化石好きなら一度は聞いたことのある著名産地の本 | 化石の日々

化石の日々

オフィス ジオパレオント代表のサイエンスライター 土屋健の公式ブログです。
化石に関する話題,ときどき地球科学,その他雑多な話題を書いていきます。

「ラガシュテッテン」
あるいは
「ラガシュテッテ」
という言葉があります。
「化石ラガシュテッテン」ともいいます。日本語では「化石鉱脈」。

通例,化石には「残りやすい」ものがあります。
たとえば,骨や貝殻等の硬組織がそうです。

しかし,まれに軟体部まで化石として保存されることがあり,そうした化石は生命史の解明に大きく役立ってきました。そして,そうした化石の“産地”は,化石とともにその名がよく知られています。

たとえば,始祖鳥の羽根まで保存したドイツのゾルンフォーフェン。
たとえば,軟体性の動物の微細構造まで保存したカナダのバージェス。

そして,こうした例外的によく保存された化石群を「化石ラガシュテッテン」,あるいは「ラガシュテッテン」などと呼びます。原語はドイツ語で,特別に富んだ鉱床を指す言葉,とのことです。

世界のラガシュテッテンを集めた良書があります。
それがこちら↓

世界の化石遺産

本書にはエディアカラにはじまり,バージェス頁岩,スーム頁岩,フンスリュックスレート,ライニーチャーと,メゾンクリーク,ボルツィア砂岩,ホルツマーデン頁岩,モリソン層,ゾンホーフェン石灰岩,サンタナ層とクラト層,グルーベ・メッセル,バルトのコハク,ランチョ・ラ・ブレア,と合計14のラガシュテッテンが収録されています。

化石に興味のある方であれば,この中の1~2つは,聞いたことがあるのではないでしょうか。

この本の秀逸なのは,その内容の硬派な情報の充実度です。
それぞれのラガシュテッテンの地球史的な背景の説明にはじまり,発見の歴史などがまとめられています。地図はもちろんのこと,地質柱状図も掲載されているという徹底ぶりです。
そうした地質情報ののちに,各ラガシュテッテンの化石について,代表的なものを複数ずつ良質な化石の写真とともに紹介するという,実に硬派なつくりとなっています。
いわゆる「化石図鑑」ではありませんので,掲載されている化石に関しては必ずしも多い訳ではありませんが,主要な化石はしっかりとおさえてあるので,資料としての価値も上々。

世界各地の著名化石産地の背景を知る上で,手元に置いておきたい1冊です。

ちなみにわが家では,まず私が英語版を購入し,その後日本語版が出ると,夫婦二人で,ほぼ同時期に1冊ずつ購入してしまいました。結果,3冊も所有しています。
それだけ思わず手を出してしまう1冊であります(;^_^A




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