メディア関係者様:「哺乳類型爬虫類」は使わない方向で…… | 化石の日々

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オフィス ジオパレオント代表のサイエンスライター 土屋健の公式ブログです。
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古生物にふれていると,古生代末あたりで“哺乳類型爬虫類”という輩が登場します。
たとえば,こんなの↓

ディメトロドン(Dimetrodon
ディメトロドン
(イラスト:加藤愛一)


今回は細かい話になるとムズカしいので,久々のざっくり認識(記事を書く上で最低限知っておきたい情報)としてまとめます。

「哺乳類型爬虫類」というのは実に便利な言葉で,この漢字から「哺乳類へ進化しはじめた爬虫類ね」という感覚が読み取れます。
そして,ここには「哺乳類は爬虫類から進化したもの」という暗黙の了解が組み込まれてます。

……が,しかし,実は近年の研究では,“哺乳類は爬虫類から進化したものではない”となっています。
ここは突き詰めれば,分岐分類学が関わってくるので難しい話になってしまうのですが,記事を書く上では,基本的には“哺乳類は爬虫類から進化したものではない”という理解をもっていれば良いと思います。
よりくわしく知りたい方は,下記で紹介する本等を参考にしてください。

で,これまで「哺乳類型爬虫類」とよばれていた動物たちを何とよぶかというと,「単弓類」とよんでいます。
「弓」というのは,頭骨の特徴に由来するものです。
「単弓類」とは,何やら一般的には耳慣れない単語で「そんな専門チックな単語を使うくらいならば,「昔ながらの『哺乳類型爬虫類』でいいやん!」と思われる記者・メディア関係者の方も多いと思います。
しかし,ここでポイントとなるのは,“哺乳類は爬虫類から進化したものではない”という点です。
……と,いうことは,

・爬虫類
・哺乳類

の二つの別々の系統があることになります。両者は連続しないと考えて良いと思います。
で,単弓類(哺乳類型爬虫類)は,哺乳類の系統に入るのです。
(正確にいえば,哺乳類を含めて「単弓類」と呼びますが,ややこしいので,ここではその話は脇においておきます)。
つまり,哺乳類型爬虫類は,爬虫類とは切り離された存在なのです。
それなのに「哺乳類型爬虫類」なんて,誤解を招く呼び名ですよね。
そんなわけで,「哺乳類型爬虫類」という言葉は使わない方向で,というのが良いと思います。

とはいえ,「哺乳類型爬虫類」というのは随分浸透している言葉なので,当面はまったく使用しないというのは無理だと思います。

・かつて哺乳類型爬虫類とよばれていた「単弓類」

など,並列表記をするのが無難なのではないかと思います。ちょいと文字数を使いますが…。
単独で「哺乳類型爬虫類」を使うと,ここ数年の研究や動向が反映されていないものとなってしまいかねません(情報が古い)ので,ご注意ください。


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