両親とのパリ旅行記(2017/08/19-24)④-1 | パンダの音楽

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静岡在住のセレクタ兼チャーターです。

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昨日の記事③からの続き。パリの3日め、午前中は予約したルーヴル美術館見学のオプショナルツアー。マイバス社に8:45に集合。前日の疲れでちゃんと起きることができるがやや不安だったけれど、しっかり朝食もとり、マイバス社には集合時刻の5分前に到着。1泊めの夜に予習するまでもなく、お世話になっているノルマンディ・ホテルからは歩いて5分もかからない所だしね。店の奥のスペースで、おそらく一緒に歩くことになる日本人観光客とともに出発まで待ちぼうけ。

出発前に、各々にワイヤレスラジオみたいなものを渡されて、操作方法について説明を受ける。これで案内人から離れてしまい、雑踏の中で生身の耳では声が届かない状態でも、貴重な日本語の解説が聞き取れるようになるのだ。

お名前を失念してしまったのだが、今回のオプショナルツアーでお世話になる観光案内人のお姉さん。小柄な女性でやや早口、パリでの滞在が長いのであろう、肝がすわっている印象を受けた。

マイバス社からは徒歩でルーヴル美術館に向かう。早速スリへの注意喚起があり、犯罪の多いリヴォリ通りをなるべく歩かないルートを進む。

前日に赤い2階建てバスで何度かくぐったルーヴル宮のリシュリー翼の下の回廊を歩く。ルーヴル宮の敷地のほぼ中央になるカルーゼル広場に出る。

斜めってしまったがカルーゼル凱旋門の画。ナポレオン1世の命により、1805年の戦勝を記念して建てられた。前日に訪れた「エトワールの」凱旋門が威風堂々としているのに対し、豊かな色調と繊細な装飾が施されているこの門は優美で女性的である。

てっきり王道でピラミッドの入口からルーヴル美術館に入ると思いきや、このカルーゼル広場の脇にある地下へ向かう階段から入ることになる。ガイドさんが曰く、ピラミッドの下はわざわざ行列に並ぶようなもので時間の浪費になるそうだ。

ガイドさんに連れられて階段を下りてみれば、なんつって、そこらの日本の中核市にあるような百貨店の地下階にあるような入口である。

実際にルーヴル美術館の周りの地下街は百貨店並みに多くの店舗が入っている。ブレた画だが、これはMAILLE(マイユ)の店舗。270年の歴史を誇る調味料ブランドで、フランスのハイレベルな食文化に精通している人であれば言わずと知れた存在。本拠地はパリではなく、高級ワインの産地として名高いブルゴーニュ地方の中核都市であるディジョンに構える。マスタードやビネガーがメインだが、父のお気に入りのコルニッションの漬物の瓶詰も取り扱っている。MAILLEの公式ホームページはこちら→MAILLE

程なく地下道を歩けば、すぐに逆ピラミッドの下に到着する。上の画に見ての通り、オープンしたばかりの9時頃でこの人だかり。

小柄なガイドさんが掲げる白い"mybus"の旗が、迷子にならないための目印である。広い広いルーヴル美術館を要領よくメジャー作品を抑えながら見学するにあたって、ガイドさんおススメの要領の良い順路で進んでいく。なんてったって、ツアーの所要時間は凝縮した2時間30分だけ。

ガイドさんからいただいたパンフレットがこちら↑↑↑。陸上の建物の鳥瞰図で、ルーブル美術館はリシュリー翼(リヴォリ通り沿い)、ドゥノン翼(セーヌ川沿い)、その間を結ぶロの字部分=シュリー翼と区分けされていることがわかる。

さらにこちらの画は1階の見取り図、「モナ・リザ」をはじめ、メジャー作品がもっとも多く展示されているフロアだ。旅行ガイドブックやネット上の文献によっては、このフロアは"2階"と書かれていることもあるが、このブログではいただいたパンフレットに記載されている階数に従って文をつづります。

入館して、まずは"0階"に向かう。この旅行で大いに参考にしている「わがまま歩きパリ」では"1階"と表記されていて、「ミロのヴィーナス」など著名な彫刻作品が多く展示されているフロア。紀元前7500年~紀元後500年にわたる古代オリエント美術の彫刻や装飾陶器などが高い密度で集結して展示されているエリアを見学する。

しっかりブレた画だが、鼻だけ立体表現した彫刻。「腕を組んだ偶像型の女性像の頭部」だそうで、紀元前2700年~2300年頃の作品だそう。現代、アパレルでよく見かけるマネキンの頭はこういった形のものが多いし、ある意味、未来を先取りしている。

変な形の人型の彫刻。こういった摩訶不思議な作品は、日本の縄文時代の土偶に近いものを感じてしまう。

上の不思議チャンに対して、この壺(装飾陶器)には実に繊細な図柄が施されている。

シュリー翼の古代エジプト美術のコーナーには立ち寄らず、ドゥノン翼の古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術の区画(紀元前900年~紀元後500年)に入る。紀元前の人物像を描いた彫刻は、こういった無表情でおおまかに象った作品が並ぶ。

またしてもブレまくっている画だな…ワインの飲み過ぎで二日酔いだったのかしら。古代エトルリア美術の特徴をよく表す、男性の頭だけの彫刻。やっぱり無表情な顔つきで、円谷プロのウルトラマンのような眼をしている。

古代ギリシャ期になると、人物像も筋肉ムキムキがリアリティが高く表現された作品が制作されるようになる。館内の展示品はおおむね時代が下る順番で配置されていて、ガイドさんが簡潔に説明をしてくれました。

たくさんの人物像の彫刻が立ち並ぶ。古代ギリシャの美術はリアリティが高い作品が多いが、よくしたもので時代が下るにつれて、顔つきや体型の表現力が増していく。

筋肉隆々の男性の肉体美が見事に表現されている彫刻たち。上の画はアルカメネースの「ボルゲーゼのアレス」、紀元前420年ころの作品。現代でも、世界中の男性たちの見本となる体系である。

古代の男性はみんなこんなに筋肉モリモリマッチョマンだったのかなぁ…私の母も含め、ツアーに参加されているお姉さん方々はウットリの空間。…こちとら、ポンポコリンの中年デブで悪ぅございました。

裸婦の彫刻では衣服の襞(ひだ)もリアリティ高く表現されていて、実に美しい。当時の緻密な彫刻のレベルの高い技能に感心させられる。

イヤらしいオッサンにとって、美しくふくよかな女性像はドキッとさせられる。もはや美術鑑賞の枠を越えて妄想を馳せる。

そして…出ました!、ミロのヴィーナス!!。ルーヴルで最も有名な展示品の一つ。1820年に地中海のメロス島で発見された時には既に腕はなく、原型がどうだったのか、今でも議論され続けている。

撮影にいそしむ見物客で混雑している中をすり抜け、全身の撮影に成功したショット。月曜日だというのにこの人の多さ、さすが世界一の美術館である。

正面から撮った写真はよく見かけるが、体の後ろを見るのはなかなかできない体験。ちょこっとお尻が出ちゃってたんだね。

その後、いつの間にやら大きく時代を下り、中世初期からルネサンス初期(1500年~1850年)のイタリア・スペインの彫刻の傑作が立ち並ぶ「ギャラリーのドナテロ」と呼ばれる回廊に入る。有名なミケランジェロの「溺死の奴隷」などが展示されている。

こちら、「フルートを吹くサテュロス」。イタリアで出土された彫刻で、紀元前300年頃の制作、作者不詳。

こちら、「眠れるヘルマプロディートス」。ギリシャ神話に登場する雌雄一体の神で、表からは女性が寝ている姿に見えるが、裏側から見るとはっきりおチンチンが付いている!!??、何とも不思議な作品。

次にドゥノン翼の"0階"を案内される。急になぜだか天井がキンピカに装飾される。

「見上げてごらん夜の星を」ではないが、豪華な彫刻装飾と天井画に圧巻される。意図もせずゴージャス気分を味わうことになったが、元々は宮殿だっただけある。

つまびらかには鑑賞しなかったのだけれど、おそらくは古代ギリシャ彫刻やローマ彫刻が立ち並ぶ回廊。自分が無知だからいた仕方ないのだが、誰もが知っているようなメジャー作品はなかったなぁ…。

すっげぇ!、かまぼこ型の屋根に張り巡らされている見事な天井画。作者がわからなかったけれど、制作に相当な時間がかかったであろう。芸術というより職人の領域だ。

なぜかこの空間にポツンと配置されたエトルリア期の作品、「夫婦像の陶棺」、紀元前530年~510年。葬礼用に作られたもので、こういった宴会用寝台の方が土墳の墓室に置かれるのがエルトリアの墓の特徴なのだそうです。

回廊の突き当りには純金の装飾品が結集して展示されているショーウィンドウがあり、どうやらガイドさんはコレを見せたかったらしい。お姉さま方たちは釘付けになって見とれていたけれど、ぶっちゃけ絵画をたくさん鑑賞したかった私にとってはどうでもいい時間であった。

その後、ドゥノン翼のどの辺を歩いたのかわからなかったのだけれど、少し視界が開けた空間に出る。広間の周りにある彫刻は、おそらくは中世~ルネサンス期のヨーロッパの彫刻だったと思うが、詳しいことは後になって調べてもわからず。

ホント、どこの国の誰がいつ頃制作したものかわからず、無念!。この勇ましい男性像とか、見せびらかすようにムキムキだし、やっぱり古代ローマ芸術の「復活」だ、ルネサンスだ!(勝手に片付けている)。

それから先、ドゥノン翼の1階に上がる階段(「わがまま歩きパリ」では2階と3階の間の階段)の踊り場に置かれているのが「サモトラケのニケ」!。エーゲ海に浮かぶサモトラケ島で1863年に発見されたヘレニズム彫刻の傑作。「ミロのヴィーナス」のときと同様に、ここも写真撮影に夢中の見物客で混みあう。2000年のパリ一人旅の時での初対面で、こうして階段の踊り場でポツンと佇んでいる姿を覚えていて、「何だか冷たい扱いを受けているなぁ」って勝手な感想を抱いたりもした。

人混みから離れて少し階段を上り、何とか斜め左下から全身の撮影を試みる。高さ328cmもある大理石製の大作、台座も人の身長をはるかに超えていてあまり良いアングルでない。

アングルを変えてズームで撮影する、真横のショットになっちゃった。悠然とした姿を捉える角度で撮影に挑むわけだが、けっこうセンスが試される。

 

その後"1階"に上がる(=「わがまま歩きパリ」では"2階"と表記)。上述した通り「モナ・リザ」など絵画の名作が充実しているフロアだ。まずは、リシュリー翼のほぼ全域を占める美術工芸部門エリアに案内される。

いきなり、なんぢゃ、この豪華なテーブル!。この区画はナポレオン3世に関連するサロンで王室のコレクションが数多く展示されている。撮影はしなかったけれど、回廊の突き当りは最も豪華絢爛な部屋で、ナポレオン3世が国務大臣のために作られたアパルトマンだった。

家具や貴金属、調度品などなど、宝物品や寄贈品が数多く展示されている。ガッツリ目の保養。

こんなキンキラキンに装飾された食器や容器、怖くて使えないよ。絶対王政時の贅の極みを見せつけられる。

ガラス製の食器や調度品たち。割れたら大変!!。フランスは安定陸塊の上で、パリは構造平野に位置する。滅多に地震が起きない国で良かったね。

豪華に宝石で埋め尽くされた王冠とティアラ。こんなの頭に載せたら、重みで首が縮みそう…。

ここの天井も繊細な絵画と煌びやかな装飾彫刻で埋め尽くされ、ゴージャスな雰囲気が満載。うちら下級市民にとっては縁もゆかりもない世界だけど、なんとまぁ恐ろしや恐ろしや。

回廊の最も奥には、ダイヤモンドの装飾品たちの集合体が収められたウィンドウ。やっぱりお姉さま方々はクギヅケ状態で鑑賞。何で女性はこうもキラキラしたものを好むんだろうね…やれやれ。

再び「サモトラケのニケ」に戻り、リベンジの撮影。今度は自分としてはうまい角度でのショットになったと思う。よくよく見たら台座は船の形をしていて、「一人タイタニック」状態である。

ドゥノン翼の1階に上がり、ようやくお目当てのイタリア絵画ゾーンに入る。ルネサンスより前の宗教画ばかりの世界。その画に描かれる人物のほとんどは表情がなく、観ている方も無味乾燥な印象しか残らない。

上の画はボッティチェリの「若い婦人に贈物をするヴィーナスと三女神」、1480~1483年頃の作品。かの有名な「ヴィーナス誕生」に通じる柔らかくふっくらとした立体感のある女性の身体つきの表現を見て取れるが、まだルネサンス期のように開花していない。

1270年頃、チマブーエ作の「6人の天使に囲まれる荘厳の聖子」、13世紀のイタリア宗教画でメジャーな作品。やはり描かれている人物は、すべてが正面を向き、立体感のない描写で、その顔つきからは何の感情もうかがえない。5世紀から15世紀にかけて東ローマ帝国で発達した「ビサンティン美術」という体系で、古代ギリシャ美術、ヘレニズム美術、ローマ美術を継承しつつ、東方的要素、キリスト教要素を含んだ独特な特徴を持つ。

ルネサンス前のイタリア宗教画が多く並ぶコーナーを見渡す画。作品によっては何人か足を止めてじっくり観賞したりして、自分の歩くペースを崩される。おそらく館内で最も人気の高い区画だと思われる。

こちらの画はウッチェロの「サン・ロマーノの合戦」、1455~1456年頃の作品。1432年のフィレンツェとシエナ人との戦いのエピソードを語る画屏風の一部。馬にまたがった人の高さよりも長い槍は見るからに鋭利で痛々しい。馬の脚や槍の細部を枝葉末節にこだわって表現されているのが「ゴシックの伝統」らしいが、当時はあまりにも過剰な幾何学的表現が「遠近法狂い」と呼ばれていたのだとか。

続きまして、ボッティチェリの作品で「聖母子と幼い洗礼者ヨハネ」、1470年頃に描かれたもの。ふんわりと、ソフトタッチでふくよかな体型を表現しているのはボッティチェリならでは。たくさんイタリア宗教画を鑑賞したわけだが、いろいろ文献を参考にしながら振り返ると、平べったいゴシック様式の典型に台頭して、15世紀の時点で「遠近法の勝利」が伺われる。

上の画はベルゴニョーネの1494年頃の作品:「殉教者聖ペテロとひざまづく寄進者」。頭にぐっさり薪割りの刀が刺さっている聖ペテロはインパクト大!、キリスト教のルーツを知らない人には衝撃の絵画である。

それから先、やっとやっと待ちかねていた!レオナルド・ダヴィンチの絵画が並ぶスポットに到着!。1513年頃の作品:「洗礼者ヨハネ」、ダ・ヴィンチ最晩年の傑作。天を指さし微笑みを浮かべるヨハネは、「雌雄両生的な神秘性がある」とも言われる。

1508年~1510年頃の作品:「聖アンナと聖母子」、ダ・ヴィンチが何度か取り上げたテーマである。今まで観てきたルネサンス前の宗教画と違って、登場人物は躍動感にあふれ表情も豊かで、観ているこちらの方がエネルギーを享受したように感じる。この絵画で見られる「ピラミッド型の構図」とか「スフマート」(明暗の調子で丸みを表すぼかし描法)、「鳥瞰的な遠近法」とか…、大学の教養部の頃に芸術論の講義を受けたな、確かに、ふむふむ。

そうそう、これも著名な傑作、「ラ・ベル・フェロニエール」:1490~1945年頃の作品。暗い背景から浮き上がってくる光に照らされた女性像、なかなかの美貌である。芸術評論の談義ではこの作品が本当にダ・ヴィンチの作品なのか、このモデルが誰であるか、等々いろいろ意見が分かれている。

これもメジャー作品!、ルネサンス最盛期の代表格である「岩窟の聖母」。1483~1486年にミラノで制作依頼を受けて描かれたもの。ダ・ヴィンチが創始したといわれる「スフマート」を完璧に例示していて、度々「モナ・リザ」とともに芸術論で紹介される。ルーヴルの他にロンドンのナショナル・ギャラリーにも別ヴァージョンが所蔵されていて、ダ・ヴィンチはこちらの作品をミラノへ引き渡したと考えられている。これらのダ・ヴィンチの作品群ゾーンは、人だかりができていて歩くのもままならないくらいに混雑していた。負けじと何度も何度も場所を変えて撮影しました。

そして、ようやく「モナ・リザ」の部屋に入る。予想を超える大群衆の中に突入する。

ヴギャッッッ!、そんなに押すなよ!。さすが世界一有名な絵画、今回のパリ旅行の中でいちばん密度が高くてキツい群衆にまみれてくちゃくちゃになる。

どうにか群衆の前方に来て、リベンジ、っておいオバサンの頭が画に入っちゃったじゃん。

グヒョッッッ!、んもう、だから頭が邪魔だっつぅに!。

何度かトライしたけれど、まともな画を撮ることはできなかったな、やれやれ。静岡弁でいう「やいやい」だよ。斜めったが、未熟にもこの画が自分の中ではベストだったな。なお、この時、母も果敢に群衆に立ち向かい、スマホで思い出の画像を撮るのに燃えていた。本人も予想以上の人だかりに驚いていました。2000年にルーヴルを訪れて、この世界一謎めいた女性に対面した時は、こんなに人だかりがあって画の手前に柵なんて置いてなかったのに…、残念な展示状態だ。

モナ・リザのもみくちゃ状態から脱出し、その他諸々のイタリア絵画の観賞を進める。上の画はしっかりボヤけてしまったが、ラファエロの1507年頃の代表作「聖母子と幼子洗礼者ヨハネ」、通称は「美しき女庭師」。ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロが盛期ルネサンスの3大巨匠と呼ばれている。

引き続きラファエロ、「フランソワ一世の聖家族」、1518年頃の作品。ラファエロの画はダ・ヴィンチと比べるとリアリティが欠けるが、輪郭を陰影でぼかして表現しているところとか、光が優しく降り注ぐ感じのソフト・タッチが癒しを与えてくれる。

斜めからの撮影になってしまったが、こちらもラファエロの1514年頃の作品:「バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像」。文人であり、ラファエロが生まれた街ウルビーノの宮廷の大使でもあったバルダッサーレは、ラファエロの友人でした。

あぁ、コレ、よく見たことあるあるシリーズ!、パオロ・カリアーリ(通称:ヴェロネーゼ)の1556年の作品:「悪徳を雷で打つユピテル」。たくましい体躯の男性像が重なり合う様は躍動感があって、描かれた物語の世界に引き込まれる。

こちらの画、1562~1563年にヴェロネーゼが制作した「カナの婚宴」、縦666cm×横990cmもある巨大な油絵。全体を写すには人混みを避けることは不可能。ヴェネツィアのサン・ジョルジュ・マッジョーレのベネディクト修道院食堂用に制作されたもので、絵画空間と現実の空間が完全に一体化されている。鮮やかな色彩で大人数を描くことが得意としているヴェロネーゼは、ヴェネツィア派を代表する画家である。

膨大な数のイタリア絵画群の中を進む。あ、コレコレ、「見たことあるある」シリーズ!。1594年頃のカラヴァッジョの著名な作品:「女占い師」。上品だが姑息な女占い師が世間知らずの若者から指輪をくすねようとしている驚きの一瞬を捉えていて、観ている方もドキッとさせられる。

あ、これも見たことがある!、ジュゼッペ・アルチンボルドの「四季4連作」。右上から時計回りに「秋」、「春」、「夏」、「冬」。それぞれの季節で旬な果物や野菜、花、動植物で、うまい具合に表情豊かな人物像を描いていて、何ともユニークで魅力的な作品。後で知ったのだけれど、2017年に国立西洋美術館で開催された「アルチンボルド展」で来日していたのでした。

こちらはティツィアーノ・べチェリオ(通称:ティティアン)の作といわれる!?「田園の奏楽」、1510~1511年頃の制作。作者がティティアンだったりジョルジョーネが描いたものだという人もいたり、誰の作品なのかさまざまな意見がある。牧歌的な背景に愛の語らいと音楽を表現する、ヴェネツィア派の特徴をもつのは確かだ、とのこと…ふむふむ。

あ、コレ!、絶対見たことあるあるシリーズ!、ティツィアーノの「鏡の前の女」、1515年の作品。すっかり"陶酔という日常"に溺れる美女。2015年に国立新美術館で開かれた「ルーヴル美術館展」で来日していて、自身もこの時の企画展に足を運んでいた!。約2年半ぶりの再会で、記憶が鮮明なわけだ。ちゃっかりブログの記事でアップしていました、2015年3月に上京した時の記事でリンクはこちら→「佃島を探す(渋谷~乃木坂~新宿~有楽町経由)」。

イタリア絵画ゾーンが終わり、フランス絵画のエリアへ。まず目に飛び込んできたのがジャック・ルイ・ダヴィッドの「ナポレオン1世の戴冠式」、1806~1807年の作品。高さ621cm×幅979cmの大作で、その迫力に圧倒される。発注してから2年の歳月を経て完成した、この巨大な絵画を目の前にして、ナポレオンはたいそう感動したであろう。

引き続きダヴィッドの作品で「テルモピュライのレオニダス」、制作期間は1799~1803年および1813~1814年。紀元前480年におこったスパルタを中心とするギリシャ軍とアケメネス朝ペルシアとの戦闘を描いた歴史画。ここでは白人の逞しくも美しい肉体が実物さながらに描かれている。レオニダス王が率いる先遣隊を主題にしていることから、ふと2007年の映画「300(Three Hundred)」の血生臭い映像を思い出し…、あまりにも両極端な表現の違いに困惑した。

この画もダヴィッドで、1799年の大作:「サビニの女たち」。古代ローマ創世時の「サビニの女たちの略奪」という伝説的エピソードを題材にしており、夫(画の右:ロームルス)と父(画の左:ティトゥス)とのいざこざの間に割って入るヘルシリアの足元には、乳飲み子が無邪気にたわむれあっていて、"女の度胸"というか肝っ玉母さんのパワフルさがよく表現されている。

あぁ、コレも見たことあるあるシリーズだ!、ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングルの「グランド・オダリスク」。オダリスクとは「ハーレムの女」のことで、描かれているクジャクの羽の扇子や水煙管などが東洋的な雰囲気を醸し出していて、当時はやっていた異国趣味を象徴している。女性の裸像はかなり体の線を強調して描いているためか、えらく胴長な印象を受ける。

こちらはテオドール・ジェリコーの「メデューズ号の筏」、1819年の作品。1816年にフランス海軍のフリゲート艦がセネガル沖で沈没した史実を描いたもの。当時、死体の生々しい描写に衝撃を受けた人々が多かった。

上の画はドラクロワが1824年に完成させた「キオス島の虐殺」。1822年、当時オスマン帝国統治下のギリシャのキオス島で、独立派を鎮圧するためにトルコ軍兵士が一般住民を含めて虐殺した事件を描いている。全裸のギリシャ女性を凌辱する部分、死んだ母親に寄りそう幼児たちを唖然と見守るギリシャ人たちが一つのキャンバスにおさめられていて、事件の残虐さをまじまじと表現している。

続きまして、超あるあるシリーズ!、ドラクロワの代表格であり名作「民衆を導く自由の女神」、1830年。世界史の教科書でフランス革命の記事に「必ずと言っていいくらい」セットで掲載される絵画。銃剣付きマスケット銃を左手に持ち、フランス国旗を目印に右手で掲げて民衆を導く勇猛果敢な女性は、フランスの象徴=マリアンヌを表現している。1999年に日本に貸し出されていて1ヶ月間東京国立博物館で展示されていた。お返しに日本からフランスへ法隆寺の百済観音像が貸し出されている。

これらのフランス絵画の大作に見とれていたのが11:30頃。マイバス社の日本語ガイドによるルーヴル美術館見学は終わり、ここで自由解散となる。

…と、ここで、まだルーヴル美術館での記事は続くのだが、残念ながらエディタの文字数オーバーになってしまったので、記事④-2に続く。