「地球」に興味のある方におすすめする。マグマ学者の本。 | 化石の日々

化石の日々

オフィス ジオパレオント代表のサイエンスライター 土屋健の公式ブログです。
化石に関する話題,ときどき地球科学,その他雑多な話題を書いていきます。

正直,研究が本業の方に,ここまでおもしろい本を書かれてしまうと,サイエンスライターとしては商売あがったりです(;´▽`A``

地球の中は,ドロドロにとけたマグマが詰まっているわけではない!
地球の中には,宝石がぎっしり詰まっている!!

マグマ学者 巽好幸 博士によるこの1冊。おすすめです。



本書は,著者が語りかけるようにして,進んでいきます。
時折,疑問が提示され,その疑問に著者が答えていく,という内容です。
独特の文体で,本を読んでいるというよりは,著者の講演を聴いている。そんな感覚になります。

私は,この著者に取材をしたことがあります。
本書を読んで,まさにその取材の光景を思い出しました。もちろん話の内容そのものはことなるのですが,感覚的には机をはさんで座っていて,いろいろと楽しいお話をお聞きしながら,時折,こちらから質問をはさんでいく。
そんな雰囲気にぴたりとはまります。
もちろん,本なので,読みながら著者に質問することはできません。
しかし,その多くは本の中で著者が“答えて”くれるでしょう。

話は地球の内部構造の説明からはじまり,地球史,日本列島史,日本列島の火山へと進んでいきます。そこかしこにユーモアが効いていて,読み手を飽きさせません。

一般的な地学の教科書との大きなちがいの一つは,まだ科学的にコンセンサスのとれていないところは「わかっていない」としっかりと書いてあることです。
たとえば,地球の核の温度。
一般的には,地球の内核の温度は,5500℃とされています。しかし,この点に対しても,「まず怪しいのが,核の温度です。なぜなら~」と文を進めていきます。

ちなみに,2006年にリメイクされた『日本沈没』で,監督からの「日本列島は沈没しかけるが,それを救いたい」という要望に,アイデアを提供したのも著者であるとされています。あの映画で,日本を沈める原因となった「メガリス」についても,本書ではわかりやすく解説されています。

日本列島の誕生史から,地震へと話が進み,日本の火山になると,まさにマグマ学者である著者の真骨頂というべきパートです。著者は,海洋プレートをしばしばスポンジにたとえ,このたとえを使って,マグマ発生のメカニズムを説明していきます。
火山の寿命の話,巨大カルデラ噴火の話。
思わずページをめくってしまう,おもしろ話題が後半にはもりだくさんです。

ただし,みなさん,一つだけご注意を。
本書のタイトルは「いちばんやさしい」とあります。
たしかに,内容の専門性から考えると,これをここまでわかりやすく本にしたものはそうないかもしれません。
冒頭に書いたように,これぞ私のようなサイエンスライターのお仕事。
しかし,地球科学の知識がまったくない方が楽しめるかというと,そこは保証しかねます。おそらく,地球科学の基礎を学んだ人ほど,本書を楽しんで読む事ができるでしょう。
岩石名で「ああ,あの岩石ね」となんとなく思い浮かんだり,文章で火山や地球の情景が脳裏に浮かび上がったり,そういう方こそ,いちばん本書が楽しめる。
実際,私は楽しんで拝読しました。

ちなみに,本当に地学の基礎を学びたい(学びなおしたい)という方には,まず,こちらがおすすめです。




地学の基礎を知っていると,今回のような本も,もっと楽しめる事ができます^^;



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