昨年10月以降、爆発的に増えつつある「サービス付き高齢者向け住宅」(通称「サ高住」、厚労省・国土交通省は「サ付住宅」と呼ぶようですが…)というのがございます。
一昨年以来、介護事業にも本格的に関わるようになりまして、現在弊社は関東-中部圏内で6件の「サ高住」プロデュースに取り組んでいるところです。
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(写真と本文内容に関係はございません)
サービス付き高齢者向け住宅とは?
http://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/service/
HOME’sさんのHPより…
サービス付き高齢者向け住宅とは、日常生活や介護に不安を抱く高齢の単身者や夫婦のみの世帯のために、バリアフリー構造等ハード面の一定基準を満たし、さらに介護・医療と連携したサービス面も提供する施設です。
2011年10月20日の改正法施行により、これまであった高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)の3施設は廃止される方向となり、サービス付き高齢者向け住宅に一本化されました。
サービス付き高齢者向け住宅では、これまでの3施設では不足・不明確だったハード面の基準が明確化されたことに加えて、特に問題視されていた介護サービスについての基準も明確に設けられるようになり、注目を集めています。
とはいえ、一定基準を満たしただけの物件から、介護付有料老人ホームに近い介護サービスも提供している物件もあり、サービスの充実度は施設によってさまざまです。気になった物件があれば、必ず詳細は施設に確認しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅の特徴は、下記の通りです。
- 住宅(ハード)に関する基準の内容
- 原則として25㎡以上
(居間・食堂・台所その他の部分が、高齢者が共同して利用するために十分な面積を有する場合は18㎡以上でも可)
- 原則として台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室が設置されている
(ただし、共用部分に共同して利用するための台所、収納設備、浴室が設置され、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保されている場合は、各戸に台所、収納設備または浴室を備えなくてもよい)
- バリアフリー構造であること
(手すりの設置、段差の解消、廊下幅の確保など)
- サービスに関する基準
- 最低限、安否確認と生活相談サービスの提供をしており、ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐している必要がある
※ケアの専門家とは
社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員
医師・看護師・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員
ホームヘルパー1級または2級保持者
- 契約に関する基準
- 賃貸借方式の契約と利用権方式の契約があるが、いずれも長期入院などを理由に事業者から一方的に解約できないことになっているなど、居住の安定が図られた契約内容になっている
- 契約者に請求できる金銭は、敷金、家賃・サービスの対価のみ。権利金やその他の金銭を請求することはできない
- 家賃・サービスの対価の前払金を請求する場合は、
- 前払い金の算定の基礎、返還債務の金額の算定方法を明示する
- 入居後3カ月以内に契約を解除、または入居者が死亡したことによる契約終了の場合、(契約解除までの日数×日割計算した家賃等)を除き、前払い金を返還する義務がある
- 事業者は返還債務を負うことになる場合に備えて、前払金に対し、保全措置を講じておく必要がある
- サービス付き高齢者向け住宅の工事完了前に、前払い金を請求することはできない
(以上 転載)
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いわゆる、ホテルコストを自費負担として、外部から受ける介護・医療サービスは介護保険もしくは健康保険を利用していく。(もちろん介護保険を越えた部分は自費となるのですが・・・)
地域完結型24時間医療介護連携の中核として、地域に密着したサービスを提供し…云々。
それについては数多くの方が取り上げられているので、ここではやや違う目線から記してみようと思います。
制度が始まり、雨後のタケノコのようにサ高住が増えて行くに従い、介護・医療を継続的に提供していこうとすることが目的となる「介護事業者」や「医療機関」と、この住宅を建てるべく売り込みをされる建設業の方々との温度差があるように思います。
現在、公共事業が大幅に縮小しきってしまった建設業。国土交通省関連の補助金が受けられる唯一の事業と言えるのがこの「サービス付き高齢者向け住宅」です。
① 建設費の1/10(改装なら1/3)の補助金
② 前倒し償却可能
③ 固定資産税等の税制優遇
④ 低利融資対象事業
というポイントを活かし、遊休資産の活用、相続税対策等々に利用価値の高い制度です。
ここからは、先日ある医療機関の院長のお話しを伺ったことを元に書いていきます。
その先生は自宅の周辺に広大な土地を持っていらっしゃっいます。
当然、高齢を迎えた先代の持ちものですから、相続税の心配は日増しに募っております。
某大手住宅メーカーの提案があり、サービス付き高齢者向け住宅というものを知り、診療所とのシナジーも図れることから早速契約をして建設にとりかかった。
建設費は約2億円。
18㎡の部屋が27室。デイサービスと在宅診療所を併設しており、サ高住としては立派なものが出来上がった。
運営は全て医療法人が行うのだが、デイサービスを取り仕切る人材が欲しい。
立地や地域性など考慮すべきポイントは数多くあるのですが、やはり致命的なのは軸になる人材を確保していない点にあります。
デイサービスというのは事業分野が幅広く、医療法人内で完結できるまでには相当ノウハウを蓄積していないと、ぶっつけ本番というのはリスクが高い。この場合は、いっそのこと既存の外部事業者をテナントで入れて、そこに委託する形で行う方が安全かと考えます。
そこで引っかかってきたのが、建屋の償却コストです。
院長先生のお話では、「法人内で内製しないとコストが出ない」とのこと。外部事業者に委託運営されるのは通常よくある話なんで、私の頭の中は「???」。
この事業は住宅部分の賃料を低めに設定しないと成り立たないことを御理解いただいていない。(某大手住宅メーカーは説明していないのでしょう)医療機関が運営するからこそ垂直統合が出来て、トータルで効率的な経営が実現できることを見失っていらっしゃるようでした。
また、どうもかなり割高の建屋を建てられたご様子。ちなみに、このとき同席していた私の知人は地元事業者ですら、そこで建てるとその半分以下で建てられたんです。仮に建設コストが半分なら(当然補助金も半分ですが…)そのぶん損益分岐点も下がりますから、おのずと利益体質が強まり、それをもとに高いサービスが提供できる→入居者は増える…といった正のスパイラルが実現できるということです。
「事業」として継続していくことを重視するなら、コストを如何に低くしておくかという部分は避けられません。
冒頭に書きました「温度差」というのはここです。
補助金というニンジンに目がくらむと、その後の事業所運営において避けがたい重荷を持ってしまうことが往々にしてございます。
まして、今国会で消費税増税法案が通った暁には、間違いなく医療機関・介護施設の「損税」も膨らんでまいります。どうしても労働集約型になっていく介護現場で人員不足は、どうしても低めに安定してしまう人件費にも問題があると指摘されています。いい人材を得て、寄り良いサービスを実現するには、本当に配分していかなければいけない費用は「人件費」だと思うのですが・・・。
もちろん建屋を建てる事業者も労働集約です。違法建築や手抜き工事は論外ですが、大手に依頼するのと地元業者とで、なぜこれほど違ってくるのでしょうか?
このあたりも、今の日本をむしばんでる病巣のように思えてなりません。
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サ高住…建てることに気が行くあまり、実働で入る介護事業者のあてが無いのに勧められるケースも多いと伺っています。
(写真と本文内容に関係はございません)