ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

悪性神経膠腫の摘出は、ある意味ではシンプルです。

肉眼で腫瘍と正常脳の見分けがつきにくいので、基本的には画像を頼りに腫瘍部分を切除するしかありません。

 

つまり、術中ナビゲーションシステムを利用し、手術開始時に決めた範囲の脳を腫瘍ごと摘出するような形です。

具体的には、まず脳の表面が見えた時点で、ナビゲーションシステムを利用し、

脳の摘出範囲の四隅などにマーカーとなる何かを刺していきます。

 

これをフェンスポストと呼んでいますが、

腫瘍が存在する深さに長さを合わせたチューブなどを腫瘍を囲うように刺していくのです。

 

この作業が終わった後は、このフェンスの間を繋げるように脳を切断していきます。

そうしてブロックごと脳と腫瘍を摘出します。

 

この方法で腫瘍が丸ごと摘出できればよいのですが、

これを行うためには一つの前提が必要になります。

 

それは、切除する脳の範囲にeloquent areaが含まれていない、もしくは含まれていても既に症状が完成してしまっている場合です。

 

eloquent areaとは、障害することで麻痺や失語などのはっきりとした神経症状を起こしてしまう脳の領域です。

たとえば、運動野などがこれにあたります。

 

Bさんの場合は、幸い、腫瘍が前頭前野にありましたので、

eloquent areaにはかかっていなかったため、この方法で腫瘍を脳ごと一塊に摘出することができました。

 

もちろん、前頭前野にも脳の機能はあります。

Bさんの場合はそこに腫瘍ができたことによって、注意障害や遂行障害など、様々な高次脳機能障害が起きていました。

 

したがって、この部位は切除しても問題がない脳の領域、ということではないのですが、

麻痺や失語、視野障害をきたすようなeloquent areaと比べると、切除しても症状が日常生活に与える影響が少ないということはできます。

 

今回の場合は腫瘍が大きく、すでにかなり強い高次脳機能障害が表面化していたため、

腫瘍を若干周囲の脳ごと摘出しても新しい症状はでないと見込みました。

 

摘出は予定通りに終えることができました。

 

 

 

 

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脳神経外科手術に限らず、

手術の皮膚切開は基本的には必要最小限の範囲であるべきです。

 

どの程度を必要最小限と判断するかということについては、術者によって多少の差はあるものの、

開頭手術の場合には、問題なく開頭ができる範囲、ということになります。

 

今回の手術では前頭部に5-6cm四方ほどの骨窓が必要と考えられましたので、

開頭範囲が十分に含まれるような、弧状の皮膚切開をデザインすることになります。

 

頭の手術の場合、顔面に傷を出すわけにはいかないので、基本的に皮膚切開線は毛髪の生えている範囲内となります。

前頭部の手術では通常はおでこの上あたりから、毛髪の生えているラインの内側で耳の前あたりに下ろすような皮膚切開線を描くことが一般的でしょう。

 

皮膚を切開してめくった後は、骨に電動ドリルで穴を開けます。

四隅+αに10円玉程度の大きさの穴をあけました。

 

骨の下には脳を包む硬膜がありますから、骨を外す予定の範囲に関して、この硬膜と骨の間を鉗子で剥がします。

次に、その穴と穴を繋ぐように電動ノコギリで骨を切断していきます。

 

骨が外れると、目の前には硬膜があります。この硬膜を切開すると、脳表が見えるわけです。

脳表は薄いくも膜で覆われ髄液に包まれており、比較的太めの静脈と、細い糸のような動脈が巡っているのが観察できます。

 

一見、正常な脳表ですが、若干脳全体が腫脹している印象がありました。

 

今回の悪性神経膠腫は脳の内部にあり、周囲を圧迫しているものの、

脳の表面にまでは至っていないので、ぱっと見はほとんど普通の脳と変わりませんでした。

 

 

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手術は全身麻酔の導入から始まります。

通常、総合病院では麻酔導入は麻酔科医師が担当するため、

脳外科医は麻酔導入に関わることはあまりありません。

 

麻酔導入の間、脳外科医は手術準備をしています。

 

悪性脳腫瘍の手術では脳そのものに切り込み、

腫瘍で侵されている脳の部位を必要十分な範囲で切除しなければなりません。

しかし、脳の深部は通常一様にクリーム色をしており、当然ながら部位を示すような標識はありません。

 

腫瘍の外観が明らかに脳と異質であれば良いのですが、見た目ではほとんど見分けがつかないこともしばしばあります。

つまり、術中の肉眼所見というのがあまり当てにならないことが多いのです。

 

術前の造影剤を使用した画像検査では腫瘍と脳の境界が見えていても、

手術中の肉眼所見ではその境界がわからない、ということが多いのです。

 

そこで、術中ナビゲーションという機器を用いることが今では一般的になっています。

しかし、この機械、導入にざっと1000~2000万はかかるような代物です。

どこの病院にでも常備されている、というわけではありません。

 

とはいえ、最近ではかなり導入されている施設は増えてきています。

少なくとも脳の悪性腫瘍手術を行うのであれば、あった方がいい機械です。

 

麻酔導入中、悪性脳腫瘍の手術の場合、我々脳外科医はこのナビゲーション機器のセッティングを行っていることが多いです。

手術計画の最終確認も同時に行うことができます。

 

患者さんに麻酔薬が導入され、気管挿管が終わり、人工呼吸器に接続された後にまず行うことは、

患者さんの体位のセッティングです。

 

いわゆる仰向けの、仰臥位の体位ならば最もシンプルです。

今回の患者さんの場合は腫瘍が頭の前方にあったので、この仰臥位で手術を行うことができます。

 

ただ、一方で、腫瘍が脳の後方にある場合にはそうはいきません。

腹臥位といって、うつぶせの体制にしなければなりません。

 

この体位取りの際に、同時に頭部の固定も行います。

 

頭部固定には通常、3本か4本のピンを頭皮にねじ込み、骨までピンを固定します。

要は、頭蓋骨にまで金属の杭を4本刺して、頭を手術台に固定するのです。

 

日本では杉田式と呼ばれる頭位固定フレームと、

あとは世界共通のメイフィールドという名前のフレームがあり、

この2種類のいずれかが導入されている施設がほとんどです。

 

頭位固定と体位取りが終わった後は、

ナビゲーション機器と頭位のレジストレーションを行います。

 

ナビゲーション機器に実際の頭部の位置を読み込ませるための作業です。

 

このレジストレーションが正確に終了すると、

ナビゲーション機器はポインターの先が頭部の、頭蓋内の、脳内の、どの位置にあるのか、

手術前に撮影した画像上で教えてくれるようになります。

 

ここまで準備が進むと、ようやく実際の手術へと駒を進めることになります。

 

 

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