小学5年生で強姦にあった話。 | 高校中退者が塾長になった話。

高校中退者が塾長になった話。

都内の私立高校を半年で中退し、その後10年のブランクを経て、高校卒業程度認定試験を取得。大学に進学。紆余曲折あり、塾長になった話。

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小学5年生の時の話。


ある日、母と年の離れた妹と買い物に行った。


妹はまだ幼く、

補助輪を外したばかりの自転車に乗っていた。


買い物を終え、帰宅途中、母に

「先に帰ってていいよ」と言われた。


マンションに住んでいた私は、

自分の自転車を漕いで

一人でマンションに着いた。


当時住んでいたマンションは、

4階建てで、エレベーターがなかった。

内階段と外階段があり、

1人の時は外階段を使うよう

母に言われていた。


母の言いつけを守らずに

駐輪場から近い内階段を登っていった。


2階から3階にのぼる階段の途中で

見知らぬ男性と鉢合わせた。


男性は手にピカピカ光る何か

持っていた。


なんだろう、と思いつつ、

その男性とすれ違おうとした瞬間、

羽交い締めにされた。


一瞬、何が起こったか分からず、

私を羽交い締めにしている男性の手元を見ると

首にカッターが突きつけられていた。


光っていたのは、カッターだった。


男性はカッターを持って

私とすれ違ったのだった。


突然の出来事にどうしていいかわからず、

言われるがままに階段の踊り場に移動した。


下着を脱がされ、その後の記憶はない。


当時、小学5年生で性の知識が何もなかった私は

何をされているのかわからなかった。


叫びたいのに、声が出ない。

逃げたいのに、体が動かない。


何をされてるのかわからないが、

怖いことをされていて、

悪いことをされていることだけは理解できた。


何もわからない中で、

殺されたくない。

まだ生きたい。

と、必死に思い、

何か情報を手に入れなくちゃ。

ひとつでも何か覚えなくちゃ。

と回らない頭で考えた。


男性は震えていた。

何もわからないながら、

常習犯ではないことを悟った。


内階段はよく音が響く。

下の階段で何か物音がした。


その男性は、

「下を見てくるからその場から動くな」

と私に言い、下に降りて行った。


その隙に父の待つ4階の自宅まで

必死に駆け上がり、玄関の扉を開けた。


父はテレビを見ていた。

夕方のことだった。


訳もわからず、必死で言葉にならない言葉で

今、自分の身に起きた出来事を父に伝えた。


父はすぐに110番し、

あっという間に警察が家に来た。


その後は事情聴取をされたが、

うまく答えられず、

しばらくの間、私服警官が

マンション近隣をパトロールすると聞いた。



大人になった今でも、

あの時なにが起こったのか

思い出せないし、わからない。


男性が誰なのかもわからない。


だが、これだけはハッキリと覚えてる。


3月4日だと。


幼いながら、

「この出来事とこの日付だけは

忘れてはいけない」

と強く思っていた。


数ヶ月後、

近所を女性と自転車の2人乗りで走る

あの男性によく似た人を見かけたが、

記憶が曖昧すぎて確信は持てなかった。


マンションの住人なのか、

住人ではないのかも定かではない。


当時、小学5年生。

学校に行けばクラスの女子と男子が

覚えたての下ネタで盛り上がる中、

あの出来事がキッカケで

うまく会話に入ることが出来なくなった。


当時、小学生では珍しい

携帯電話をすぐに持たされた。


プリペイド式のauの携帯電話。


ランドセルにこっそり忍ばせ、

通学する日々を送った。


知識がなかったのが不幸中の幸いか、

クラスメイトの下ネタに

ついていけないこと以外は

特に支障はなく、

クラスメイトのほとんどがまだ携帯電話と

無縁な時代だったので、

特別なアイテムを手に入れた

と思うくらいだった。


年に一度、

3月4日だけは

行動に気をつけよう

と心に決めたこと以外は。


それから約10年間は、

3月4日が来ることが

怖くて堪らなかった。


男性恐怖症を感じて克服しようと決意したのは

その何年も後の話。