部屋を出ると、薄暗い廊下に

左を見ても右を見ても先が暗闇に溶けていて見えない

天井には一様光源はあるが、照らしているのはその周りだけで、俺の周りには微かな光してきていない

明るくなれば雰囲気が変わるだろうと思いながら、ゆっくりとあるき出す

それにしてもあれはやはり聞き間違いだったのか

[黙れ!ゴミ共!]

姫の方からそう聞こえた

姫では無いとしたら誰?

近くにいたのは仮面の剣士…………その他の幹部は離れていた

怪しい…………仮面の剣士

誰も声を聞いた事がないらしい

……………間違いない

あの声は仮面の剣士

そんな事を考えながらトイレを出て歩いていると

「やばい………間違えたかも」

薄暗い上に変わらない風景そして考え事をしていたから、曲がる所を間違えたかもしれない

立ち止まり振り返ると、来た道が闇に溶けていて見えない

「進むしかないようだな」

諦めてあるき出すと行き止まりに、そこにある扉から微かな光が漏れてきていた

「誰かいる、戻れるかもしれない」

ドアノブに手をかけると

「………開いている」

更に誰かの会話が聞こえてきた

「………あのカス共、金一封をやるんだから働かないやつは死刑だな」

この声は………間違いない

あの時の声だ

仮面の剣士がいる

「姫………それは言い過ぎでは」

えっ?今確かに姫と言わなかったか

「ザルサ、女王様と呼べと言った筈」

「失礼しました」

「次間違えたら………斬る」

ザルサ?女王様?姫?

「ひ………女王様、お静かに」

「……………どうした」

「誰かいます、捕まえてきます」

どうしよう?やばい、もしかしたら秘密を知ったから殺られるかも、とりあえずこの場を離れないと

ドアノブを離してゆっくりと振り返りあるき出そうとしたが

「こんな所にネズミが一匹………逃げられると思っていたのですか」

ザルサは俺を捕まえると部屋に引き込んだ










「お姉ちゃん………あそこにいるのは……間違いないな、人間の子、向こうから来るとは………お姉ちゃん早く詠唱して、私は邪魔なあの二人を何とかするから」

小さく頷く夜空を確認すると、緋色は血祭と夢枕の前に立った

「大人しくしていれば痛い目にはあわないわよ、で邪魔するなら……………」

「どうしよう血祭………旦那がさらわれてしまう、どうしよう………………」

「落ち着け夢枕………この緋色は私がなんとかするから、夜空をなんとかしてこい」

そんな二人のやり取りを見ていた緋色が

「あら、二人でかかったほうが勝てる確率がほんの少し上がると思うけど……」

しかし血祭は聞こえないふりをして

「私が合図をしたら走りなさい」

そう言うと緋色に向き直り

「血祭…………そんな事出来ると思う?」

「………………………………………」

「黙りですか?なにか反応してください」

「………………………………………………………」

血祭はタイミングを探っていた

僅かな…………ほんとに僅かな

「そっちから来ないなら………」

しびれを切らした緋色がゆっくりと近づいてくる

今だ!緋色の視界から夢枕が外れている

「夢枕!走って!」

同時に夢枕は駆け出すが

「!させません!」

一歩遅れて緋色が反応するが

「あなたの相手は私」

緋色の前に立ち塞がった

その脇を夢枕がかけてゆくのが見えた

諦めた緋色は

「仕方ありません、あなたを秒殺して追いかけたらいいだけの事、さあ来なさい」

「そう簡単には行かないわよ」

















窓に寄り眺めてみる

城は高台にある

下には民家が並んでいて、人が忙しそうに動き待っているのが見える

川を挟んでその向こうには田畑があり、こちらも忙しそうに働いていた

遥か彼方に山脈が見える

空には雲が流れていて

「平和だな」

確かにそう見えるが実は……

ここはピリーニの国の首都である

周りには強国が囲んでおり、いつ戦争が起こっても可笑しくない状況だ

「戦争なんて起こらなければいいが」

ため息をついて部屋に戻ると同時にノックが聞こえて扉が開いて兵士が敬礼をしながら入ってきた

「なんだ」

兵士は敬礼を解くと

「姫様が集まるようにと」

「わかった、すぐに行く」

兵士は再び敬礼しながら出ていった

姫様が何のようだ

周りの国の動きに関することか

特に北の国の動きが怪しいらしいが

それとも

こちらから仕掛ける気になったのか…………

いやそれはない

姫様は大人しい、そんな危険な事はしない筈だ

部屋に入ると既に他の兵たちは集まっていて

「おい早くこちらに来い」

仲間に呼ばれて列に加わった

「何があったか聞いているか」

「いや、ただ集まれとしか」

周りの反応も大体同じであった

前を見ると幹部連中たちが並ぶ、こちらを睨んでいるみたいだ

そしてその真ん中に………姫はいた

明らかに周りとは違うオーラを発している

別次元…………遥かなる高みから見ているような視線で我々普通の兵が近づき難い雰囲気……………そんな姫に俺は恋をしている

勿論片思いだけど……………

こんな俺なんて相手にされるわけが無い

諦めて姫を見ると視線があってニッコリと笑われた気がした

「!」

慌てて視線を外すと隣から

「どうした?そんなに慌てて、仮面の剣士と目でもあったか」

「いや……………なんでもない」

姫と目があったとは言えなかったし気のせいかもしれない

俺なんかに笑う訳がない

それにしても仮面の剣士とは………必ず姫の隣にいる……今もいる

聞いた話では誰も素顔を見たものがいないし声を聞いた者もいないらしい

「みなさん」

姫はゆっくりと前に歩きながら

「初めに、この国が平和であるのは、皆様の日頃の努力であることは間違いないと思います、まずはそれに感謝をしたいと思います」

そう言うと姫は深く頭を下げると、並んでいる幹部連中も合わせた

「しかし周りの国に怪しい動きがあるのも事実、いつ仕掛けられても可笑しくない状況であることも間違いない事実」

確かに北の国の動きが怪しいらしいが

姫はその事を伏せている

「私達も今情報を集めて考えている途中です、もう暫く時間がかかる見込です、わかり次第皆様にお伝え出来ると」

特使を派遣するらしいと噂があるが

「さて皆様には今まで以上に頑張ってもらいたいと、ここに金一封を用意しました」

場内から歓声が上がる

仕方がないことだ

ピリーニの給料は周りの国に比べたらかなり安いらしい

まあそのぶん物価も安いが

「………………黙れ!ゴミ共!………(はっ)」

今、姫が凄い事を言わなかったか

確か……、黙れ!ゴミ共!って……………………いや聞き違いに決まっている

あの姫がそんな事言う訳がないが

俺も大分疲れているみたいだ

それにしてもさっきから仮面の剣士が姫を見ているような……………………………………………

「さて皆様そろそろお静かにしてもらえないでしょうか」

その一言で水を打ったようにしずかになった


「これからもこの国のために頑張ってくれる事を期待しています」

こうして散会した

俺は歩きながら悪友から

「おいこれからどうする」

「とりあえずトイレに行ってくるよ」

「じゃいつもの場所で待ってるからな」

ああと言ってその場を離れてトイレに急いだ

このあと信じられない事に遭遇するとは知らずに