メンバーのお名前や雰囲気をお借りしたお話です。
長編「マジカルストーム」の番外編的なお話になります。
ご興味のある方はこちらからどうぞ ⇒ 「マジカルストーム 1」
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~智語り
「ファイブ、シックス、セブン、エイト! ワンッ!」
先生のカウントでステップを踏む。
今日は公演に向けてのレッスンの日。
さっきから2時間くらいは踊り続けている。
集団でのダンス部分は誰かが間違えるとやり直しになるから大変なんだ。
♪~
テンポが遅くなって躍動的な動きからゆったりと流れるようなダンスへ。
ここでジャンプ。
うん。いい感じ。
「ストップ!」
えっ? せっかくうまくいったのに。
「智。」
「は、はい。」
「ジャンプの高さをもう少し押さえろ。」
「えっ?」
「郷太より高くなると見栄えが悪い。」
「あっ。」
郷太が怖い顔で僕を睨んでる。
そんな・・・。
高く飛んだ方がきれいなのに。
だいたいさっきからミスしてるのだって、ほとんど郷太じゃない。
「智、くさるなって。」
稽古終わり、声をかけてきてくれたのは先輩の滝田さん。
ダンスも歌もうまくて僕が一番尊敬している先輩なんだけど、
最近は後輩の指導や劇団の経営に関わっているようになって
あまり舞台には立たなくなってしまった。
「でも・・・。」
「あいつを主役にしといた方がマスコミ受けがいいんだよ。
わかるだろ?」
「・・・うん。」
郷太の親は誰もが知っている大物歌手で、
郷太も小さな頃からマスコミに注目されている。
「お前の方が実力は上だ。
地道に努力していればそのうちチャンスは来る。」
「チャンス?」
「ああ、いつかきっと主役をやれる。」
「そんな、僕に主役は無理だよ。」
「そんなことないさ。見る人が見ればわかる。」
「そんなこと言ってくれるの滝田さんだけだよ。」
でも滝田さんに褒められるのはすごく嬉しい。
「これからバイトか?
乗せてってやろうか?」
「え? いいの?」
「ああ。どうせついでだ。」
滝田さんはいつもバイクで稽古場に来ていて
帰りの時間が一緒になるとバイト先まで乗せていってくれる。
電車に乗るより早いし電車賃も浮くからすごく助かるんだ。
「おはようございま~す!」
「お、智。おはよう。
今日は早いな。」
「うん。先輩のケツに乗っけてもらった。」
「ははっ、そうか。
レッスンで疲れてるんじゃないのか?」
「全然大丈夫。手、洗ってくるね。」
お店は6時開店だけど、僕が入るのは忙しくなってくる7時から。
今日は少し早く着いちゃったから、席はまだ半分くらいしか埋まっていない。
ガラッ!
「いらっしゃいませ~!」
お通しの小鉢を準備しながら、入ってきたお客さんに声をかける。
「・・・。」
ん? どうしたのかな?
なんか僕を見て固まってるけど。
初めて見るお客さんだ。
サラリーマン風の男性で、年齢は20代後半かな。
大人の男性って雰囲気のイケメンさん。
でも大きな目を見開いてビックリしたような顔は
ちょっと可愛い感じもあって。
ん~。僕、この人の顔、すごく好きかも。
なんてまじまじ見ていたら、突然、その瞳から涙がボロボロと零れ落ちた。
「えっ?」
な、なんで?
「あの~・・・大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかけたら、
「あ、ああ。大丈夫。」
乱暴に目を拭ったお客さんがぎこちなくほほ笑んだ。
「・・・お一人ですか?」
「うん。そう。」
「テーブルがいいですか? それともカウンター?」
「じゃあ、カウンターで。」
≪to be continued≫
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具体的に書き始めたら時間のパラドックス的なので悩み始めちゃった~。
いやいや、考えちゃだめだめ。 絶対に答えは出ないんだから(笑)。