荷物はどこへ? サカイ引越しセンターの闇を暴く裁判傍聴記 -7ページ目

サカイ引越しセンターによる悲惨な事故の始まり

20126月某日

それは、中村さん(仮名)のもとに届いた、一本の電話で始まった。中村さんは某企業の役員であり、人望も厚い。


「今度、引越しをするの。で、どこの引越し業者がいいかしら?」


電話の主は、中村氏の友人である、今中さん(仮名)。今中さんは横浜市在住の女性だ。


そのとき、中村さんの頭に浮かんだのが、サカイ引越しセンターだった。実際に中村さんがサカイを利用したことはなかったが、ネームバリューがあり、引越し業者の大手であることは間違いない。大手ならば、まず安心だろう。そう思った中村さんは、今中さんにサカイ引越しセンターを薦め、今中さんもそのアドバイスを受け入れた。



○引越し日当日

サカイ引越しセンターによる引越し日、搬出の際、当日。作業員の不注意により、今中さん所有の額入りの鏡を落とし、鏡の部分を割ってしまった。そのとき、作業員は弁償を申し出た。

今中さんはこの鏡に愛着を持っていた。無理もない。この鏡は、今から15年前に亡くなった、今中さんの祖母のものであり、いわば形見のようなものだったからだ。




※見るからに重厚な鏡だ。



22年前、「いいものだから……」と、祖母は今中さんにその鏡を譲り渡した。その鏡は、祖母が昔、フランスで購入したもので、額が木彫りになっており、細かい細工が施してある。とても美しく、今中さんはこの鏡をずっと大切にしてきた。


その鏡を思う気持ちは、今回の引越しにも表れている。この鏡は、縦150cm、横115cm、厚さ7cmという、かなり大きなサイズになる。これを寝室に置きたかった今中さんは、物件選びにも苦労した。ようやく、寝室にこの鏡が置ける十分なスペースのある物件を探し出し、いざ引越しとなった。


その引越し当日、まさかの出来事である。作業員の不注意で、鏡の部分が破損してしまったのだ。作業員は弁償を申し出た。しかし、大事なのは額であり、それは無事だった。だから鏡の部分を修理してもらえれば、それでいい。そう考えた今中さんは、「割れた鏡を修理して戻してくれればいいですよ」と作業員に伝え、作業員も承諾した。


今中さんからすれば、遅くとも数週間後には修理された鏡は届くものと考えていたはずだ。


しかし、現実は違っていた。数週間後どころか、2年たった現在でも、鏡が戻るどころか、サカイ引越しセンターと裁判沙汰になろうとは、当時の今中さんには想像すらできなかっただろう。

この記事は、いち利用者である今中さんと、サカイ引越しセンターの、現時点でもいまだに決着していない、長期にわたる闘いをレポートしたものである。


つづく