不登校児について考えること。 | 高校中退者が塾長になった話。

高校中退者が塾長になった話。

都内の私立高校を半年で中退し、その後10年のブランクを経て、高校卒業程度認定試験を取得。大学に進学。紆余曲折あり、塾長になった話。

つぶやきをひとつ。


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今回は、

とある学習塾で塾長をしている

今の私が「不登校」について考えること。


その電話は突然来た。


新中学3年生の子を持つ親からの電話だった。


「うちの子どもは不登校です。

今年受験のため、

塾に入れることを考えてます。」


一言断っておくが、

うちの塾は不登校児専門の塾ではない。


なんという言い方をしたらいいかわからないが、

普通の(?)、一般的な(?)塾だ。


世の中には様々な塾があると思うが、

うちの塾は、

学歴、住まい、既婚・未婚などの

個人情報は非公開にする

というマニュアルがあり、

私を含めた塾関係者全員、

保護者や生徒に誰一人として

学歴・経歴を明かしていない。


私自身も学歴や経歴を明かしていないため、

卒業した大学名や、高校中退、元不登校

ということは、明かしていない。


もちろん、入社時に提出した履歴書には

高校中退や、高卒認定試験取得、

卒業した大学名などを記入し、

面接でも包み隠さず話したため、

会社の社長や上司は私の学歴を知った上で

私を採用したが、

毎日一緒に働いているアルバイト講師は

私の経歴を知らない。


ここ1年を見ても、

不登校児の問い合わせは数件あったが、

大抵、子どもが気乗りせず、

入塾にまで至らない。


そう簡単に前に踏み出せないというのが、

現実だと思う。


ただ、今回の問い合わせは、

一味違った、気がした。


夜遅くの問い合わせであったが、

電話で保護者に軽く状況を話してもらい、

保護者が求めていることを聞いた。


聞けば、

1年半、学校に行けてない。

勉強が出来なく、

自信が持てなくなってしまった。

自分に自信を持って、学校に行き、

受験を乗り越えてほしい。

先生から受験の話をして

未来への光を見せてほしい。

という。


急遽ではあったが、

翌日に体験授業をすることにした。


こういうケースは、勢いが大切だ。


時期的に新規の問い合わせは多く、
毎日のように体験授業や入塾説明を
していたが、その日はとても緊張した。

体験授業を終え、保護者との三者面談。

学校に行けなくなった理由は、
いろいろあったが、
簡単にまとめると積もりに積もったらしい。

去年1年間まるまる学校に行けていないため、
去年の通知表はオール1

「この塾に入る!」と言う子どもに
保護者は「塾入るなら、学校行くと約束して」
と言った。

違和感はあった。が、言わなかった。

所詮はサービス業。
余計なことを言ってどんでん返しを食らっても
困るからだ。
ここが私が自分に嫌気が差すところ。

仕事を終え、家に帰り、考えた。

高校入試に内申点は必要だが、
去年1年間の内申点がほぼ取れていないのに
今更、学校に行って内申点を稼ぐ意味とは。

最初、教室に入れなくなったが、
遂には校門をくぐれなくなったと言っていた。

勉強が出来ない自分に自信が持てない。
1年半の不登校。
だが、自分から「塾に行きたい」と言い、
最終的な決断も子どもが決めた。

行きたい高校はない。
やりたいこともない。
だが、今のままじゃいけないと
勇気を振り絞って前に出る一歩を踏み出し
親に「塾に行く」と言ったその子の頑張りを
なぜ親は理解できないのか。

あと1年も行かない、嫌な中学校に
わざわざ通う必要性とは何か。

学力は確かに足りない。
全然足りない。
だが、問題解いてる姿を見てわかった。
意欲は高い。ペンを止めない。

今から必死で勉強して高校に入って
新しい環境で再スタートを切った方が
その子のためになるんじゃないか、
学校に嫌々行って、更に傷を負うくらいなら
高校生活で再スタートを切るために
今は勉強した方が
その子のためになるのではないか、
と思った。

学校で学ぶことは、勉強だけではない。
そんなことはわかっている。

だが、勉強は学校でなくても出来る。

1年半学校に通えていない子が、
いきなり中学校に普通に通い、
塾にも通い、更には受験勉強をするなんて
ハードル高すぎやしないか?

トラウマのない「塾」という場所で
週に数日、30分でも1時間でもいい、
自習を含めて少しずつリハビリとして
ひとつの場所に通うことができた
という経験を持たせ、自信をつけ、
「高校も通えるかも」
と思わせることの方が大切なんじゃないか?

人と違う道を行くのは、大変だ。
だが、今ならまだやり直せる。
人と同じ道を生きられる。

無理して中学に通わせ、
結果的に学校も塾も行けなくなり、
高校受験が出来なくなる方が
よっぽどその子を傷つけることに
なるんじゃないだろうか。

時には逃げることも大切だと思う。
新たな一歩を踏み出すための選択ならば、
逃げることを選んでもいいと思う。

そう思うのは、私が元不登校で
高校中退だからだろうか。





補足しておくが、
学校生活というのは、私は大切だと思っている。
小中高という学生の期間は、
その先の大学や社会に出た時には
築けない特別な友達を作れる期間だと思う。

同じ教室で毎日顔を合わせて
同じ授業を受ける経験なんて
人生で12年間しか出来ないんだから。

どこかの卒業証書を破ったYouTuberとは、
違う考えを持っている、つもりだ。

「学校」が不必要なものだとは思わない。
ただ、「今いるその環境」からは、
逃げても問題ない、と私は思っている。