・エンド・ロンドンのノッティング・ヒルに近い
ラドブローク・グローブのケンブリッジ・ガーデンズに
駐車されていた、ウイングスの機材を積んだトラック/バンから複数の楽器が盗まれました。
そのうちの1本が1961年製ヘフナー・ベースでした。
ドキュメンタリー
『Paul McCartney: The Hunt For The Lost Bass』は、
予想外の展開として、地元の住人だったホークウインド、
特に彼らのローディーで、後に電子音奏者となる
マイケル “ディクミク”・デイヴィスを
有力な容疑者として名指ししています。
当時その一帯は戦後のスラム街で、
不法居住者、労働者階級の家族、ヒッピーのクリエイター、
そしてホークウインドのようなバンドが暮らしていました。
ディクミクの地下アパートは、
バンが停められていた場所のそばにあったという。
このドキュメンタリーの中で、
このベースを管理していた元ウイングスの
サウンドエンジニア/ローディーのイアン・ホーンは、
「(ウイングスのクルーメンバーである)トレヴァー(ジョーンズ)は、ディクミクのことを、ちょっと怪しいと思っていた」
と言っていますが、その裏付けは示せないまま、さらに
「自分も、あの連中の誰かだという気はしていた。
みんな僕達がポールのために働いているのを知っていたからね」と続けて、さらにホーンは、
自分とトレヴァーがレンチを手にディクミクの部屋へ押し入り、中で驚いた様子のディクミクを見つけたものの、
ベースやウイングスの他の機材は見当たらなかった、
と振り返っています。
ブロックは英Classic Rockの取材に応じ、こう話しています。
「本当にそうだったのか?
俺には大げさな作り話にしか聞こえない。
1972年の俺たちはものすごい数のツアーをしていたし、
その時期はロンドンにいなかったかもしれない。それに、
もしレンチを持った2人組がディクミクの部屋に押し入って、
“ポール・マッカートニーのベースを盗んだ”
なんて責め立てたなら、
俺たち――バンドやマネージャーのダグ・スミス――は
間違いなく彼からその話を聞いていたはず。
でも、そんな話は一度も聞いていない。俺は信じないよ。
(ドキュメンタリーの中でホークウインドが
“アンチ・ビートルズとして有名で、
アンチ・ビートルズの曲を作った”と主張しているが)
まったくのデタラメだよ。
メンバー全員が『Magical Mystery Tour』や
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を
持っていたと思う。レミーはビートルズが大好きだったし、
彼にとってロックンロールのヒーローだった。
アンチ・ビートルズの曲……
何を言っているのかさっぱり分からないね。
(ドキュメンタリーの中で、
盗難の動機として、もう一つ挙げられたのは、
ホークウインド自身が直前に約1万ポンド相当の機材を
盗まれていたということでした)
それは(1972年5月の)Bickershaw Festivalの時の話だ。
機材もバンも盗まれた。でも、だからといって
他のバンドに同じことをやり返すなんてありえない。
俺たちは格好の標的なんだよ。反体制的だし、
ヘルズ・エンジェルスとも付き合いがあったからね。
ピンク・フロイドみたいな連中には、
こんな扱いはしないだろう」
ドキュメンタリーの終盤、ベースは見つかり、
ポール・マッカートニーがその楽器と再会を果たす頃には、
ホークウインドは完全に潔白だったことが明らかになります。
ヘフナー・ベースを盗んだのは
ジョージ・グレニスターという人物で
「小遣い稼ぎになるだろう」と軽い気持ちで盗んだという。
しかし自分が手にした楽器の正体に気づくと、
このヘフナー・ベースがあまりにも有名すぎて売れないと
気づきます。そこで彼は、ラドブローク・グローヴにあるパブ「アドミラル・ブレイク」の店主に、
ビール数杯と引き換えにヘフナー・ベースを渡しました。
ブロックはこう続けています。
「30分で済むような退屈な話だったから、
何か刺激的な要素を加える必要があったんだろう。
ポール自身は、この件にそこまで関わっていなかったと思う。
制作者たちには、こう言ってやりたいね。
腹を立てているファンがたくさんいるし、
そして、もしディクミクがまだ生きていたら、
間違いなくを訴えていたはずだって。
見終わった後、本当に腹が立ったよ。
ディクミクに対しても失礼だし、バンドに対しても失礼だ。
しかも結局、
そんな演出をする必要なんてまったくなかったんだよ」
( 2026/05/01 amass )元ネタに写真あり