sakebarのコピー スタイル作り
夏から秋へ。凛とした、心地よい寂しさを演出するテクニック。
引用した詩や句はバーテンダー自身の奥行きを物語らせます。
2003_08_20 夏の終わり。これはコピーとして上手く行ったと自分でも思います。
気に入ってしまったので、自分の事務所の残暑見舞いにも使いました。

「東大谷本廟の万灯会や大文字焼きの炎の景色は遥か彼方に過ぎ、
晩夏の夕雲が切なく西山を茜色に染めています。まだまだ昼間は
強烈な陽射しが照りつけ、市内を熱気で覆いますが、夜の涼風が
秋の気配を感じさせます。
涼やかな秋を迎えて安堵する心、遠雷響き炎熱溢れる夏が懐か
しくて仕方無い心、両極に引き裂かれる私の胸の内はさながら
「京にても京なつかしや」と詠んだ芭蕉の様です。
束の間の休息、清涼を求めて貴船に行きました。清滝の流れに
足を浸けて、ぼんやりと時間を漂いながら静かに目を閉じると何
処からか蜩の声が…。目を開けて見上げると木々の間から透き通
る青空が見えました。そうして、夏の果てを楽しみながら、私は
考えます。遠い遠い夏の日の想い出が、繰り返し繰り返し胸を締
めつけるのは何故でしょう…。夏を想う時、寂寞な感傷が心を包
むのは何故なんでしょう…。」
2003_09_03 友人のバーテンダーと話しているといつも中原中也を思い出してしまうのです。

「“並木の梢が深く息を吸つて、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子を、
歩み来た旅人は周章てて見付けた。
山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗っておいた。
風はリボンを空に送り、
私は嘗て陥落した海のことを
その浪のことを語らうと思ふ。
騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿ひの道を乗手もなく行く、
自転車のことを語らうと思ふ。”
中原中也の『逝く夏の歌』です。この時期、
何となく口ずさんでしまう歌の1つです。
夏の終わり、夏の1日の終わりを想う歌ですね。」
2003_09_17 9月。芙蓉がまるでカクテルの様。

「9月初旬のある日、夏の幕引きをするが如くの激しい雷雨が夜半
から続きました。早朝に東山を歩くとまだ雨の雫が所々の木々に
残っていました。風には湿気が無く、涼やかな秋の訪れかなと、
思っていたらば、昼からうだる様な暑さが…。京都市内はこれだ
から嫌なんだよと愚痴り歩く私の頭上に芙蓉が咲き誇っていました。
朝に咲き、夕方にはしぼんでしまう美しく儚い花、芙蓉。白から
淡いピンクに変わり、更には紅色に変わる様子を酒酔いに例えて
「酔芙蓉」っていわれています。晩夏から秋半ばにかけて、花を
たくさん咲かせては1日で散るその繰り返しは、夏の盛衰を想い、
そして暑さはいずれ去る事を惜しみ、秋を迎える私の心と重なり
ます。
ゆめにみし人のおとろへ芙蓉かな
久保田万太郎 」
2003_10_01 コール・ポーター、秋の人。

「秋深し隣はJAZZを聴く人ぞ…
『Night and Day』…
「Night and day you are the one,
Only you beneath the moon and under the sun,
Whether near to me or far…
It's no matter, darling, where you are, I think of you,night and day…
Day and night, why is it so…
That this longing for you follows wherever I go?
In the roaring traffic's boom, In the silence of my lonely room,
I think of you, night and day. Night and day under the hide of me…
There's an, oh, such a hungry yearning burning inside of me,
And its torment won't be through…
Till you let me spend my life marking love to you…
Day and night, night and day…
コールポーターの名作をBGMに、カクテルはいかがでしょうか?
貴男にはマンハッタン、貴女にはコスモポリタン。JAZZが似合う秋本番です。」
2003_10_15 谷川俊太郎の詩もカクテルっぽい。

「『おやつの詩』
短い針が3をさすと
時の鍵がかちっとはずれる
ソナチネの音符が散らばる
子ども部屋への長い廊下…
いちばん好きなものはいつも
いちばんお終いまでとっておいた
その最後のあまみがいつから
ほんの少しにがくなったか
短い針が3をさすと
時がほっと息をつく
天使は羽根のほころびを縫い
ショパンは泳ぎに出かけてゆく…
谷川俊太郎さんの詩です。少しほろ苦く、
そして甘いアップルパイが食べたくなりませんか?」
2003_11_05 バーテンダーは自分にも他人にも厳しい人。中国の文人の様に。

「“林間に酒を煖めて紅葉を焼く 石上に詩を題して緑苔を掃ふ”
中国は唐の時代の古い詩ですが、我々日本人の感覚に溶け込む様な
情景ですよね。林の中で紅葉を集め、焚き火をして、酒を暖める。
石上の緑の苔を掃い落として、詩を書き付ける。山野に佇む寺に秋を
感じて楽しむ風情を主題とするこの句は謡曲「紅葉狩」等に引用され、
広く知られています。しみじみとした秋の趣向と酒のある風景が淡々
と綴られていて、私の好きな詩の1つです。秋を詠うと静かで閑雅な
詩が多くなるのでしょうか。
“蒼苔 路滑らかにして 僧 に帰る
紅葉 声乾いて 鹿 林に在り”
これも唐の詩ですね。蒼い苔と乾いた音を立てる落ち葉のコントラ
スト、そして尾形光琳描く鹿が私の心に浮かびます。深い秋に染まる
京都に風雅な季節がまた巡って来ました。」
引用した詩や句はバーテンダー自身の奥行きを物語らせます。
2003_08_20 夏の終わり。これはコピーとして上手く行ったと自分でも思います。
気に入ってしまったので、自分の事務所の残暑見舞いにも使いました。

「東大谷本廟の万灯会や大文字焼きの炎の景色は遥か彼方に過ぎ、
晩夏の夕雲が切なく西山を茜色に染めています。まだまだ昼間は
強烈な陽射しが照りつけ、市内を熱気で覆いますが、夜の涼風が
秋の気配を感じさせます。
涼やかな秋を迎えて安堵する心、遠雷響き炎熱溢れる夏が懐か
しくて仕方無い心、両極に引き裂かれる私の胸の内はさながら
「京にても京なつかしや」と詠んだ芭蕉の様です。
束の間の休息、清涼を求めて貴船に行きました。清滝の流れに
足を浸けて、ぼんやりと時間を漂いながら静かに目を閉じると何
処からか蜩の声が…。目を開けて見上げると木々の間から透き通
る青空が見えました。そうして、夏の果てを楽しみながら、私は
考えます。遠い遠い夏の日の想い出が、繰り返し繰り返し胸を締
めつけるのは何故でしょう…。夏を想う時、寂寞な感傷が心を包
むのは何故なんでしょう…。」
2003_09_03 友人のバーテンダーと話しているといつも中原中也を思い出してしまうのです。

「“並木の梢が深く息を吸つて、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子を、
歩み来た旅人は周章てて見付けた。
山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗っておいた。
風はリボンを空に送り、
私は嘗て陥落した海のことを
その浪のことを語らうと思ふ。
騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿ひの道を乗手もなく行く、
自転車のことを語らうと思ふ。”
中原中也の『逝く夏の歌』です。この時期、
何となく口ずさんでしまう歌の1つです。
夏の終わり、夏の1日の終わりを想う歌ですね。」
2003_09_17 9月。芙蓉がまるでカクテルの様。

「9月初旬のある日、夏の幕引きをするが如くの激しい雷雨が夜半
から続きました。早朝に東山を歩くとまだ雨の雫が所々の木々に
残っていました。風には湿気が無く、涼やかな秋の訪れかなと、
思っていたらば、昼からうだる様な暑さが…。京都市内はこれだ
から嫌なんだよと愚痴り歩く私の頭上に芙蓉が咲き誇っていました。
朝に咲き、夕方にはしぼんでしまう美しく儚い花、芙蓉。白から
淡いピンクに変わり、更には紅色に変わる様子を酒酔いに例えて
「酔芙蓉」っていわれています。晩夏から秋半ばにかけて、花を
たくさん咲かせては1日で散るその繰り返しは、夏の盛衰を想い、
そして暑さはいずれ去る事を惜しみ、秋を迎える私の心と重なり
ます。
ゆめにみし人のおとろへ芙蓉かな
久保田万太郎 」
2003_10_01 コール・ポーター、秋の人。

「秋深し隣はJAZZを聴く人ぞ…
『Night and Day』…
「Night and day you are the one,
Only you beneath the moon and under the sun,
Whether near to me or far…
It's no matter, darling, where you are, I think of you,night and day…
Day and night, why is it so…
That this longing for you follows wherever I go?
In the roaring traffic's boom, In the silence of my lonely room,
I think of you, night and day. Night and day under the hide of me…
There's an, oh, such a hungry yearning burning inside of me,
And its torment won't be through…
Till you let me spend my life marking love to you…
Day and night, night and day…
コールポーターの名作をBGMに、カクテルはいかがでしょうか?
貴男にはマンハッタン、貴女にはコスモポリタン。JAZZが似合う秋本番です。」
2003_10_15 谷川俊太郎の詩もカクテルっぽい。

「『おやつの詩』
短い針が3をさすと
時の鍵がかちっとはずれる
ソナチネの音符が散らばる
子ども部屋への長い廊下…
いちばん好きなものはいつも
いちばんお終いまでとっておいた
その最後のあまみがいつから
ほんの少しにがくなったか
短い針が3をさすと
時がほっと息をつく
天使は羽根のほころびを縫い
ショパンは泳ぎに出かけてゆく…
谷川俊太郎さんの詩です。少しほろ苦く、
そして甘いアップルパイが食べたくなりませんか?」
2003_11_05 バーテンダーは自分にも他人にも厳しい人。中国の文人の様に。

「“林間に酒を煖めて紅葉を焼く 石上に詩を題して緑苔を掃ふ”
中国は唐の時代の古い詩ですが、我々日本人の感覚に溶け込む様な
情景ですよね。林の中で紅葉を集め、焚き火をして、酒を暖める。
石上の緑の苔を掃い落として、詩を書き付ける。山野に佇む寺に秋を
感じて楽しむ風情を主題とするこの句は謡曲「紅葉狩」等に引用され、
広く知られています。しみじみとした秋の趣向と酒のある風景が淡々
と綴られていて、私の好きな詩の1つです。秋を詠うと静かで閑雅な
詩が多くなるのでしょうか。
“蒼苔 路滑らかにして 僧 に帰る
紅葉 声乾いて 鹿 林に在り”
これも唐の詩ですね。蒼い苔と乾いた音を立てる落ち葉のコントラ
スト、そして尾形光琳描く鹿が私の心に浮かびます。深い秋に染まる
京都に風雅な季節がまた巡って来ました。」