手相物語~死にたい・・・ | 和顔工房(わげんこうぼう)

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和顔という言葉は、「大無量寿経」 の言葉「和顔施」「和顔愛語」に由来。穏やかで温和な表情、顔つきや言葉遣い。穏やかで親しみやすい振る舞い。のこと。どんなに苦しい時でも、「和顔」がその状況を突破する鍵になる。

その手相家の名前は、

安倍吽馬易(あべのうんめい)という。
まだまだ、駆け出しの頃・・・。

手相を観るという事は、

「相手の方の人生を垣間見ることだ。」と
吽馬易は、師匠から、常々教わっていました。
 

ある日のこと、

その日も、地下鉄(都内)の出口を出て、
少し歩いたところにある薄暗い路地の片隅に

座っていました。

どうして、そこに座っていたかというと、
そこは、薄暗い路地とはいえ、
必ず、その駅を利用している方のうち、
電車が停まって、

何人かの方が降りるたび、通る場所でした。
しかも、そこは、

狭く、必ず、吽馬易と目が合うのでした。

吽馬易の手相以外の唯一の特技として、

眼力(自称です)、
吽馬易は、澄んだまなざしで座ったまま、

行き交う人達を見つめると、
立ち止まらせてしまう、

という自信を持っていたからでした。

実のところ、吽馬易の眼力ではなく、
吽馬易が座っている横に立てかけてある、

アイテム、
時々、手に持っている、
自分の顔(頭)がすっぽり入るくらいの

大きさのレンズの虫眼鏡に
びっくりして、

二度見するために、

立ち止まってしまうわけなのですが・・・。
一番びっくりするのは、
その大きな虫眼鏡を顔の前に

頭がすっぽり隠れるように吽馬易が持っている時・・・。

想像してみてください。
街角のしかも、薄暗い路地で、
首から上が巨大虫眼鏡の顔をした人間?

らしき物体が座っている様子を・・・。


一人の女性が、

吽馬易に手相を観てほしいと話しかけてきました。
その女性は、どこかもの悲しげな表情でした。
身なりは清潔で、整った顔立ちの少し、

がっちりされた方です。

歳の頃は、30代前後と見受けられました。

その女性の方のお名前を

仮に愛子さんとさせていただきます。

(愛子は仮名です。)

愛子さんが、吽馬易(ウンメイ)にちいさな声で話かけました。
愛子:「死にたいと思っていますが、死ぬことってだめですか?」

 

いきなりの重い言葉に、

一瞬で、身体に緊張の走る吽馬易・・・。

吽馬易:「死にたいと云われました?」

と確認するように優しく彼女に問いかけた吽馬易。

 

すると、

少し切羽詰まった様子の愛子が

早口で話し始めました。
愛子:「死にたいって思っちゃだめですか?」

愛子:「死ぬことを選択しちゃだめですか?」

愛子:「毎日、毎日、死ぬことばかり考えて・・・。」
愛子:「生きている意味がわからない。」

愛子:「なんで私なんかが、助かって、・・・」

と、涙を浮かべながら、言葉に詰まる彼女。

 

吽馬易は、すこし、

呼吸をゆっくり大きくしながら、

愛子さんをみつめます。

(ゆっくり呼吸をしながら、お話を聴くことで、話し手の呼吸も整いはじめるのです。)

 

吽馬易が、ゆっくり問いかけます。

吽馬易:「どなたか、大切な方を亡くされたのですか?」

吽馬易:「死にたいって、何かあったのですか?」

吽馬易:「云いづらいこともあるかと思いますが、お聴かせ願えますか?」

愛子さんに向かって、

吽馬易が柔らかい視線で見つめます。


彼女は、吽馬易の顔に一瞬目線を上げ、

すぐに、下を向いて、話しはじめました。

愛子:「どうして私だけが助かったのですか?」

愛子:「先生、娘の夕子は、・・・」

言葉に詰まる愛子・・・。

(夕子は仮名です。)

 

言葉にならない何かを受け取ろうと必死な吽馬易。

合間をみて、

柔らかな声で愛子さんに

吽馬易:「助かったって?」

吽馬易:「生死に関わる何かがあったのですね。」

吽馬易:「娘さんの夕子さんと一緒だったんですね。」

問いかける吽馬易。

 

 

少しだけ、吽馬易の顔を見上げる彼女。

愛子:「車に一緒に、・・・」

愛子:「隣に座ってたんです。夕子と・・・」

愛子:「私、運転してて」

愛子:「いきなり前からトラックが・・・」

すすり泣くような声で、言葉を続ける愛子さん。

愛子:「私は、頭を打って血が出たくらいで。」

愛子:「隣に、隣に座っていたはずの夕子は、」

愛子:「姿が見えなくなってて・・・」

愛子:「押しつぶされて挟まれたまま、」

愛子:「後から考えると車もペシャンコで・・・」

愛子:「助けることもできなくて・・・」

愛子:「私だけ助かってしまったんです。」

愛子さんにそっとティッシュの箱を渡す吽馬易。

吽馬易は、

いつもティッシュの箱を用意していました。

 

ティッシュで顔を覆い隠すように、

涙で溢れた眼のまま、

彼女が、続けます。

愛子:「あれ以来、ずっと、申し訳なくて・・・」

愛子:「なんで、私は生きているんだろう・・・って」

愛子:「思ってしまうんです。」

愛子:「娘の分も生きなきゃって・・・」

愛子:「何度も何度も自分に言い聞かしてる。」

愛子:「けどね…。わかっているんですけど・・・」

愛子:「頭ではわかっているんですけど・・・」

愛子:「ダメなんです。」

愛子:「死にたくなるんです。」

愛子:「・・・」

言葉にならないまま、

愛子さん、言葉を紡ぎながら、

少しだけ、落ち着きを取り戻している様子。

(吽馬易は、独自の傾聴のスタイルでお話しをその方の存在ごと、受け取ります。)

(吽馬易に話すだけでも、気持ちが軽くなる方も多いようです。)

 

吽馬易が、愛子さんの眼をみながら、

ゆっくりうなづき、

自分の両手を前に差すようなジェスチャーで、

そっと愛子さんに、両方の手のひらを、

私の前に近づけるよう、促します。

 

一瞬、

吽馬易の動きを理解するのに戸惑いながらも、

ゆっくり

両手のひらを吽馬易の前に近づける愛子さん。

吽馬易は、手の甲を包むように支えながら、

目線を愛子さんの手のひらに向けました。

 

吽馬易:「両手とも大切なので、まず、両手を一緒に観させてください。」
とうなずき、
吽馬易:「次は、左手だけを・・・。」
手の平を、深く覗き込みながら、
吽馬易:「ふむふむ、う~ん、ほぉう、・・・。」と、
いつものように言葉にならない音を発する吽馬易、

続いて、
吽馬易:「右手を観させてください。」
今度は、無言で観入っている吽馬易...。

そして、一通り観入ってから

目を離し、目の前の彼女を見つめました。

(これが、吽馬易の手相を観させていただく際のいつものスタイルです。)

吽馬易は両手のひらの手相を

一通り観させていただいた後、
ゆっくり、話しはじめました。
吽馬易:「何かお伝えできるかと思いまして・・・」

吽馬易:「手相を観させていただきました。」
吽馬易:「頭では、娘さんの分も生きなきゃって・・・」

吽馬易:「わかってらっしゃるんですよね。」

吽馬易:「しかしながら、感情や想いって、ね。」

吽馬易:「簡単に、納得できるものじゃないですよね。」

 

さらに、吽馬易が続けます。

吽馬易:「私は、感情や想いって、納得するものでもなく、どこに収めるかだと思うんです。」

吽馬易:「大切なのは、前に進めるためにどうするか?」

吽馬易:「だと、思うんです。」

吽馬易:「起こってしまった悲しい出来事は決して消えません。」

吽馬易:「元にも戻せません。」

吽馬易:「当然、納得なんてできません。」

吽馬易:「それでいいんです。」

吽馬易(ウンメイ)、語気を強めてもう一度、

吽馬易:「それでいいんです。」

吽馬易:「悲しくていいんです。」

吽馬易:「悔しいかもしれません。」

吽馬易(ウンメイ)、大きくうなずきながら、

吽馬易:「それでいいんです。」

吽馬易:「時間しか解決できないものもあります。」

吽馬易:「時間だけが、悲しみを和らげてくれる。」

吽馬易:「私は、そう思っています。」

吽馬易:「悔しさは、時間すらも和らげてくれないことも多いです。」

吽馬易:「愛子さんは、本当は、前に進みたいんです。」

吽馬易の言葉に、

愛子さんの表情が一瞬、はっとしたように動いた。

 

その動きを吽馬易は、見逃しませんでした。

さらに吽馬易が続けます。

吽馬易:「愛子さんは、生きたいのです。」

吽馬易:「どうすれば、・・・」

吽馬易:「どのように想えば、考えれば、ご自身の感情が収めることができるか?」

吽馬易:「探しているのです。」

吽馬易:「で、私に逢いに来られたのですよね。」

軽く微笑みを浮かべ、確認するように話す吽馬易。

 

少しの沈黙をおき、

吽馬易、話し続けます。

吽馬易:「あっ、忘れてました。」

吽馬易:「さっき観させてもらった手相のこと・・・」

吽馬易:「まだ、何もお伝えしてませんね。」

と、再度、

愛子さんの手の甲を包み込むように触れて、

手のひらをのぞきこむ吽馬易。

 

愛子さんが不思議そうに、

愛子:「手相でなにがわかるんですか?」

と吽馬易に問いかけます。


吽馬易が、

問いかけに答えるでもなく、聞き返します。

吽馬易:「何が知りたいですか?」

吽馬易:「私は、今の愛子さんに必要なメッセージを受け取っています。」

(手相のある線が光ったというか、動いたのを吽馬易は、見逃さなかったのです。)

その線は、2つ・・・。

(専門的にいうと感情線と運命線)

吽馬易が、手のひらの線を指でなぞりながら、

吽馬易:「この線のここのところですね。」

吽馬易:「愛子さんは、感情を内に秘めるというか、元々、自分自身で、感情をうまく収められてた方なのかなあと、手相から感じ取れます。」

 

愛子さんが、その手のひらの線を見ようと

前のめりになった時、

吽馬易が、少し早口で、言葉をつむぎます。

吽馬易:「ですが、ここのところ、感情線が、かなり乱雑になっていますよね。」

吽馬易:「元々の線に、上から書き加えたかのように、ぐちゃぐちゃってなってますよね。」

吽馬易:「これが、今の感情の状態ですね。」

続けて、

今度は、運命線のところを指しながら、

愛子さんの表情を確認する吽馬易。

吽馬易:「いくつかお聴きしてもいいですか?」

手相を、観ながら、

おもむろに愛子さんに問いかけます。

吽馬易:「今、おいくつでらっしゃいますか?」

吽馬易:「事故は、何年前ですか?」

 

愛子さんが

愛子:「今年で、32歳です。」

愛子:「事故は、もうすぐ2年になります。」

と、ゆっくり、言葉を発し終わる前に、

吽馬易が、続けます。

吽馬易:「誕生日はいつになりますか?」

吽馬易:「手相では、1年の運氣の始まりを誕生日からという解釈でして・・・」

吽馬易:「もうすぐ、事故から2年なのですね。」

 

愛子さんは、

愛子:「誕生日は、4月16日です。」

と小さく、言葉を、発します。

なぜなら、愛子さんは、事故の場面を思い出したからです。

 

表情が曇り気味な彼女。

 

その表情を温かい眼差しでみながら、

吽馬易が続けます。

吽馬易:「この線です。この横の線・・・」

吽馬易:「縦の線を横切るようにありますよね。」

吽馬易:「ちょうど、事故のころの年齢のあたりです。」

吽馬易「手相には、過去も現在も、未来も書いてあります。」

 

一度、彼女の顔をじっと見る吽馬易。

 

思い出したように、言葉を発する吽馬易。

吽馬易:「未来のことについて、お伝えしてないですね。」

吽馬易:「この線、生命線という線なんですけど、太く長くありますよね。」

吽馬易:「本来、愛子さんは、かなりエネルギッシュな方ではありませんか?」

吽馬易:「そのエネルギーが、今、悲しみや悔しさを増幅させてしまっているのかもしれないですね。」

と、優しく微笑みながら、話し続ける吽馬易。

 

愛子さんは、

吽馬易の優しい眼差しと声に

なんとも云えない感覚を覚えているようでした。

 

少しの間、静けさが2人を包みました。

路地裏で、周りの人の声やざわめきが

気にならない不思議な時間でした。

(吽馬易の密教手相術のなかで時々行う密教奥義:次元転移をこっそり行っていた。)

 

吽馬易がこっそり行う、密教奥義のひとつ、

次元転移は、場を一瞬にして、

クライエントさんと吽馬易を未来の次元に包み込むのでした。

 

なぜ、こっそり行うかというと、

 

人生において、本質的な変化は、自然に静かにやってくるからです。

 

 

愛子さんが、不思議そうな顔で、言葉を紡ぐ。

愛子:「私が、エネルギッシュなんですか・・・」

愛子:「そういえば、小さいころから、よく、パワフルだと云われたことはあるんですが・・・」

愛子:「自覚はまったくなくて、正直、先生に云われても、納得できなくて」
愛子:「で、手相には、未来が書いてあるんですよね。」
愛子:「なんて書いてあるんですか?」

 

吽馬易、小さくうなずき、愛子さんの手のひらのある線を指差しながら、続けます。
吽馬易:「この線を観てみてくださいね。今度は、さっきと違う線なんですけど・・・」

(すこし早口になりながら、吽馬易続けます。)

吽馬易:「太陽線というんですが、この線が、はっきりありますよね。しかも、ここから長く繋がっていますよね。」

吽馬易:「少し、薄いところもありますが、この線は、愛子さんがこれから生き抜く指針にしてほしい線です。」


愛子さんが、自分の手のひらの吽馬易が云った線を、指でなぞりながら、
愛子:「生き抜く指針って?どういうことですか?」

 

吽馬易が少し興奮気味に続けます。
吽馬易:「手相に聴いてほしいんです。」
吽馬易:「そして、観てほしいです。今の私、ちゃんと生きてる?」
吽馬易:「ちゃんと、命を輝かせるように、毎日を生きられているか?」

吽馬易「うまくいかない時や、落ち込むとき、不運に打ちしがれた時、など・・・」

吽馬易:「手相を観て、確認してほしいんです。」
吽馬易:「さっきの線がどうなっているかを・・・」

吽馬易:「その線が薄くなっている時は、・・・」

吽馬易:「なにかしら、今の状況を変えるきっかけは、今までやっていなかったことや、新しい考えを取り入れてみることです。」

一呼吸おいた吽馬易、続けます。
吽馬易:「うまくいっていなくても、その線がはっきり観えた時は、そのまま進んで大丈夫ってサインなんです。」
吽馬易:「これが、私の手相の観方なのです。」
吽馬易:「手相は、観るだけでなく、羅針盤のようなものです。」

吽馬易:「で、今の愛子さんの手相には、そのままで大丈夫って線があるんです。」
吽馬易:「今日、ここに来られる前まで、死にたいと思われていたと思います。」
吽馬易:「そう思い悩んでいた時間も、自分の感情を収めるために必要なプロセスだったんです。」

吽馬易:「私、思うに、間違いなく、愛子さんにとって、必要な時期だったんですね。きっと。」

吽馬易:「まだまだ、死にたくなったり、事故のことを思い返すこともあるかと思います。」
吽馬易:「それを無くそうとしないでください。」

吽馬易:「愛子さんにとって、未来に繋がっている大事な時間の一部なんです。」
吽馬易:「どんな未来に繋がっているか?」

吽馬易:「それは、私には、わかりません。愛子さんしか知らないのです。」
吽馬易:「今、愛子さんにその未来をお聴きすることは、あえてしませんでした。」

吽馬易:「もうすぐ、その未来のイメージが自然に浮かんでこられるような気がしています。」

吽馬易:「今、その未来がイメージできないかもしれません。今、イメージできないだけなのです。」

吽馬易:「必ず、愛子さんにとって、得たい未来があるのです。」

愛子さんの眼の奥をじっと見据えた吽馬易。
静かに微笑みながら、最後にひとこと、愛子に伝えます。

吽馬易:「自分の手のひらにある未来を信じてあげてくださいね。」

と云いながら、握手を両手で包み込むようにします。

 

愛子さんは、吽馬易にあっけにとられるように握手をしました。
愛子:「手のひらにある未来・・・」

愛子:「なんとか生きていこうと思います。」

愛子さんは少しだけ明るくなった表情で、一礼し、吽馬易の前をあとにしたのでした。
 



(この物語は、すべてフィクションです。登場する人物、その他、すべて架空のものです。ただし、手相に関する記述については、できる限り鑑定の際に用いる内容に準じております。)

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