~ある街角の手相家の物語~占いジプシー?
その手相家の名前は、安倍吽馬易(あべのうんめい)という。
まだまだ、駆け出しの頃・・・。
手相を観るという事は、「相手の方の人生を垣間見ることだ。」と
吽馬易は、師匠から、常々教わっていました。
師匠は、「だから、いい加減な気持ちで、手相を観てはいけない。」
そして、
「どんなに相がよくない状態だからといって、それを観たまま相手にお伝えするだけではだめだ。」
「よくない相を回避する方法、良い相へと変える方法を具体的にアドバイスできないのなら、良くない相について伝えてはダメだ。」
「それは、相手を落ち込ませるだけである。」
「相手にさらに不安を増幅させることになる。」
「人生で悩んで手相を観てもらいに来てくださった方を、さらに絶望を与えることになる。」
「これから先の未来において、希望を探しに、手相を差し出してくれているはず。」
「私たちは、希望を手相から読み取り、それが叶うようにお手伝いするのです。」
と、何度も何度も、弟子たちに話しているのをよく覚えている。
先日の事、ある街角の片隅に座って、仕事をしていたところ、
一人の男性が、吽馬易(ウンメイ)に手相を観てほしいと話しかけてきました。
その男性は、紺色のジーンズに黒のジャンパーという身軽な服装でした。
その方の名前を仮に山下さん(仮名)としましょう。
山下さんは、30代の会社員だそうです。
山下:「結婚を考えている彼女がいるのだが、なかなか言い出せなくて・・・。」、
といろいろな占いなどにも行ったそうです。
吽馬易が、
吽馬易:「いろいろな占いって、具体的にどんな種類のところに行かれましたか?」
吽馬易:「それぞれで、どんなことをお聴きになりました?
吽馬易:「何を云われました?」
と、すこし詳しく問いかけます。
山下さんは、すこしずつ、
今まで、行ったことのある占いやスピリチュアルの先生の話をし始めました。
山下:「〇〇の母って有名な手相の先生いますよね。一番、最近だとそこに行ったかなぁ。」
山下:「そこでは、なんかすっごく怒られたんですよね。もうとっくに婚期逃してしまっているじゃない。って」
山下:「それも2年も前に、で、どうしたらいいか、そのあと聞きそびれまして・・・。」
吽馬易(ウンメイ)は
「ふむふむ」とうなづきながら、
吽馬易:「他には何か云われたことあります?」
と問いかけます。
山下さんが思い出したように
山下:「そうそう、前にチャネリングとかいうカウンセリングで、未来を観てもらったら、・・・。」
山下:「結婚している未来が観えますって云われて、お相手の見えているイメージを聴くと、今の彼女っぽくなくて・・・。」
と話しました。
吽馬易が、
吽馬易:「チャネリングも受けられたことあるんですね。」
とあいづちを打ちながら、耳を傾けます。
そういえば・・・と、山下さんが続けます。
山下:「四柱推命とかいうやつも行きました。」
吽馬易が、さらにあいづちを打ちながら、聴きかえします。
吽馬易:「四柱推命も行かれたんですね。」
吽馬易:「そこでは、なんて云われました?」
山下さんが吽馬易に答えます。
山下:「風水師って云ってたかなぁ。たしか、自分の場合は、なんとかって時期なので、あと2年後まで、待った方がいいらしく・・・。」
吽馬易が、うなずきながら、ちいさな声で、
吽馬易「2年後ですか・・・」
吽馬易「他に云われたことなどあります?」
と、聴き続けます。
なぜなら、山下さんがなにを相談されたいのか?
どのようなことをわたくし、手相家吽馬易(ウンメイ)に求めていらっしゃるのか?
吽馬易には、わかりかねていたからです。
山下さんが、すこし考えてから、
山下:「ちょっと違うけど、前世療法とかも行きました。」
山下:「そこで、自分の前世が〇〇だから、結婚を躊躇してしまっているって云われまして・・・」
山下:「結婚を躊躇しているワケではないんですが、なかなか、一歩が踏み出せなくて・・・」
おもむろに話しました。
吽馬易は、
顔を縦にふりふり、うなづきながら、言葉を紡ぎます。
吽馬易:「前世療法も受けられたんですね。」
吽馬易:「他にもあります?」
山下さんは、すこし、斜め上に目線を向けながら、
少し考え、
山下:「あ、そういえば、さっき、おみくじでも末吉で結婚の欄が、よくよく考えよ。って、なってました。」
吽馬易に答えます。
吽馬易は、なんとなく、お悩みの本質をつかめてきたと感じました。
(時々、思い違いのこともあるので、慎重に慎重に・・・と自分に言い聞かせながら)
ここから、吽馬易独特の口調で、
「おみくじの結果は、まず、ちょこっと置いておいて、・・・」
吽馬易:「山下さんは、どんな未来にしたいです? 」
吽馬易:「私が知りたいのは、山下さんがどうなりたいか?」
吽馬易:「どんな未来につなげたいか?ですね。」
吽馬易:「それをお聴きしてからでないと、手相を観ても、何をお伝えしていいか、わかりかねます。」
山下さんに問いかけます。
山下さんが、吽馬易に向かって、
山下:「そんなの決まっているじゃないですか。」
少し強い口調で早口で、
山下:「今、付き合っている彼女と結婚できるかどうかですよ。」
山下:「いろんなところで、いろいろ云われて、・・・」
山下:「しかも、どれも、結婚を決断する自分自身を後押ししてくれるような話ではなく・・・」
山下:「あげくの果てに、前世の出来事が原因だと云われ、おみくじにまで、みはなされ・・・」
山下:「吽馬易先生のウワサを聴いて、今日、来たんですよ。」
山下:「手相を観て、教えてください。私が結婚に向いているかどうか?」
と、
云いながら、右手の掌を吽馬易の前に差し出しました。
吽馬易がうなずきながら、山下さんの掌に目線を向けながら、
吽馬易:「分かりました。」
吽馬易:「では、手相を観させていただきますね。」
吽馬易:「右手だけでなく、左手の方も、私に観させてもらえますか?」
とお願いします。
吽馬易にとって、唯一であり、最大の武器、手相を観るということをようやく始めたのでした。
山下さんは、いすに深く腰掛け直しました。
吽馬易は、ゆっくり差し出された手の平を包むように支えながら、
吽馬易:「うんうんうん、・・・。」
とうなずき、
吽馬易:「左手を観させてください。」
大きく、うなずきながら、
吽馬易:「もう一度、右手を・・・」
吽馬易:「うんうんうん、・・・。」
吽馬易:「再度、左手を・・・」
そして、一通り手のひらから目を離し、目の前の山下さんを見つめました。
(これが、吽馬易の手相を観させていただく際のいつもスタイルです。)
そして、
吽馬易:「いきなり変なこと云うかもしれませんが、・・・」
と吽馬易は、前置きし、
吽馬易:「山下さん、本当に結婚されたいのですか?」
吽馬易:「手相を観させていただいて、どうしても結婚したいという感じが伝わってこないんですよね。」
吽馬易:「もし、間違っていたら、すみません。」
吽馬易:「結婚したいということについて、本当はなにかしら違うお悩みがあるのではないですか?」
と、表情を確認しながら、話し始めました。
吽馬易は、時々、手相を観て、違和感を覚えることがあります。
それは、
クライエントさんが最初に話されたお悩みについて、
どんなに手相から読み解こうとしても、
手相の線が、どんどん薄くなっていくように感じて、
相が読み取れなくなっていくような感覚に襲われることがあるのです。
吽馬易の主観的な感覚なので、実際にはそのように薄くなっていないかもしれませんが、
手相と会話しているといつも云っている吽馬易にとって、
手相がそのことについて話すのを拒んでいるかのように感じるらしいのです。
山下さんが、吽馬易の言葉を聞いて、
山下:「はいぃ~?」
山下:「自分が結婚したくないって?」
山下:「それなら、こんなに悩んで、先生のところに来ていませんよ。」
すこし、怪訝そうな声で答えます。
吽馬易が、
吽馬易:「山下さん、すみません、もし、気を悪くされたのであれば、謝ります。」
吽馬易:「しかしながら、もう少しだけ、私の云っていることに心当たりがないか、考えていただきたいのです。」
吽馬易:「突然、結婚されたいかどうかをお聴きしたのには、ワケが有りまして・・・」
と続けます。
山下さんが話す間もなく、吽馬易は、さらに、続けます。
吽馬易:「私は、クライエントさんからお悩みをお聴きし、その問題について手相に問いかけるんです。」
吽馬易:「そうすると、その問題に対するメッセージを発している手相の線が反応してくれます。」
吽馬易:「その小さな僅かな線の声を私は拾い上げます。」
吽馬易:「そこで、山下さんの結婚についてのお悩みのことを、手相に問いかけたんです。」
吽馬易:「手相が、何も反応しないんです。」
吽馬易:「私が、もし、感じ取れないだけかもしれませんが、・・・」
吽馬易:「何度、問いかけても、すこし、問いかけを変えても、手相がなにも反応しないのです。」
吽馬易:「もしかしたら、私の手相術では、山下さんのお役に立てないのかもしれません。」
吽馬易:「もし、そうだとしたら、私の力不足で申し訳ありません。」
と、すこし、早口で吽馬易が話し終えると、
(手相を観ると、時々、息をつく間もないくらい早口で話してしまう癖が吽馬易にはあります。)
山下さんは、少しの間、何とも言えない表情で、斜め上を見ながら、黙ったままでした。
(吽馬易、目の前の山下さんの表情を見て、またやらかしたかもしれないと、少しばかり、反省・・・。)
山下さんが、じっと吽馬易のことを見て、おもむろに、
山下:「仮に、先生がおっしゃるように、自分が結婚したくないとしたら、自分の今の悩みはいったい・・・」
山下:「自分は、どうしたいのでしょうか?」
山下:「いままで、いろいろな先生に結婚について相談しましたが、・・・」
山下:「まさか、自分が結婚したくないんじゃないかって云われるとは思いもよらないことで・・・。」
山下:「先生からみて、自分が今悩んでいることって、結婚したくないという理由など、教えてもらえます?」
吽馬易に質問します。
吽馬易は、
「それでは」と、
もう一度、両手を観させてほしいと山下さんの両手に目線を向けました。
吽馬易は、こころの中で、
「今、山下さんに必要なメッセージを教えてください。」
「どんなことについて、ネックになっているのか、教えてください。」
と、手相に問いかけながら、
吽馬易:「左手を観させてください。」
吽馬易:「右手を観させてください。」
と、事務的に山下さんに声をかけ、
手のひらを覗き込むように無言で観入っている吽馬易...。
(実は、この時、吽馬易には、右手の運命線と感情線の反応に気づいていました。)
そして、一通り手のひらから目を離し、目の前の山下さんを見つめました。
吽馬易は両手のひらの手相を一通り観させていただいた後、
おもむろに話し始めました。
吽馬易:「彼女のことを、今、どのように思っていらっしゃいますか?」
吽馬易:「仕事について、なにかしら、考えていること、悩んでいることは有りませんか?」
吽馬易:「実はですね。」
吽馬易:「右手の感情線のある部分を指差して、・・・」
吽馬易:「この線が、どうも気になるんですね。」
吽馬易:「で、山下さんのお気持ちについて、お聴きしたのです。」
吽馬易:「それと、同じく、右手の運命線のある部分を指差して、・・・」
吽馬易:「この線も、気になりまして・・・」
さらに、吽馬易は続けます。
吽馬易:「今の彼女さんとはどれくらいの期間お付き合いされているのですか?」
吽馬易:「今の仕事はどんなことされているのですか?」
山下さんが、吽馬易のペースにつられながら、
山下:「彼女のことは、まぁ、好きですよ。もう付き合い始めて、5年ですかね。」
山下:「いや、6年かもしれません。」
山下:「仕事については、まぁまぁ、いい感じです。」
山下:「仕事の内容は、営業でして、・・・」
山下:「なんとか頑張れていると思います。」
と、答えます。
吽馬易が、軽くうなづきながら、
吽馬易:「6年くらいお付き合いされているですね。」
吽馬易:「それなら、そろそろ、結婚なんて話にって感じですか?」
吽馬易:「仕事は営業なのですね。営業って大変なお仕事ですね。」
と、確認するように話します。
(これは、話をちゃんと聴いて受け止めているという吽馬易の癖。)
少しずつ、核心にせまるように、吽馬易が言葉を選びながら、続けます。
吽馬易:「結婚することについて、重荷に感じていませんか?」
吽馬易:「決して、責めているわけではないので、気を悪くしないでほしいのですが・・・」
吽馬易:「結婚ってどんなイメージを持たれていますか?」
吽馬易:「運命線というのは、環境の変化や引っ越しなども関係してきます。」
吽馬易がすこし、ゆっくり声を発します。
と、山下さんが、結婚について思いを話してくれました。
山下:「実は・・・」
山下:「長く一緒にいると、今のままでいいかなぁって思ってしまって・・・」
山下:「結婚をするのが、彼女を大事にしていて、そうでないのは、彼女を都合のいい人にしているようで・・・」
山下:「仕事もこの先、どうなるか、少し不安もあって・・・」
吽馬易が、うなづきながら、
吽馬易:「結婚を躊躇しているのは、何も前世のせいじゃないですよね。」
吽馬易:「仕事のことも将来のことを考えて、一歩踏み出せないのですね。」
確認するように話します。
、
もう一度、山下さんの手相に目線を向けながら、
吽馬易:「左手を観させてください。」
吽馬易:「右手を観させてください。」
ここはいつも事務的な話し方で、
吽馬易:「手相から見て、彼女さんにとても大切にされていますね。」
(手相のある線を観るとそれがわかるんです。)
吽馬易:「なので、心配いらないと思いますよ。」
吽馬易:「手相で、この線がこんなにくっきりある方は、珍しいですよ。」
すこし、おおきなジェスチャーで吽馬易が続けます。
吽馬易:「お互い大切にするって思っていても、表現方法が伝わらないことも多いです。」
吽馬易:「男女ってなかなかその辺りの感覚が違っていることも多いです。」
さらに吽馬易、続けて、
吽馬易:「山下さんの性格的に、考えすぎて、行動出来ないってところがあるかもしれないです。」
吽馬易:「それは、悪いことでも短所でもないのですが、・・・」
吽馬易:「仕事については、・・・」
と云いかけて、
吽馬易、もう一度、右手の平を凝視して、
吽馬易:「今年で何歳になります?」
と事務的に問いかけます。
山下さんが、
山下:「34歳です。」
と答えると、
吽馬易が、
吽馬易:「誕生日はいつです?」
吽馬易:「実は、手相では、誕生日から誕生日までを1年としてみまして・・・」
と、ここも事務的な口調で、
(手相の基本的な決まり事を話すとき、吽馬易は、事務的な口調になる癖が有ります。)
山下:「えーっと、5月24日です。」
山下さんが、答え終わる前に、
吽馬易が、さらに、
吽馬易:「5月24日ですね。」
吽馬易:「今年の誕生日で、35歳ですね。」
と確認するように問いかけます。
山下さんがうなずきながら、吽馬易にまっすぐ目線を向けています。
吽馬易が続けて話します。
吽馬易:「手相の線で、35歳から38歳まで、仕事や環境で、少し、思い通りにいかない時期かもしれません。」
吽馬易:「修行の時期みたいな感じで、自分が主役というよりも、周りを引立てるように裏方の仕事をする感じです。」
吽馬易:「この時期を乗り越えたら、飛躍する、おおきな開運の線があります。」
吽馬易:「なので、仕事は38歳まで、とにかく、下積みだと思って頑張ってください。」
吽馬易:「必ず、報われます。」
さらに、続けて、
吽馬易:「そうそう、結婚についてですが、2年前だったと云われたとお聴きしましたが、・・・」
吽馬易:「確かに、2年前にも結婚線といえなくはない線があります。」
吽馬易:「しかし、運は自分で変えることが出来ます。」
吽馬易:「それは、山下さんの意思です。」
吽馬易:「山下さん自身が成し遂げたい未来をまず、イメージしてみてください。」
吽馬易:「そのなかに、あまりにも自然に今の彼女がとなりにいるのではないでしょうか?」
吽馬易:「手相を観ると、今年35歳になるまえに結婚を決断されることも十分大丈夫だと、」
吽馬易:「私は観ます。」
吽馬易:「私のことを信じてもらえるかどうかですが・・・」
すこし、控えめに吽馬易が話し続けます。
吽馬易:「手相は変わります。」
吽馬易:「今日、私のところに来てくださったということは、新しい縁起ができたということ。」
(吽馬易、静かに密教手相術の秘儀を使って手相に新しい線をつくります。)
吽馬易が、笑顔で続けます。
吽馬易:「最後は、山下さん自身の意思、決断しだいですね。」
山下さんは、じっと吽馬易の云うことを聴いていました。
山下:「自分の意思、決断ですか・・・」
山下:「そこなんですよね。」
山下:「どうすれば、決断できますか?」
すこし、弱弱しい声で、吽馬易に問いかけます。
吽馬易が、激しくうなずきながら、
判断と決断の違いについて、話し始めました。
吽馬易:「判断とは、たくさんある選択肢の中から、正解、最適解を選ぶこと。」
吽馬易:「決断とは、どの選択をとってもメリットやデメリット、リスクがある事柄から、どのリスクを取るか覚悟すること。」
吽馬易がすこし語気を強めながら、
吽馬易:「決断する時にリスクや不安がなくなることはないんですよね。」
吽馬易:「不安なままでいいんです。」
吽馬易:「将来を切り開いていきましょう。」
吽馬易:「山下さんの手相には将来がちゃんと書かれています。」
吽馬易:「ご自身の手相というか、ご自身を信じてあげてくださいね。」
山下さんをまっすぐ見据えて伝えました。
山下さんが、
山下:「決断、リスク・・・」
とぼそぼそとつぶやきながら、
山下:「なにかしら、決められそうです。」
と、気のせいか、
すこし、すっきりした表情で、吽馬易に軽く会釈し、背中を向けて、人ごみの中に去っていきました。
(この物語は、すべてフィクションです。登場する人物、その他、すべて架空のものです。ただし、手相に関する記述については、できる限り鑑定の際に用いる内容に準じております。)
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