解ける永久凍土と目覚める病原体、ロシア北部の炭疽集団発生 | パンデモニウム

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日々の気になるコト・モノを万魔のごとく脈絡なく取り上げていきます

※何度かのブログフォーマット変更により改行ポイントがずれてしまい、ほとんどのページがガタガタになっております。
読み難くて申し訳ないです。

 ↓ AFP(2016.8.15) より

 

ロシア極北ヤマロ・ネネツ(Yamalo-Nenetsky)自治管区で今月初めに

起きた炭疽(たんそ)の集団発生で、先週までに23人の感染と少年1人

の死亡が確認された。

同国政府は感染拡大を防ぐことを目的にレスキュー隊や兵士らを数百

人規模で配備した。

 

ロシア北部同自治管区にあるヤマル(Yamal)半島での集団発生に

ついては、炭疽菌に感染したトナカイの死骸が永久凍土の融解により

露出し、他の動物に感染したことが感染拡大の原因と考えられて

いる。

 

 ↓ DATABiO より  炭疽菌


炭疽菌01

 

今後の懸念は、温暖化によって永久凍土が解け、その他の病原体が

今回と同じように露出することだ。

中には氷河時代にまでさかのぼる病原体もあると考えられている。

 

「今回の感染は、70年前に炭疽菌の感染で死んだ動物の埋葬地で氷

が解けたために起きた可能性が高い」と、永久凍土の生物学的問題

に取り組む「Institute for Biological Problems of Permafrost Zone」の

研究所所長は述べる。

 

ロシアは世界平均よりも2.5倍の速さで温暖化が進んでおり、また北極

に近い地域では同国のその他の地域よりもさらにその進み方が早い。

 

カラ海(Kara Sea)とオビ湾(Gulf of Ob)に挟まれたヤマル半島には、

トナカイの遊牧をする人々がわずかだが住んでいる。

ヤマル半島の今年7月の最高気温は35度に達した。

これは、例年より8度ほど高いという。

 

炭疽は、炭疽菌の感染によって起きる感染症で、動物からも感染

する。

皮膚接触により自然感染することが多く、感染すると皮膚に黒い病斑

ができる。

治療を受けなければ、死に至ることもある。

 

北極には炭疽菌以外の病原体が何世紀にもわたって眠っていると

され、これらは氷の融解とともに露出する恐れがあると考えられて

いる。

 

疫学研究所「Central Research Institute of Epidemiology」の

ビクトール・マレイエフ(Viktor Maleyev)副所長によると、同国北部

には、19世紀末に天然痘が流行した際の感染体埋葬地がある他、

最近では、マンモスの死骸の中からも「巨大なウイルス」が新たに

発見されているという。

これについては、詳細はまだ特定されていないが、同氏は、研究の

継続を訴えている。

 

■「ヤマルは小さな警鐘」

 

現在の状況についてマレイエフ氏は、「気候変動は私たちに多くの

驚きをもたらすだろう」としながら、「人々の恐怖心を煽るつもりはない

が、私たちはその時のために備えておくべきだ」と主張する。

 

また、今回の炭疽集団発生については、炭疽菌が眠っている地域

での放牧行為によって起きたと考えられているため、本来ならトナカイ

へのワクチン接種で回避あるいは軽減できたとしている。

この地域では、これまでに2000頭以上のトナカイが死んでいる。

 

ヤマロ・ネネツ自治管区のドミトリー・コブイルキン(Dmitry Kobylkin)

知事によると、家畜へのワクチンの投与は約10年前に廃止されたと

いう。

これについては、同地区は安全との誤った判断に基づくものだった

可能性が高いと説明した。

同知事によると、同管区で感染の影響が及んだ地域の面積は約1万

2650平方キロメートルだという。

 

自治管区政府は先週、これまでに1500人以上が予防接種を受け、

706人が抗生物質を投与されていることを発表。

住民らは、消毒処置が施された後、汚染されていない地域に移され

た。

汚染地域では、兵士ら約270人が配備され、感染動物の死骸焼却など

に当たっているという。

 

今回の感染拡大について、同国の科学者たちは、政府の場当たり的

な問題への対処を批判しており、温暖化対策の研究に十分な予算が

確保されていないことを指摘した。

 

海洋学者のバレリー・マリニン(Valery Malinin)氏によると、ロシア政府

は2010年、泥炭火災による深刻なスモッグ問題に対応するため、気候

プログラムを創設しているが、現在では、すでに機能しておらず、人々

の記憶からも忘れ去られているという。

 

環境問題へのこうした対応についてマリニン氏は、「ヤマルは小さな

警鐘にすぎない。自然は私たちに挑戦し続けるだろう」と厳しい口調で

警鐘を鳴らした。

 

 

炭疽菌(学名:Bacillus anthracis)

  ・・・バチルス(バシラス)綱バチルス目バチルス科バチルス属

    大きさは、1.0~1.2µm×5.0~10.0µmで形状は円柱型

    世界中で普遍的に見られる土壌中の常在細菌です。

    ヒトからヒトへは感染しません。

 

 ↓ Wikipedia より  炭疽菌の構造


炭疽菌02

 

炭疽症(Anthrax)

  ・・・炭疽菌に因る感染症。

    感染し発症する部位により、以下の4つに分けられます。

    ①皮膚炭疽症:最も一般的で、黒いかさぶたを形成する為、

     「炭疽」の語源ともなっています。

     傷ついた皮膚に、炭疽菌に感染した動物の毛や血などが

     接触して感染。

     発疹、浮腫、高熱など

    ②肺炭疽症:炭疽菌を吸い込んで感染。

      高熱、咳、血痰、呼吸困難など。放置した場合の致死率は

      90%以上。

    ③腸炭疽症:感染した動物の肉を食べて感染。

      高熱、腹痛、吐血、下痢など。

    ④髄膜炭疽症:①と②から併発する場合が多く、髄膜炭疽症

      のみを発症する事は稀。

      髄液に血が交じるなどし、やがて意識障害になり死亡。

      治療の有無に関係無く2~4日で100%死に至るとされます。

 

 ↓ Wikimedia Commons より  皮膚炭疽症のヒトの症例


炭疽症01

 

2001年9月18日、10月9日には、アメリカ炭疽菌事件が起こっていま

す。

アメリカのテレビ局、出版社、上院議員に炭疽菌入りの封筒が郵送

され、結果5人が死亡しました。

同時多発テロの7日後に発生しており、テロ攻撃ともされますが、容疑

者である炭疽菌研究の第一人者ブルース・エドワード・イビンズ(Bruce

 Edwards Ivins)が自殺した事で、動機や目的などが明らかになる事は

有りませんでした。

この事件に因り、炭疽菌の名が広く知られるようになりました・・・

以降、白い粉を使用した無数の模倣犯が発生する事に。

 

また、これに先立ちオウム真理教が炭疽菌を生物兵器として研究して

いました。

 

炭疽菌の仲間は、干魃、洪水、熱、紫外線、化学物質、貧栄養下など

に高い耐性を持ちます。

今後、どの様な微生物が解き放たれるか・・・

 

 

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