先日、ある企業の医師募集担当者と電話で話した。
そこはいわゆる「コンタクト眼科」の募集をする部署。担当課長さんと意見交換する中で、本当に人の動きがなくなってきているという感触を持たれていた。
実は、そのことは特定の診療科にあるわけではなく、およそすべての診療科にわたって見えることのようだ。
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医師転職市場の興隆は「コンタクト」と「美容」が牽引したといっても過言ではない。
医療とビジネスの交わるニッチに位置づけされる両者は、バブル(あ~懐かしい響き・・・)から”失われた10年”といわれる時期にそのピークを迎えた。
方や「ユーザー=患者」と見立てた保険診療をベースにするコンタクトビジネスに対し、枠にはまらない自由診療を売り物に”美”を追求した美容整形。
どちらも医師養成過程からは外れた存在ながらも、桁はずれた収益性を売り文句に人材募集を行い、「医局」主体であった医師転職市場にあって存在感を増していた。
平成16年、現行の臨床研修制度が実施されるに伴い、大規模な医局引き上げによる関連病院の医師不足が発生。医局の引き上げにあえいでいた民間病院が、緊急対策として注目したのが民間人材紹介事業者である。それまではどちらかといえば日陰の存在だった医師紹介事業が俄然日の目を見るとともに、事業者の売り上げもうなぎのぼりとなり、競合事業者も激増した。
折からインターネットの発達と相俟って、ウェブで登録を勧誘し、紹介で手数料収入を得るビジネスモデルが確立することになる。
超売り手市場となった医師転職市場では、高額求人が軒を連ねていたのもこのころである。
ところが、現在はどうであろうか。
当時頻繁に見受けられた「年俸3,000万!」なんて求人はとんと見かけなくなった。
もちろん医師の平均年収が目に見えて下落したわけではない。
診療報酬の改定で、診療科の間に存在していた”不平等感”が著しく低下したこと。(たとえばコンタクト検査にかかわるものが典型である)
更に、出来高中心から、DPCなど包括払い制の導入による効率化、早期退院への誘導、各種加算による機能評価、そして今年の改定の目玉であった”地域医療と介護連携”などの医療機関の収入構造を変えることで、実働として何が出来るかが問われる時代になったことが大きい変化であろう。
もちろん医療サービスの受け手である患者側の意識の変化も大きく影響している。医療訴訟のリスクにどう対峙するか。病院、医師双方がそれに対する意識を変えてきた。
そうした広い観点で捕らえると、医療技術の向上とチーム医療の研鑽と医療文化の伝承などもろもろを図らないと(図れないと)医療ニーズを満たしていけないということにもなり、それが昨今の旧帝大系医局やブランド私大医局への回帰現象にも現れているように思える。
病院側も医師も医局も、相互に選び始めた・・・選ばないと生き残れなくなった。
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といいながらも、求人自体は無くならない。むしろ需要は増えているのだが、その募集内容は進化している。
たとえば、内科が主体の開業医において、週1コマ程度の代診を募集するとして「内科」はいらない。あえて「皮膚科」「小児科」の募集を行う。
その業務内容は「皮膚科(小児科)が診れる・・・」ではなく「皮膚科(小児科)のプロとして診る」という点を重視する。
代診に入る先生方からすれば、急性期の病院で培う専門領域を、常勤先とは異なった視点で診療する場を持つことで自分ならではの経験を得て、スキルを磨くことができる。
診療所の方は、とかくマンネリ化しがちな日常の診療に新しい風を入れることにつながり、仕組みとして常に受益者(=患者)目線の診療を実現できることになる。
これがそこそこの規模の病院ならば、○○大学の××教授の専門外来が毎週何曜日で・・・という取り組みにあたるのかもしれないが、功成り名を遂げた超ベテランより、伸び盛りのイケメンドクターのほうが、プライマリーに軸足を置く医療機関の場合は具体的な集患につながるのである。
つまり、人材を提案するわれわれのほうも、そういった個別事情にどれだけ歩み寄って、実のある提案ができるかが鍵となっているのである。
そうか・・・総合的に一定のレベル(もしくはモチベーション)を維持できて居るのが前提で、その上に個性化する得意分野を積み上げることが次の成長につながっていく。医師個人も、組織としての医療機関もその点では同じなのだ。だとすればそれは医療周辺に位置する我々もそうなのだろう。
一昨日、マスコミがあおりまくったAKBの総選挙ではないが、同様な構図がわれわれの業界にも突きつけられているのだな・・・と感じた。
転職は単純に保守化している(=動きが少ない)のではなく、今は腰をかがめて矯めを作っている。そんな時期なのかもしれない。