今日、7月7日、日曜日に予定通りオンライン講義をいたしました。多数が参加していただき、誠にありがとうございました。参加者の皆様にお礼申し上げます。

 

今日のオンライン講義では、インターネット回線が安定しておらず、ズームでスライドを共有しようとしても、スライドを共有することができませんでした。やむを得ないので、スライドを提示することなく、声のみで講義いたしました。

 

この点、参加者の皆様にご迷惑をおかけしたのですが、今回は無料ということもあり、ご容赦頂けたらと存じます。

今日の講義の一部をここに紹介いたします。

 

最初に刑法学における犯罪について説明し、いわゆるテクノロジー犯罪が、刑法学における犯罪か否か検討いたしました。概ね下記の2つのブログにアップロードされているような事項になります。

 

 

 

 

その後、警察の機能について、司法警察と、行政警察との相違点を中心に説明いたしました。

 

司法警察は、刑事訴訟法に法令上の根拠があり、犯罪の捜査、容疑者の摘発などが職務になります。

 

一方、行政警察は、警察職務執行法などに法令上の根拠があり、犯罪の予防などが職務になります。警官が、パトカー、自転車などでパトロールしていますが、このようなパトロールは行政警察になります。


テクノロジー犯罪なるものの被害について、警察に相談するとき、通常、自称被害者は司法警察を期待いたします。即ち、警察が容疑者を摘発し、テクノロジー犯罪なるものが解決するというようなことです。

しかしながら、現実には司法警察でなく、行政警察が発動します。精神保健福祉法第23条には、警察官の通報について規定されています。具体的には下記の規定になります。

 

警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。

念のために明記いたしますが、精神保健福祉法23条に基づく通報は行政警察になります。
 

自称被害者が警官に何を話すかによるのですが、テクノロジー犯罪の被害について、その人に起きた事項を詳細に伝えたときには、通常、警官は精神障害があると判断することになります。さらに、自傷他害のおそれがあるかないか、ということになるのですが、話しの内容によっては、自傷他害のおそれありということで、保健所に通報することになります。その後、精神科医の診断を受け、強制入院すべきか否かということになります。

 

また、強制入院に至らない場合であっても、警察が、この相談者が何かを実行するかもしれないと懸念して、相談者の動向を探るとともに、相談者が外出したときに、その周囲をパトロールする事態が十分に想定されます。

 

このようなことがあると、相談者によっては、誰かが尾行している、監視しているというような監視妄想、注察妄想が悪化いたします。

このようなことを考慮いたしますと、テクノロジー犯罪の被害について、警察に相談しても、相談者にとって良いことは特にありません。強制入院は、本人の意思に反しているという点で本人に不利益ですし、さらに、強制入院では自由を失うという点で本人に不利益ということです。

 

私としては、テクノロジー犯罪のようなことについて、警察に相談することは勧めないということです。

 

念のために付言いたしますが、通常の犯罪、典型的な犯罪、刑法に規定する犯罪の被害にあったときには、警察に相談すべきですし、緊急性があるときには警察に電話というっことになります。

 

「テクノロジー犯罪」という用語には、「犯罪」という言葉が使われているのですが、この言葉は刑法学における犯罪という意味で使われおらず、実に紛らわしく、誤解を与えやすいものがあります。

 

なお、警察に被害相談という点については、参加者の一部から反論があった旨も記載いたします。この参加者の見解によると、警察に記録が残るのは良いことであり、さらに、資料を持参して、警察に相談したときには、強制入院にならないので、大丈夫ということです。警察に持参する資料がどのようなものかということになりますと、私が分かっていないので、省略いたします。

 

今日の講義では上記以外についても言及しているのですが、長文になったので、これぐらいにしておきます。

 

最後に今後の予定になります。

 

7月14日、日曜日は所用があり、お休みになります。

7月21日、日曜日はオンライン講義をいたします。