「痩せましたねー!」
ちょっと久しぶりのお客様や知り合いから、最近よくそう言われる。
中にはしばらく見ない間に私が病気でもしたのかと心配そうな顔で遠慮がちに聞く方もいるし、先日など、さほど久しぶりでない両親にまで言われる始末。
実際のところ、体重はこの数年変わっていない。
でもおそらく加齢とともに顔の筋肉が落ちて、頬がこけた感じになってきたのかもしれない。
そう言われれば自分でもちょっと顔が細くなってきて、大昔に亡くなった叔父や祖父に似て来たような気がするか。
確かに15年くらい前までの私は、結構肥えていた。
ダイビング屋だった若い頃は太る暇などないほど肉体労働していたのが、時計屋になった途端に運動不足。
考えてみれば時計屋ほど運動不足になりがちな商売もない訳で、、、日によっては朝から晩まで作業台に凭れかかったまま。
ピンセットや時計を持ち上げるのに力は要らないし、力仕事らしい仕事もない。
吉祥寺に移ってくる前は、都合の悪いことに店の三軒隣に知り合いがやってる飲み屋があった。
「ねぇー、マサー、早く店閉めておいでよー。 ちっともお客入ってなくて暇なんだよー。 あ、こちらのお客さんもどうですか、ご一緒に!」
彼女は地元の中学校時代の知り合いなのだが、自分の店の暇な日など人が仕事している店に入って来て、私のお客さんにまで営業する始末。
「わかったわかった。 後で必ず寄るからさー。」
そんな感じで毎晩その店に引っ掛かり、、、ビールに始まりバーボンウィスキー、お決まりのステーキセットで腹ごしらえ。
その後顔見知りの常連客と駅前に移動して居酒屋で焼酎、日本酒、そして最後の締めに、ラーメン。
そんな生活が10年ほど続いて気が付けば、、、体重は10キロ以上増えていた。
これはまずい!
吉祥寺に移転してマサズ ジャンクヤードがマサズ パスタイムになり長女が生まれた頃、ダブついたお腹を見ていよいよ気が付いた。
しかしスポーツジムに行ってる時間はないし、、、うーん、どうしたもんか?
仕事あとに自転車で多摩湖まで走ったり水道道路を歩いたりもしてみたが、元来飽き性でまともに続かない。
それに吉祥寺に来てからも早々に帰り道の飲み屋通いが始まっていて、状況は悪化するばかり。
そんなある日、新入りのNが加わった。
Nは身長183センチ、体重はおそらく60キロくらいの背高ノッポなのだが、、いつも昼飯を食べていないことに気が付いた。
何で食べないのか聞くと 「食べると眠くなっちゃうんですよねー」 と言う。
確かに私も食後に眠くなるタイプで、昼食後の一時はボーっとしていることが多かったのだ。
よし、これだ!
さっそく翌日から、私も昼食を抜き始めた。
最初のうちこそお腹が空いて辛かったけど、意外とじきに慣れた。
たまにお客様からの差し入れなんかがあった時に食べ物を口にすると猛烈に眠くなって、「こりゃダメだ―」
そのうち本当に食べない方が快適になり、これが数年続くとみるみるうちに体重は減少。
朝は思いっきり食べて来るし夜は相変わらず飲み屋通いなのに、気が付けば店を始めた頃の体重に戻っていたのだ。
それから更に10数年。
今の店に移ってきてからもしばらく昼食抜きの生活は続いていたが、5年ほど前から、古傷の頸椎や肩こりが酷くなってきたのをきっかけに、軽い運動を開始。
体幹の筋肉の衰えも症状を悪化させると言われ、眠くならない程度に昼食を食べるようにし始めた。
頸椎の傷みや肩こりに効く、それでいてスポーツジムに行ったりしなくても出来る軽い運動。
私が始めた 「日課」 は、ぶら下がり健康棒と、バランスボールのみ。
ぶら下がり棒は当初肩こりを緩和するためにぶら下がっていたが、そのうち物足りなくなってきたので懸垂もするように。
バランスボールははじめのうち座っていることさえできなかったが、今は朝晩の歯磨きの間ずっと座っている。
どうということのない、本当に短時間の日課だが、現在、首の傷みや肩こりとは無縁だし、昼食を食べていても体重は高校生の頃に戻ったまま。
時計屋に限らず、運動不足でお悩みの方には是非ともお勧めしたい。